百七十四話 やらかし結婚編109
久しぶりに惰眠を貪った……起きたら、アンはもう居なかった。田舎民の朝は早い…俺もだけど。そういや、アンにまだ口付けきちんとしてないなぁ…
とか思ってベッドでゴロゴロしてたら、ルチルが突入してきた。団長の確認サインが要る書類の束を渡された…
「中身は確認した方がいいか?」
「全部、被害者や遺族見舞金の申請だから大丈夫」
「……ヤッたのか」
「大公爵兼騎士団長に対する嫌がらせにしては度が過ぎてたものばかりだったから仕方なく」
詳しくは聞くまい。腕が良くてもロクでもない騎士は居る。多々居る…その筆頭が俺。でも、下には下が居たようだ…度が過ぎてたという事は、結婚式に乱入計画してたんだろう。余興がまた潰えた。
サラサラっと署名して、ルチルに返すと「昨日はアンとしなかったの?」と聞かれた…ケダモノ扱いする嫁である。
「アンは俺の最後の砦だ……今のアンにまで手を出したら際限無くなる。自制出来なきゃまた倒れるし、ミュゼットたち大半が学生なんだから本来はきちんと節度持ってしなきゃいけないんだ…結局は流されてしたけれど」
「それは全員分かってるし、子どもが出来たら覚悟もしてる…アレク。妻になるというのはそういう事」
「それは分かってるんだけどな…皆の気持ちも。けど、世間体ってあるやん?」
「アレク………今更」
知ってる。ロリコンナイトでお馴染みのアレクくんだもん…でも、学校生活楽しく過ごして欲しいねん。大公爵の妻って時点でお察しだけど。
一度、学園長と教職員に恫喝しに行かねばならぬ。近日開催…というか、暇なので本日開催。何なら、後期から通学再開なんて生温い事言わずに一両日中からでも………
*
「アーくんって、本当に暴走したら止まらないよね」
「それが俺だ。長い付き合いなんだから知ってるだろ?」
「うん、嫌なくらい知ってる……」
当然、早期通学再開はミュゼットたちに拒まれた。結婚式や披露宴の準備に、王城での仕事の引き継ぎ、夏休みの補習拒否などなど様々な事言ってきた……
素直に俺との時間が減るって言ってきたのはレミだけだった。ニート嫁が一番俺の口説き方分かってらっしゃる。むしろ、仕事優先している嫁たちの精神状態が心配…
そんな会話しつつ朝食終えて、出勤とか見送って昨日十分休息取れて元気に働くアンを呼び止めて、チューしようと迫ったら拒否された。泣きたい。「昨日散々したんだからメッ!」って言われた…あれはスキンシップ。口にもしておけば良かった…
そんな様子を見ていたミリスベルとリテラ。今日は自分たちの番だと宣うわけである。たちって何よ…とは言えない。
本来なら浮気相手……あるいは、嫁たちが全員同時に妊娠した時の欲望の権化の生贄…になっていたであろう二人。蔑ろにするつもり無いけど、ミリスベルとはそうそうそんな雰囲気にならないだろうし、リテラもまた然り。
いい年こいたおっさんが、純情騙くらかして少女たちを嫁にしたのとはまた違う…二人も大概な理由があったけど、実質的にやった事は寝取りと伯爵家簒奪である。まだ子作りに至ってないけど。
でも、仕方ない。そうしたかったのだから…それくらい情はあった。劣情含む…
「まあ、せっかく二人して休み取ってまで俺と過ごしたいっていうなら仕方ない。今日はとことん付き合ってもらうからな」
「あ、アレクくん…朝からするの? いくら二人でも、夜まで体力保たないかな…」
「…リテラさんや。俺も保たない…」
朝から盛っているのは俺だけじゃなかった。いや、そういう放蕩もしたいよ…朝から次の朝までとかしたいよ。でも、最初でさすがにそれはねぇ…
やるのは学園長への殴り込みとか、三人でデートとかだよ。それに、二人と行きたいところがあるんだよ……
俺が勝手に親友って思っている棺入り妄想隠者野郎の墓参りとかな。




