十二話 やらかし17歳期・騎士学校編
三年Bee組…いや、一組しかなかったわ。何でもない何でもない。
三年は引き続き二年の時と同じような過ごし方…但し、就職活動しなきゃいけない。進路かぁ……
王宮騎士団…もとい、騎士団長から「団員全員ぶっ飛ばしておいて他所に行くわけないよな、来いよ。しごいてやるぜぇ(意訳)」と声掛けられている。ケツアナヤバい。
更にミリスベル様からも「炊き出し要員として王都に残りますよね。出て行くわけないですよね(ゴラァ)」と念を押されている…ハハッ。
逃げ場無し。逃げるは勝ちだが役立たずの俺に何処へ行く場所があるというのだね。しかも、何故か今のところ首席らしい…首席は王宮騎士団確定らしい。悪意を感じる…早めに墓建てよう。ここに骨埋めるしかないんだ。
諦めて、今日も今日とて炊き出し要員だ。ミリスベル様が始めた自費の奉仕活動(慈悲ではない)も国の事業として認められ、今では予算もついて他の領でも始まったそうな。子どもも大人も関係なく飢えた人たちが助かる…僕は満足さ(サクタロー)
売れ残りの野菜やら何やら提供する人も居て、ミリスベル様の人気は鰻登り…むしろ、王太子に推す声さえある。やめとけ、あんな絡み酒王女…
その一方で、王子の人気が下降しているらしい。何もしてないのに…何もしてないからか。ミリスベル、恐ろしい子っ!
まあ、身内にしか知らされてないがアスラーンと卒業したら結婚して降嫁するんやけどな。何故、身内でない俺が知っているのか…しかも、既に友人枠で招待されているのか。解せぬ…
一方で俺は女っけ無し…せいぜい、レシアが金せびってくるくらいだ。前に「慰謝料どうしたよ」と聞いたら、「炊き出し費用に寄付した」とか言った。そこは自分の為に使えよ……やれやれ、こんなバカ放っておいたら野垂れ死そうで夢見悪いなぁ。
と、王宮騎士団へ入隊する事を決めたと実家に手紙書いた。そんな次の日…
「騎士様、どうすれば騎士になれますか?」
見回り中にそんな事を問いかけられた。ふむ、もうそんな時期かと思う…去年も似たような事を聞かれた気がする。が、今年は珍しく女の子に聞かれた……炊き出しでも見た気がする子だ。
俺は、こう答えた…
「守りたい何かを見つけたら、立派な騎士になれるよ」
カッコつけである。実際には騎士学校行けばなれるよ。もうすぐ募集期間だよとも言っておいた…頑張れ、未来の後輩。そしてくっころ候補(台無し)
*
貴族学園の方が先に卒業式を迎えた。というか、そのままミリスベル様とアスラーンの結婚式が引き続くとかどうよ。当日、会場に到着するまで気付かない俺も俺だけど…
「アーくん、どうですか?」
「騙しやがって、この絡み酒王女が」
俺だけ明らかに場違いのタキシード着て、卒業式にまで参加させて何が楽しいんだ。浮いてたぞ、ひそひそと「誰にプロポーズしにきたのかしら」とか「勘違い野郎ね」とか言われたんだぞ。ネタのピエロ姿で来るべきだったわ。
ベールにブーケを持った制服姿のミリスベル様は…まあ、綺麗だった。性根は腐ってるけど…なんなら、その制服俺のゲロで一回汚れてるけど。
でもまあ、悪くない。騎士学校ではロクな青春過ごせなかったけど、ミリスベル様との時間は良い青春だったと思う。
おそらく、伯爵夫人となるのだから酒場に来る事も無くなるだろう。むしろ無くなれ、貞淑であれ。絡み酒すんな。
「おめでとう…ミリスベル様」
「アーくん……ありがとう」
まあ、悪くない。こういう初恋の終わらせ方も…………だったら良かったんだけどなぁ。絡み酒王女に恋するとか無い無い。後、やっぱり若干ゲロ臭いわ、その服。
*
数日後、騎士学校を卒業した。と共に寮を追い出された……王都の辺境伯家に舞い戻った。そんで、家賃を請求される事になった。酷くね?




