十六話 やらかし19歳期・騎士編②
牢、約一年十ヶ月ぶり……まさか、切り裂き魔の犯人が国の四大公爵の一人、マクレガー公爵であったとかどうなのよ。
財務大臣もやってる国の重鎮、重鎮さんだーライガーご本人をガトチュしてしまったワイ、公爵殺しの大罪人として勾留中…一介の騎士風情が公爵殺しちまったら、いくら連続殺人鬼といえどという話である。
幸いなのはクリスティーナ嬢が擦り傷程度で済んだ事。彼女の証言あるから即断罪には至らなかった事である……助けた事と叔父さんの仇を取った事を感謝された。それだけで僕は満足さ(サクタロー、二回目)
というわけで弾劾裁判が始まるのである。クロスファイ、クロスファイ。クロスファイっ!
「被害者は総勢23名…いくら公爵といえど王都の無辜なる民の命を弄んだ罪、命を持って償わなければなんとするっ!」
「いや、お主が述べる言葉ではなかろう。アレクシールよ」
おや、先制パンチが強すぎたようだ。裁判長である国王が呆れた表情で見てる。他の面々も呆れている。が、俺は間違った事を言った覚えは無い。俺は悪くねぇ。
財務大臣もやっていたマクレガー公爵は、近年の債務増加とかで悩んでいたという報告が挙げれた。特に炊き出しとかの福祉部門の増費に悩んでいたとかいないとか……俺が悪くねぇ?
他にも、マクレガー公爵の功績を讃える連中がちらほら……これ、全て俺の責任にして終わらせようとする意図が見える。茶番である。
「お黙りなさいっ! 殺人鬼を擁護する気ですか。いくら素晴らしい功績を持っていたとしても最後にやった事は決して許される事ではありません。それとも、この国は功績さえあれば何をしても許される低俗な国と言うつもりですか?」
「そ、そんな事は…」
突然の発言をしたのは、元第二王女で現公爵夫人のアリスベル・フィネット様だった。先程まで饒舌に語っていた財務副大臣はその発言に押し黙るしかなかった。
おそらく、この茶番劇の中で唯一の味方なのであろう。絡み酒伯爵夫人の差し金か…後で良い酒贈ろうと決めた。
ここからは公爵夫人のターンである。ずっと私のターン、略してずったーん…転んだみたいだな。
王都のマクレガー公爵邸にまともな騎士団たちが強制家宅捜査に入った結果、多くの証拠物が押収されたそうだ。被害者の所持品、切り取った毛髪、そして多くの武器類が飾られていたそうな。間違いなくクロ確定…まっくろくろすけ。
更に、体に多くの切り傷のある少女が保護されたらしい…………は?
原作、中盤辺り地の文の中に確か、こういうのがあった。新聞を見ていた富豪令息の口から語られた事件…王都の用水路で殺された少女の全裸死体を発見。全身には古い傷痕から最近の傷痕まであった…と。
沸々と血が沸騰するような感覚………ゲームではただ王都が決して安全ではない証左としてしか語られない事件。だが、その犯人は国を率いる人間が起こしたもの…
「陛下っ、この首差し出しても構わない。だが、そのような暴虐の犠牲となる子が他に居ないか全ての貴族邸宅を調べてくださいっ!」
「アレクシールよ、無茶を言うでない…」
「無茶でも苦茶でもやれよっ! それでも国王かっ! 子どもを持つ親かっ! それともただの子種製造機かっ!?」
*
不敬罪で三日間の独房行きを決定された…が、公爵の件に関しては無罪。但し、国内全ての貴族邸宅への視察は約束された…最後の一言余計だったな、うん。でも、俺の大勝利だ。希望の未来へレディーゴー!
でも、まあ…もしかしたら原作のミュゼットみたいな境遇の子が他に居るかもしれない。そういう子の一人でも救える可能性があるのなら俺は何だってするさ。
一度は子どもを助けて失った命。それなら、命をかけてまた子どもを助けるのは我が使命…とか格好いい事を思ってみる。だからロリコンナイトとか言われるんだろうなぁ…(遠い目)




