百五十九話 やらかし結婚編94
老い先短い年寄り国王との交流、毎週開催決定(余程の用事ある時除く)……孫とやれ、そんな無駄な事である。
まあ、日曜の朝飯作らなくて済むならとも思う事にした。いや、日曜は日曜で炊き出しの手伝いとかあるからな。今週はサボるけど……俺たちまだ新婚なのよ。休みの日くらいイチャイチャさせろである。
日曜礼拝…まではまだ時間あるので、暇潰しに王城内の探索である。嫁たちは午前中自由行動……午後もゆっくりしたいのに予定潰されたと怒っていた。主にレシア…さて、壺でも割って薬草探そう(必要ない)
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あちこち回ったが、宝物庫見つからなかった…宝箱でミミックごっことかして遊びたかったのにそこら辺に転がってないし。空箱で良いのよ、頭から突っ込んで遊ぶだけなのに…(マルデオトギノハナシ)
まあ、そんなバカな事やって時間潰しているのには訳がある…執事服も借りパクしようと探していたが見つからない。むしろ、近衛騎士たちの警備が疎かでスニーキングする必要も無い。これで披露宴するのには不安しかない。
と、何処かの部屋に入っていくミスティア嬢を発見。執務室ではないのは位置的に覚えている……あれ、俺正直迷ってね?
ミスティア嬢に出口聞こう……別に誰かと逢瀬してる心配はしてない。だって、そんな隙あるなら誰かが教えてくれてる。
部屋にこっそり入ると家探ししてるミスティア嬢の姿…なんだ、俺と同じ趣味か(違う)
微かに見覚えのある部屋……ああ、原作で見たエルヴァカの部屋だと思い至る。元婚約者の部屋で探し物……髪の毛見つけてバイオクローンでも欲しいのかなという世界観ではない。
何を探しているのだろうか、声を掛けずに見守る……というか、気付いてくれへん。気配消すのは得意ですねん。
王子の手記みたいなもんとか、護身用に枕の下に置いてあったナイフとか、下着類とか手に取っては首を振って元に戻しを繰り返す……下着は投げ捨ててたけど。王子ブリーフ派だったんやな。乙女ゲーで王子がブリーフとか何か嫌…
そんな墓暴きみたいな事をしつつ、ミスティア嬢は目当ての物を…どうやら見つけられなかったようだ。「やっぱり捨てられてますわよね…」と呟いているし…
恋文とかだろうか。俺なら保存する…額縁に入れて飾る。額縁の裏とか確認しなきゃだよ。それやらなきゃ迷探偵になれないよ…
諦めた様子で出口…即ち、俺の方へと視線を向けるミスティア嬢。俺を二度見すると、途端に慌てふためいた。
「だ、旦那様……いつからこちらに?」
「んー……一万年と二千年くらい前から?」
「………本当は?」
八千年と言いたいが、怖いオーラ出してる。道が開かれそうなくらい…だんばいん?
正直に、ほぼ最初から見てたと告げたらミスティア嬢は大きな溜息ひとつ……そのまま項垂れてベッドに腰掛けた。
「………探し物をしていました」
「知ってる。机の中も鞄の中も探してたの見てた……お元気ですか?」
「…元気があるように見えますか?」
見えないから悪ふざけしてるのである。怒りで空元気になってくれればいい…朝から寝不足で調子悪そうなのは知ってる。
シェリたちに話して楽になってないからこその奇行……王子の部屋で。ナイフを手にした時、俺今夜刺されるのかなぁ…遺書書いとこと一瞬思ったが、思えば遺書より子作り迫る子だったわけだし。
「…まあ、何か鬼気迫ってたな。何を探してたんだ…ペリドッドとか?」
「そんなはずないじゃないですか………私が探していたのはハンカチです。昔、一度だけエルヴァン殿下に差し上げた忌まわしいものです。おそらく、処分されているみたいですけれど」
「ハンカチ……木綿の?」
「…シルクです。拙いながらも刺繍をして………旦那様。信じてくださいますか…今、私がお慕い申し上げているのは間違いなく旦那様であると」




