「本気なんですか?」
「セーラー服を着た可愛いJKをいっぱい撮れると思ったのに、これじゃあ何の為に青陵に入ったか分からないよ」
美樹はジト目で私を見つめる。そして無言のまま帰ろうとするから、私は慌てて美樹の手を握る。
「ス、ストップ! 美樹も一緒にどうすれば写真部創れるか考えてよ! ね?」
美樹は深い溜め息を吐く。
「週末買い物付き合って」
「分かった。何時間でも美樹に付き合うよ」
美樹は私の前の席に座ってくれた。私も自分の席に座り直して私の机を挟んで向かい合う。
「と言っても、どうすればいいかなんてもう分かりきってるじゃない」
美樹は頬杖を付きながら呆れたように、なんてことないように言う。
持つべきはやっぱり頭の良い友達だ。私だけじゃ全然思いつかなかったのに、すぐ思いついたなんて。
「どうすればいい?」
「活動目的をまともなものに変えればいいだけじゃない」
期待を裏切られた。私はとても悲しい。例えるなら大好きな作品のアニメ化が決まってアニメに超期待してたのに、いざ見てみたらクソアニメだった時と同じような悲しみ。
「私の小さい頃からの夢を諦めろって言うの?」
「そうじゃないよ。承認さえもらえればいいんだから、まともな目的……例えばコンクール入賞とか書いとけばいいんじゃないの? 実際は違ってたとしても」
「目指す気全くないのにそう書くのはなんか騙してるみたいで嫌」
「でも正直に書いても駄目だったんでしょ? ならしょうがないんじゃない?」
「……そうだね」
私は創部届を書き直す。
新たに書かれた活動目的はしっくりくるものじゃなかった。
「明日、また出してみるよ」
次の日。
放課後になって私はまた教頭先生の所へ行った。
教頭先生は「また貴女ですか……」と言いつつも、創部届を受け取って見てくれた。
「本気なんですか?」
「え?」
「コンクール入賞。本気で目指して活動をするんですか?」
何も答えられなかった。
「本気なら構いません。指摘した内容も改善されてるので、後は私の方で処理を進めておきます。遅くとも再来週には写真部として活動できるようになります」
承認してもらえるみたいだ。これで、夢に近づいた。良かった。
……本当に?
「すみません。やっぱり書き直しさせてください」
やっぱりこれじゃ駄目だ。
私が納得できない。納得できない部活を創っても多分後悔する。
教頭先生から創部届を返してもらう。
「部活にこだわる理由は何ですか?」
「え?」
「写真を撮るのは部活じゃなくても出来ます。でも、貴女は部活を創ってまで部活としてやろうとした。それは何故なのか。考えてみればいい案が浮かぶ……かもしれませんね。明日から土日休みなので考える時間は沢山あると思いますよ」
私は教頭先生にお礼を言って職員室を出た。
教頭先生に言われて気付いた。
私はどうして部活にこだわってたんだろう……。
個人で撮ってるよりも部活で撮ってる方が、モデルになってもらえる可能性が高いと思ったから。 でも、それだけじゃないような気もする。分からない。
「分からないなぁ」
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