百三十二話 やらかし結婚編67
肉食系聖女怖い…豆むきで予行していなかったらヤバかった(悟れ)
ラティーは最初こそ大人しかったが、さすが卑しの聖女。遅効性の癒しによって痛み無くなった途端に……まあ、耳年増とだけ。教会の闇を感じた気もする。
それでも、ラティーの気持ちはちょっと分かる。血の繋がった家族が欲しいのだ…決して養父母に問題があるわけでもない。が、やはり血の繋がりって恋しくなる。俺も似たような境遇…血の繋がりが全てじゃないけど。
それを覆い隠すように癒しの力を後世にだの言ってるわけですよ……辺境が魔物で溢れたら聖女の使命を果たす気で、自分の命を軽んじるくせに。
まあ、そんな事はさせないけど…さて、風呂の時間である。卑しの力に目覚めたラティーとの再戦は程々にしないといけない。継戦能力高すぎるねん。さすが悪役ポジ(イミフ)
寝てる顔は年相応の可愛い少女なんですけどねぇ……まだまだ堕ちない。俺の愛情が足りてない。ちょっと自信無くすわぁ…
*
今日の買い出しはメルとアンである。ミュゼットも昨夜目覚めて普通に過ごしていたし、豆ご飯をシェリチェ嬢たちが作っているから手が空いているとか。
まあ、いつも家事をしてくれているし気晴らしは必要。アンに至っては王都に来てまだ数日。慣れない事もあるだろうし、息抜きしないと…
「アン、欲しいものがあったら何でも言うんだぞ。服でもお菓子でも宝石でも何でも買うからな」
「ご主人様……無駄遣いは、メッ!」
「アン。アレク兄様は甘やかしたいんです。特にアンは最年少で、慣れない土地にやってきた…それに我慢を強いられる立場。それでも平等に愛そうと躍起になっているんです」
メルはよーく俺を分かっている。けど、目は笑っていない。メルも甘やかして欲しいのである……ボソッと「私は子どもが欲しいです」とか言われても授かりものですがな、それ。
まあ、メルには常日頃から世話になっているわけだし……汚れたベッドシーツを毎日毎日交換させてる最低旦那。それが俺である…おぅ。
とりあえず、バナナ以外の果物買おうか。甘くて美味しいフルーツポンチとか作ろう。シルディに太るとか言われても作る…美味しいもの食わすのが旦那としての使命。
そんな買い物をしている中、ふと思うわけですよ。メルとアンの日中の過ごし方。ヤーマン家の使用人たちが来てくれるようになって、だいぶ楽になったとは聞いているが結婚式の準備とかやっているわけで忙しさは騎士団以上だと思う。
ましてや、結婚式を終えてもメルは後期から学園復帰……アンが一人で家の事を回さなきゃいけない。ヤーマン家の使用人が好意的といえど、その重責に耐えられるのかと思うわけで。
「アレク兄様。アンはもう棄民ではなく大公爵の妻ですよ。たかだか家事を重責とか言う方がどうかしてます……家計の事はミスティア様やシルディナ様がしてくれていますし、食事作りだって皆様積極的です。私室も申し出がない限りはアレク兄様の部屋や共有スペース以外は掃除してませんし」
「自主性の高い嫁たちだ事…」
「そういう事です。むしろ、レミルーファ様が護衛に残っている事だって不要なんですよ……正直、その分仕事が増えてます」
レミルーファ嬢の好意、裏目に出てる。俺、「暇なら護衛でもしてくれ」と言ったけど強制した覚え無い。むしろ、クリスと違って今からでも騎士学校に転校したらいいんじゃないかなとは思ってる……文官としては半端そうだもん、あの子。
何か抜けてるというかドジっ子というか………まあ、それは明日本人に確認しよう。しかし、護衛は必要だと思う。勤務日調整していこうかな……レシアにまた殴られるけど。
「ご主人様……またロクでもない事考えてる時の顔してます」
「安心しろ。いつもロクでもない事しか考えてない」
「アレク兄様、胸を張って言う事ではありません」
何を言うか。俺は徹頭徹尾ロクでもない人間だぞ……そんな俺を好きになる嫁たちも大概である。だからドロッドロに甘やかして愛したいのである。
 




