「……マックは? 久々に食べたいな……なんて」
私達の今回の目的地は大型ショッピングモールのギーネット。
最寄り駅の栄居から電車を3回乗り換えて約40分。地味に遠いんだけど、近場で遊べる場所は全然無くて、私達と同じくらいの子なら皆、遊ぶならギーネットまで行って遊んでる。
ギーネットに行けば映画館もあるし、服屋もいっぱいある。特に目的もなく行っても、余裕で1日潰せるくらいには色んな店がある。
「今日は何するの?」
「秘密。楽しみにしててよ」
そう言えば、ギーネットに行って何をするか聞いてなかったことに今更ながら気付いて聞いたんだけど、美樹はいたずらっぽく笑ってそう言った。
今日の美樹は可愛さがカンストしてる。撮影欲が高まるけど、電車の中での撮影は色々誤解を招きそうだ。
仕方ない。この美樹は心のアルバムに収めよう。
電車にガタゴト揺られて、約40分。ようやくギーネットに辿り着いた。
土曜日だからか人が凄く多い。小さな子供を連れた家族連れとか、若いカップルとか、私達と同じくらいの年の女の子たちとか。
2人組の女の子達が私達の前を通り過ぎる。手を繋いでとても仲良さげだった。2人とも笑顔で、楽しそうでなによりだ。
可愛い。
とある漫画でもあったけど、女の子の1番の化粧はやっぱり笑顔なんだ。笑顔の女の子は何よりも可愛い。撮りたい気持ちが湧いてくる。お願いしたら撮らせてくれないかな……。
後を追おうとしたら、美樹に手を握られる。
「勝手にどっか行かないでよ」
そうだ。今は美樹とのデート中。デート相手をほっぽって、どっかに行っちゃうのはマナー違反だ。
さよなら。可愛こちゃん達。君達のことは忘れないよ。
「ごめんごめん。デート中なのに。どうしても可愛い子に目移りしちゃって」
「いつものことだし……」
「そうだよね! 可愛い女の子が居れば撮りたくなるのはしょうがないよね!」
「反省の色がない!」
万力のように強い力でギリギリと私の手が握られる。
「痛い痛い。ごめん、許してってば。ごはん奢るから!」
「イエローカードだからね。次やったらもう……」
続きの言葉が気になるけど、やっと手の力を緩めてくれた。
正直、お金は心許ないけど致し方ない。可愛いJKとデートをするだけで何万もお金を払う人達に比べれば、 数百円の出費で済む私は恵まれている。
「茜は朝ごはん食べてきた?」
「食べてないよ」
今でも食べてこなくて良かったって心底思ってる。うん。本当に。
「じゃあ、ちょっと早いけどお昼ご飯にしない? 混まないうちに」
スマホで時間を確認すると11時ちょっと前。
確かにちょっと早いけど、いい頃合いかもしれない。今の時間でもそれなりに混んでるかもしれないけど、12時過ぎたらもっと酷くなるだろうし。
「いいよ」
「よし、じゃあ行こうか。茜が奢ってくれるらしいし、高いのでもいいな」
「お、お手柔らかに」
「回転寿司にしようか」
「……マックは? 久々に食べたいな……なんて」
美樹は何も言わないで、私の手を引いて歩く。
美樹が高そうな店に入ろうとしたら全力で止めよう。私はそう決意して美樹に歩調を合わせる。
手が繋がれたままなのは黙ってよう。
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