百二十一話 やらかし結婚編56
足、腕、胸や腹、背中…致命傷にならない部分への無数の傷。報告書では、顔や手といった隠せない部分を除いて様々な刃物で多々切り刻まれていた…おそらく、通り魔に及んだ凶器の試し切りとして。
ここにもあった、あそこにもあったはずと四人に思うがまま指で素肌を撫でられ身悶えるシルディナ嬢……オッキシタ(もう数年待て)
俺は背中しか見てないけど、それだけ多くの傷を負っていたのを再認識する。鏡越しに身悶える愛らしい表情とは異なり、当時は苦しみ泣き叫び…そして心身共に壊れていったのだろうと想像に難くない。
それも当時10歳くらいの幼子を……あのクソ公爵、九頭○閃にしとけば良かった。そんな技量今も無いけど。
バカ王子もバカ王子である…ミスティア嬢とシルディナ嬢。当時は同じ公爵家同士…どちらかを選ぶのではなく、どちらも選ぶ男らしさという名の下心を発揮していれば俺みたいなハーレムが築けただろうに。まあ、無理だろうけど。俺も婚姻届突き付けられた側だし。
「あ、あの…いつまで撫で続けるんですか、みなしゃん…」
「アレクシールが納得して襲うまでじゃない?」
「アレクシール様を散々誘惑しているんですから、たまには嗜好を変えてみるのも良いかと」
レシアとマリアはただただ俺に襲われるよう仕向けているようだ…ラティーナ嬢だけが真面目。前に胸にちょこっと傷残ってると言ってたの知ってるから真面目に癒そうと胸触っている…
そういう意味では本当に彼女を頼って良かったと思う。仮に俺以外の男に嫁いだとして傷痕のある子をどう思うだろうか…男なら傷の百や二百あっても良い。背中の傷だって誰かを庇ったのなら恥ではなく勲章だ。
だが、少女…ましてや教育による鞭の後だったり職業柄でない傷。獣に襲われたなど止むに止まれぬものでない傷…すら俺は許せない。無論、傷を与えた側が。それは当然、心も含まれる。
男を恐れていたシルディナ嬢を無理矢理治す事も出来たが、やはりラティーナ嬢に任せて良かった…と思う一方、もっと早く回復出来たのかなと思う。俺がきちんと能力を話せていれば……いや、裸が見たかったとかではなく。決して見たかったとかではなく…当時はね(大事な事なので力説)
さて、またマリアにケツアナされる前に体洗おう。あれやられたら、目覚める……王女姉妹相手する日にはメス堕ちしそうで怖い。
*
浴後、今日寝る嫁との語らいの時間。シルディナ嬢とサロンのソファーに座って紅茶を飲む…利尿作用で夜中に目を覚ましそう。まあ、牛乳使うとアンが怒るから仕方ない。
「…シルディナ嬢は、今幸せか?」
「ずっと前から幸せですよ。だから、お父様への復讐なんてとっくの昔に終わってます……お兄様がワタクシを救おうとしてくれた。皆様が優しくしてくれた。その時点でもう十分に幸せでした。そして、お兄様の妻になれた。これを幸せと言わなければ傲慢です」
「そうか……一応言っておくけど、俺は償いなんかでシルディナ嬢を嫁にしたわけじゃないからな。気持ちに応えたのであって…」
「分かってます。昨日今日の付き合いじゃないんですよ。それにずっと誘惑してたんですし…」
うん、知ってる。だから、今日は何処まで理性保てるか怖い。マリアも一緒に巻き込もうとしたが逃げられた…むしろ、二人がかりなら負けてたと思うけど。
まあ、シルディナ嬢が幸せなら何より。きちんと復讐も果たせて、笑顔で居る…少なくとも、彼女にとっては終わった事に出来たのだろう。だが、マクレガーの名は一生付き纏う…
フィネット公爵家が後見人であれど、養子になる事を拒んだ彼女。被害者遺族に向き合う為にもと…その強さを守っていかなきゃならない…
いや、守りたいんだ。あの日、俺を許してくれた時から……とっくの昔から愛している。少しくらいは誘惑に負けてもいいか…
そっと抱き寄せて、シルディとキスを交わす。「ずっと、こうして欲しかった」と呟くあどけない少女…ヤバい、完全敗北しそう。




