百十二話 やらかし結婚編47
クリスティーナ嬢の叔父さんへの報告…慰霊碑より墓参り今度してくださいと言われたので後日改めてという事になった。
そんなこんなで仕事に戻る。見回りの仕事は治安の安定…もあるのだが、一番の仕事は道案内だと思う。王都は観光や仕事などで訪れる人が多い。お上りさんアレクくん、騎士に尋ねても分からない。名前を言っても分からない…マジわんわんおって鳴いた。三日かけて別邸探した辛い過去…
だからこそ、道案内は大切なのよ。今日も手製の地図に店の新店舗とかの情報を書き込む……毎月、騎士団全員に刷って渡してるのにだいたいゴミ箱に入ってるのよ。ほんと、ロクでもない連中…そろそろ一般販売に切り替えようと愚痴ったら、クリスティーナ嬢の実家に連れてこられた。商魂逞しいのよ。
「……で、メルは何してるんだ?」
「披露宴の食材調達の手配です。アレク兄様が食べたいものがあれば手配してもらいますよ?」
「卵かけご飯が食べたい…」
メルとアンとレミルーファ嬢が来てた。屋敷の方はヤーマン家の使用人たちが手伝ってくれているので外出も出来るようになったとか…別に盗られて困るものは嫁以外ないからええんやけども。
説明すると全員に当然ドン引きされた…醤油も米もあるのに、衛生管理キチッとしてる卵無いねん。生卵は危険というのが一般的…なら、せめて温泉卵欲しいわ。温泉卵見た事無いし…
後年、辺境伯の温泉地で温泉卵が流行ったかどうかは知らん。とりあえず俺が変人扱いされたのは言うまでもない…レミルーファ嬢、東洋かぶれなのに使えない。卵かけご飯と納豆は日本の誇りぜよ。
まあ、それはさておき地図は定期的に渡す事になった。副業になっておちんぎんの計算にも差し障るくらいの利率で……後でミスティア嬢あたりにしばかれそう。
*
そんなやりとりもあって、時間食ったのでそのまま直帰である。レシアもそこは分かっているので、許可は貰っている。むしろ、見回りから戻ると厄介ごとを連れてくるからなるべく帰ってくるなとまで言われている。行動パターンだけは把握されてるねん。
さて、今夜はうどんだ…卵かけご飯や納豆を力説してたから和食が食べたくなった。うどんだけは売ってるのよね…蕎麦粉もあるが蕎麦打ちしてる人は見かけない。変な食事情。
それはさておき、何故うどんか…そう、月見うどんである。食あたりしたら俺の小聖回復あるよ。とりあえず、半熟の卵が醤油と合うのを楽しんでみろよと…
だいたい、オムレツだって目玉焼きだって半熟食えるだろ。生もあんまり変わらないんだぜ、衛生状態さえ良ければと少しずつ納得させていく予定。鶏飼おうか。それなら牛も…アレクくんの牧場生活にご期待しないでください。愛駄馬だってアンが世話してくれている状態だし。
というか、俺下拵えしかさせてもらえないから月見うどん以外にもかき揚げとかとり天とかセルフうどんみたいになりそう。
「なあ、月見…」
「兄さんは黙っとりーや。今日は散々聞かれまくって腹立っとんねん…」
「…憂さ晴らししたいなら、稽古するか?」
「殺す気かっ!」
和食を知るシェリチェ嬢も手伝ってくれるのだが、矢面に立ったからご機嫌斜めである……まあ、王宮で聞いてくるアホ居ないし、騎士団はアホばかり。それなら、真偽を確かめられるのは学生。貴族学園は休学中なので騎士学校…ましてや、騎士になるのは基本次期当主以外なので多少の不敬は………
シェリチェ嬢が怒るのも仕方ない。でも、どうせベラベラ話したんだろ。ある事ない事…まあ、話したところで事実は覆らないから構わないんだが……どれだけ鰹節削るん?
後、稽古で殺したりしないよ。むしろ、最近槍に武器持ち替えたらしいじゃん…槍の方が優位なのよ。前世薙刀部って言ってたじゃん…下手すりゃ俺の方が死ぬわ。
なお、俺が所望の月見うどん…アンがきちんとよく炊けた月見にしてくれました。「お腹壊すからメッ!」って言われたら何も言えない……鰹節を木片って思うくらいだから仕方ないわな。
ごぼうは木の根っこ、昆布は羊皮紙…え、それらは知ってる。さようか…アンに教えなきゃいけない事多そうである。とりあえず、きつねうどんのきつねは◯んぎつねな。お前だったのかって供養して食べるのが定義……ミュゼットとシェリチェ嬢が呆れた目で見てるわ。




