百五十三話 やらかし結婚編88
帰宅してすぐアンに見つかった。「こんなに沢山買ってきてメッ!」って言われたけど、アンだけ特別に瓶入りキャンディーを渡し懐柔した。いつもの感謝の気持ちである。本当なら瓶の中に宝石詰め込むとかゴージャスな事やってみたいけど柄じゃない。後、メルは菓子くらいじゃ懐柔されないので別の機会に……言わずもがな。
とりあえず、明日出す分と分けてサロンで作業している面々に飲み物と一緒に出した。午後の分も勿論分けているし、仕事組の分も分けている。沢山と言われたが、分けたらさほど多くもないのである…そこら辺、分かって欲しいところ。
「本当に、太らせる事だけは長けてますわね」
「10時のおやつ、3時のおやつ、夜食は基本じゃないか」
「誰の基本ですのよ…」
そう言いつつ、クッキーに手を伸ばすミュゼット。既に懐柔済みである……王都一の菓子店のだもの。王家御用達だもの…俺がマリアに贈り続けた結果。
伊達に地図作りばかりしていない。どの店が人気で、不人気かは日頃から見ていれば分かる。人通りある場所に建っていても流行っていなければ早々に潰れる。逆に裏通りでも何十年も人気の店だってある。酒場とか…
まあ、そんな事はどうでもいい。昼食までには時間あるのでエルミディア嬢共々作業に参加……と思ったが、席次とかは立食式にすると決定済み。後は引き出物くらいなものだった。とりあえず、木刀でいいよね?
「兄さん、どこの世界に木刀を引き出物にする奴がおるねん」
「このクッキーとか、良いと思いますけど…」
「やっぱりお酒は定番じゃないかな?」
シェリが否定し、ミスティア嬢とミリスベルが普通の答えを出す…つまらん。俺たちの結婚式だぞ…定番攻めたって面白くないだろ。そこはバナナの鉢植えとか、俺特製のごった煮のレシピとか……え、手配しろ。レシピ書け…余計な事言うんじゃなかった。
*
俺のレシピに何の価値があるのやら。バナナの鉢植えはバナナ組に頼む事にした…むしろ、それ以外に伝手は無い。
さて、昼飯の用意である。エルミディア嬢と具材を切って、パスタ茹でて炒めた具材をぶっかける…俺のレシピなんてそんな大雑把なものである。そんなの何種類か書かされたけど需要あるか?
「喜ぶと思いますよ。炊き出しを食べたくて、学園卒業後も王都へわざわざ来る方も居るみたいですし…」
「何その欠食貴族…」
「それだけ、アレクお兄様のご飯が美味しいって事ですよ」
イベント不足なんじゃなかろうか。日曜マルシェとかやる気概が足りぬ。王都だけが全てではない…地域活性化支援とか国を挙げてしなきゃとか言ったら嫁の仕事増えるから言わない。
俺の稚拙な適当レシピで喜ぶ人が居るならいくらでも提供するし。むしろ、欠食貴族が王都にわざわざ来て何か事件に巻き込まれでもしてみろ。警備体制不備とかで俺が責任問われる…更に俺の飯目当てとか言われて炊き出し止めるよう圧力掛けられたら困るのは孤児たちである。
結果、全責任俺…一族打首獄門なんてなったら嫁たち守る為にどうなるか。王都壊滅、アレク帝国爆誕……嫌じゃ。王とかなりとぅない…(妄想飛躍中)
「あの…量多くないですか。茹でるパスタ…」
「おっと、いつもの癖で…」
「きちんと測ってくださいね」
一人前一束とか親切な売り方してないのよね、パスタ…適当に掴んで入れるから多くなる。基本野宿の大雑把男料理だもん。味見さえしとけばだいたい良い。だから怒られる…
さっきも「せっかくドレスの採寸してるのに、し直さなきゃいけなくなります」と言われた…マリアに。むしろ、マリアはもっと育たなきゃいけない代表格なんですがね。
でも、当日にパツパツの衣装着させるのはさすがにいけないと思う今日この頃…明後日から運動しよう(けどその分甘やかす)




