そんな場合の彼氏
「じゃんけんか……平和的なやつでよかったぜ……」
くそっ、もっと運ゲーじゃなくて実力勝負なやつにしてくれよ。腕力勝負の殺し合いなら間違いなく俺の勝ちなのに。
何か必勝法はないのか……。そうだこれだ。
「なぁ、理名。 ……俺はパーを出すから、チョキを出してくれ」
「……えっ!? そんなのできないよ!」
「俺の分まで生き残ってくれ、頼む。ただし、死ぬまで俺のこと忘れないでおいてくれよな」
完璧だ。単純なこいつのことだ、俺の言葉に騙されて死んでくれるだろう。これで俺は一生遊んで暮らせる。ふははははは!
「さあ、やろうぜ。今までありがとう」
「いや! そんなのいや!」
『それでは準備が整ったようなので始めます』
いや、待て。こいつ天然に見せかけて結構ずる賢い部分があったぞ。
俺が裏切るということくらい想定しているだろう。ということはチョキを出せと指定したことで俺がグーを出すということくらいはすぐ行き着くはずだ。となると理名はパーをだすので俺はチョキを出せば勝てる。危ない危ない。さすが1年以上付き合った俺だ、理名のことなんてお見通しだぜ。
違う違う。本当にそうだろうか。これはさすがになめ過ぎかもしれない。普通に考えてすぐに行き着くこの答えで終わりだろうか。もう一段階先をいかないと危険かもしれない。すなわち、チョキを出せば勝てるという予想まで理名がしていた場合、理名は当然グーを出してくるだろう。だから俺はパーだ。
読み切った、これで間違いなく勝てる。お前だけ遊んで暮らせるなんて、そんなことさせねーよ。
『それでは始めます。最初はグー、じゃんけん……』
ポンで同時に二人の手が出揃った。
俺はパー、理名はチョキだった。
「そ、そんな……」
マジかよ。俺が負けた……信じられん。なんでこいつ勝ったのにショック受けてるんだよ。俺のこの予想を上回ってくる程ずる賢いとは思わなかった。
まあ、負けてしまったものはもう仕方ない。死ぬだけだ。最後まで良い彼氏を演じてやるか。
「理名、ありがとう……。さようなら」
如何でしたでしょうか。
ある意味デスゲームあるあるですね。