「身長やらスリーサイズ測らせて!」
以前の回、改稿前と後で、オチが変わってます。
改稿前しか読んでない方は改稿後も読んでいただけたらと思います。
「そんな感じで出来たのが、この学生相談部。でも、相談に来る人があんまり居ないから、写真部って名乗ってるよ」
東条さんはそう言って話を締め括った。
「基本的な活動方針としては、相談に来てくれた人の相談に乗る。それが無かったら写真撮ったり、今みたいにトランプで遊んだり……ちなみに今は皆で大富豪やってたんだけど、花凛ちゃんもやる?」
東条さんはテーブルに散乱したトランプをまとめながら言う。
「遠慮しとく」
「そっか……」
東条さんはちょっと残念そうにしながら、トランプを箱に戻した。
「茜。私達のことも紹介してよ」
さっきから私のことをジッと見てた子がそう言ってきた。
「そう言えば、遥とゆうちゃんは花凛ちゃんとは初めましてになるんだ。いい機会だし、全員自己紹介しようか」
そう言って東条さんは立ち上がる。
「部長兼カメラマンの東条茜だよ。可愛い女の子を見たり、撮ったりするのが好き。これからもよろしくね」
東条さんから時計回りで自己紹介することになった。
ちなみにどういう並びで座ってるかというと、私がいわゆるお誕生日席で左手前側に東条さん。右手前側、つまり東条さんの前が上原さん。奥に知らない人達という並びだ。
知らない人達の近くに座ることがなくて良かった。
案外、東条さんが気を遣ってくれたのかとも思ったけど、そうじゃないだろうなって思う。
次はさっき扉を開けてくれた子が立ち上がる。眼鏡で髪の毛を三つ編みにして左右に垂らしている。こう言ったら失礼だけど地味な子。
「風見悠です。悠久の悠って書いてはるかって読みます。遥ちゃんと名前が被ってるから、ゆうって呼ばれてます。良かったらゆうって呼んでください。ここでは遥ちゃんの衣装作りをお手伝いしたりしてます」
ペコリとお辞儀をして座った。
「次は私!」
そう言って勢いよく立ち上がった所為で、椅子が倒れそうになって慌てて支える。
さっきから私のことをジッと見てた人だ。見た目はボーイッシュでかっこいい系の子。女子校とか(うちも女子校)だと王子様扱いされそうな見た目。
さっきの行動を見る限り、東条さんタイプの人なんだろう。
つまり、騒がしい人。
「私は、白木遥。ゆうの自己紹介に合わせると、遥か彼方とかの遥。趣味は裁縫。可愛い服とか作るのが好き」
意外な趣味でびっくりした。
「今、似合わないとか思ったでしょ?」
「い、いえ……すみません」
「気にしないで。私も分かってるから。前までは隠さなきゃって思ってたんだけど、どっかの誰かさんが認めてくれたから隠すの止めたんだ。だからここでは自分の趣味全開の衣装を作ってるよ」
白木さんはチラッと東条さんを見る。
彼女もまた東条さんに救われた人なんだろう。
「話には聞いてたけど、本当にリンリンそっくりだね」
「でしょでしょ!」
何故か東条さんが嬉しそう。
「これはもう是非! コスプレしてもらないと! ということで、身長やらスリーサイズ測らせて!」
白木さんは手をワキワキさせる。
「コラッ遥。花凛ちゃんを困らせちゃ駄目でしょ!」
東条さんが窘めるけど、お前が言うなっていう感じだ。
「茜に言われたくないなぁ……。土下座されるよりはマシだよね?」
「失敬な。土下座は昔からの謝意を伝えるお辞儀なんだよ。遥みたいに変態的に迫った訳じゃないんだよ」
東条さんと白木さんが言い合ってるけど、どっちもどっちだ。東条さんの土下座も白木さんの手をワキワキさせるのも等しくドン引きだった。
「当事者間で言い合ってても埒が明かない! ここは第三者の意見で白黒はっきりつけようじゃないか!」
「茜も偶には良いこと言うじゃん」
