百二十四話 やらかし結婚編59
というわけで、今日はミュゼットが騎士団にやってくる事になったそうな。後、おにぎり大き過ぎと全員に怒られた…全形焼き海苔使ったからである。でも、味は良かったそうな…焼きサーモンはリメイクしてサンドイッチに使われる予定。サーモンサンド確定。
おにぎりと漬物、味噌汁の朝食を終えて出発。なお、今日はルチル休み…バナナサンドも確定演出。まあ、ええんやけど。
「そういえばさ、アレクシールって抱いた子愛称で呼ぶようになるけど、あたしたちは呼ばないわよね?」
「レーちゃんとか呼んで欲しいのか?」
「絶対ヤダ」
だろ…セリーヌも頷いてるし。レシィとかセリィとか色々考えたよ。でも、何かしっくりこなかったのよ。ルチルと被るけど、ルチルは愛称作りのプロだわ…
この世界というか国というか、やたらと名前こだわりあるからなぁ…例えば、王家の男にはヴの文字入れるだとか、女の子は〜ベルにするだとか、貴族にも長男にはアから始まる名前がいいとか一時期流行った設定。今はもう廃れているが、一部旧貴族は続けているだのいないだの…
それに比べたら平民は楽。レシアもセリーヌも呼びやすい名前……ミュゼットは、メルが「ミュゼちゃん」と呼んでいるのもあるけど、きちんと呼んでやりたいって気持ちあるのよ。他の嫁たちとはそこが違う。
無論、他の嫁とて肝心な時はきちんと呼ぶよ。名前って大切だし…だから、ルチルをるっちーって呼ばなくなったわけだし。
気が早いけど、きちんと子どもの名前とか考えなきゃいけない。それも複数多量…3ダースくらい。
「先輩、色々と気が早いです…」
「…小兄様。そういうのは夫婦で決めるものですし、そもそもまだ誰も妊娠してませんわ」
「そうだな。まだ未確定だな」
ノーカンノーカン…つまり、もっと頑張れって事だな。これが人様の家の馬車でなければ事に及んでいた……最近、猿並みになってきてる自覚ある。早く滝行しないといけない。ラティーナ嬢ならそれっぽい場所とか知らんだろうかしら?
*
ミュゼットは有能。知ってた…なら、どうして早く囲い込みして騎士団にスカウトしなかったのだろうか。そりゃあ、最愛の妹に悪い虫がつかないように……結局、一番悪い虫が嫁に貰ったけど。
まだ王宮で働き出して数日…引き抜いていいかな。まだ学生だし、俺の最愛の嫁だし…まあ、それやると第一夫人として家を支えるってのが駄目になって本人怒るけど。
なお、ミュゼットに書類の不備を指摘されたレシアが怒ってセリーヌと外回りへ行った。ミュゼット容赦なく次々と指摘してたからなぁ…まるで日頃の仕返しのように。
「程々でいいからな。こんなの前世の知識動員するまでもないんだし」
「そういえば小兄様…前世の事を明らかにしたいと仰ったそうで?」
「お、おぅ…」
今、その話するか。まあ、シェリチェ嬢が伝えると言っていたわけだし…当然追及されるのは予想内。でも、今なら二人だからプレイも出来るのよ…とは言えない真剣な表情。
負い目なのだと…無論、隠している事のみ。愛していると言いながら、伝えきれない事があるのは当然。だが、真実を捻じ曲げたから今があるわけで…
「…小兄様の思い込みは激しいですわね。少なくとも、ネタバレを知っていたからとして行動したのは小兄様じゃないですか。その結果、わたくしは辺境伯令嬢として気ままに過ごせ、最愛の人と出会えましたわ。他の方々も同様…今更、そんな事を伝えられて揺らぐ程の愛ではありませんわよ?」
「……分かってる。けど、俺は万能じゃない…外伝までしか知らないし、その先の事なんて何一つ分からない。もしかしたら、明日みんなが襲われて命を落とすかもしれない…原作の反動とかあるかもしれないだろ?」
「………はぁ…弱虫ですわね、小兄様は。わたくしはそんな気持ちとっくに体験しましたわよ。何処かの誰かがいつも危険な事をして帰ってこないかもしれない。遠くの地へ行って命を失ってしまうかもしれない。他の人と結婚して忘れられてしまうかもしれない…そんな気持ちを抱くのは当たり前ですわよ。それが好きとか愛という事ですわ」
はい、その何処かの誰かです……誰もが持っている不安。好きとか愛…難しい事はよく分かんねぇや。ただ、俺だけが一方的に抱え込んでいるものだけじゃないって事か…
「伝えたいなら、全て伝えましょう。そして悩ませればいいんですわ。少なくともわたくしやシェリチェ様は知ってて小兄様の横に居ます。それが答えだと思っていいのではないですか?」
「……そだな。今日、夕食の時に言うわ。シェリチェ嬢には皆抱いてからにしろって言われたけど、シェリチェ嬢以外の噛ませ犬嫁五人衆はまだ選べる権利あるもんな」
「そのネーミング伝えたら噛まれますわよ…」
分かってる。でも、レイリック公爵家の房中術は甘噛みか舐め回しじゃないかと思ってるんだ、俺…つまり、噛まれるのは想定済み。




