百二十九話 やらかし結婚編64
ミュゼットは幸い外傷なし…てんかん発作とかでもなく、単なるPTSDだろう。前も寝込んだ時同じような感じだったし…トラウマ乗り越えたら魔法少女コスさせたいが無理強いしない。
ラティーナ嬢には家でのコスプレは個室と俺の部屋以外は厳禁とした…メルもこうなったら俺は看病で休む。仕事手につくはずなかろうもん。俺だって吐いたわけだし…
未だに意識失ってるミュゼットを長椅子に寝かせて膝枕…俺の隣にはラティーナ嬢が座って不安そうに見ている。
「大丈夫だ…きっとすぐ起きる。前みたいに熱まで出てないし、記憶はどこまで飛ぶか分からないけど」
「それ大丈夫じゃないと思います…」
「その時は体で思い出させるまでよ」
全ての記憶失ってても手放す気無い。それが俺の愛…まあ、コス見たのがラティーナ嬢だったから全然セーフよ。何ならミリスベルとリテラまでなら許せる…ギリギリだけど。それ超えると忍者の方がいいかも。退魔系の…
まあ、ミュゼットが起きるまではこのままである。ついでにラティーナ嬢に色々質問タイム。仲を深めていこうぜってやつさ…
「…はっきり言うが、キース・ボンボンに未練は無いのか?」
「フォンボンですよ、聖人様。もし…きちんとユニコーンの角を探してくれて、聖女としての行いを支援し続けてくれる理解ある人であり続けたのなら違っていたかもしれません。でも、結局は違いました。聖人様がシルディナ様を救う為にと託してくれたこれが、シルディナ様だけでなく多くの人の救いになりました」
「それはあくまで運が良かっただけで、ボンボンもいつか手に入れていたかもしれんがな…」
「…それを少し期待してはいました。でも、結局は無駄でした。それに、わっちはずっと昔に天啓を受けていたんですよ。『いずれ辺境が荒れる。ユニコーンの角を手に入れ、命をかけて人々を救え』と…でも、しばらくしたら『辺境は助かった。運命は変わった、好きに生きろ』と別の啓示になりました。そして、今ここに居るんです」
神じゃなくて製作者かなんかなんじゃないの、それ…というか、そんな天啓とかあるのね。俺には聞こえないけど。というか、それ統合失調症とかじゃないかな。
ラティーナ嬢の精神が心配…命をかけて他人救うのは美談だけど、そんな言葉だけで命をかける必要はないのよ。ラティーナ嬢の力が命を削るものならすぐやめさせる…が、そんな設定無かった。つまり、最前線に赴き死ぬまで騎士の回復装置になれって神は言ったわけだよ…降臨してこいや、叩っ切る。
まあ、好きに生きろとか言われても困るわよな…で、何だかんだで今に至ると。聖女として駆け出したところに偶然ユニコーンの角を手に入れる機会があって云々…
「シルディナ様の傷を癒す為と、貴重なユニコーンの角を無償で差し出す気概にわっちは惚れたのです。そして、わっちの運命であった辺境の地を救ったと知り、聖人様しか居ないと決めました」
「あー、そうなのね…ボンボン哀れ」
「…あれはダメです。王子たちに女を奢り家はおろか国すら滅ぼしかねなかった元凶です」
娼館のツケが溜まり過ぎて家がご破産するとかなぁ…どれだけ特殊なプレイしてたんだと。むしろ、どうしてそこまで落ちぶれたよ。
ユニコーンの角を手に入れる為だけの政略結婚…まあ、政略結婚なんて多いから仕方ないが原作とかけ離れたボンボンの行動。
お前、原作はもっと真面目かつラティーナ嬢の理解者だっただろうよ。ルート選ばなかったら一緒に辺境を救う為に活動してただろうよ…そういう意味では俺の被害者かもしれん。
まあ、ミュゼットに手を出そうとか考えてた時点で俺の敵だったわけだけど…むしろ、真面目なら攻略キャラじゃないのだが。
王都の何処かで浮浪してるの見つけたら飯くらい奢ってやろう。バナナ定食大盛りで…