「「ゆう(ちゃん)!!」」
2人は同時に風見さんへ顔を向ける。
可哀想に風見さんに白羽の矢が立ってしまった。
「私⁉」
「「私の方がマシだよね?」」
2人とも顔をズイッと、風見さんに近付ける。
それにしても息ピッタリだな。
風見さんは2人に迫られてアワアワしてる。
「いい加減にしなさい!」
ずっと続くかと思ってたこの困った状況を壊したのは上原さん。
やっぱり彼女は頼りになる。
「2人してみっともない。私から言わせてもらえば、どっちもどっちよ」
「そんなはず……」
東条さんが反論しようとしたけど、上原さんが睨みをきかせて黙らせる。
「2人ともゆうちゃんに謝りなさい」
「「ごめんなさい」」
「いえいえ、気にしないでください」
上原さんには逆らえないのか、2人とも謝った。
この部活の力関係が見えた瞬間だ。
上原さんは溜息を吐いて咳払いをする。
「内藤さんもごめんね? こういうメンバー達も居る部活なんだけど、それでも入ってくれる?」
上原さんは、出来の悪い可愛い生徒を見守る教師のような顔で言ってきたけど、私の返事は決まってる。
「上原さんが居るなら大丈夫」
「そう。良かった。じゃあこれからもよろしく。あと、美樹でいいよ。私も花凛って呼ぶし」
「分かった。よろしく美樹」
「美樹ずるい! 私も茜でいいよ」
「私も遥で!」
「私はゆうで」
今まで名前で呼び合う人が居なかったから気恥ずかしいけど、慣れてこう。
「ところでミッキー、自己紹介してないよ?」
遥が美樹のことをミッキーと呼んだ。
「でも、そう言えばそうね。と言っても特に話すことはないんだけど……。ここではそうだな。茜のお目付け役って感じかな」
「それだけじゃないでしょミッキー。ミッキーにはそれ以外もモデルっていう大事な役割があるじゃん!」
「モデル?」
美樹が余計なことを言うなって感じの視線を遥に向けるけど、遥はどこ吹く風と続ける。
「さっき私とゆうが衣装作ってるって話したよね? それで作った衣装をミッキーに着てもらって茜が写真を撮るっていうのも部活動の一環なんだ。他にも作った衣装は相談報酬で写真撮る時に着てもらったりするんだけど、こっちは強制じゃないから、私達の作った衣装が日の目を見るのは、ほぼミッキーが着てくれた時だけなんだ」
それで思い出したのが転校初日。
朝早くから校門前の桜に集まって違う制服を着ていた美樹の姿。
「もしかして先週の朝、美樹が違う制服着てたのって?」
「そうそう。あれは新入生歓迎会の部活紹介にと思って撮ってたんだけど、何で花凛ちゃんが知ってるの?」
茜が不思議に思ったのか聞いてきた。
「その日が転校初日で早めに学校に来てたのよ」
「そっか。そう言えばあの日が運命の出会いの日だったね! 全然気づかなかったよ。じゃああの時、もしかしたら満開の桜をバックにした花凛ちゃんを撮れてたかもしれないってこと? うわぁ、惜しいことをしたなぁ……」
茜は本気で悔しがってて全然気づいてない。
美樹が凄く不機嫌になってることを。
「まぁ過ぎたことはしょうがないか。あの時の美樹も十分可愛かったし」
美樹の機嫌がみるみる直ってく。
美樹って意外と単純?
「でも次こそ! 次こそ花凛ちゃんを撮りたい!」
「次って留年する気?」
「しまったー! 折角のシャッターチャンスを逃してしまっていたなんて!」
茜の絶叫が部室に響く。
凄い落ち込み様だった。
どうしようか悩んでたら、ドアが2回ノックされて開く。
「相談があるんだけど、今大丈夫?」
どうやらタイミングが悪く相談者が来てしまったようだ。
ここまで読んでいただいてありがとうございます。
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