妖魔との邂逅
一刻「妖魔との邂逅」
男は本を開く。
「君は妖怪や悪魔といった、存在を信じるかい?」
「......」
「まぁ、信じないだろうね。なんせ見たことがないんだから。」
「......」
「では、信じてもらうよう。ある者達の話をしよう。」
「魂に誓った者達の話をね。」
「いいか、霊助人が困っていたら助けてあげなさい。」
「もし、己の行動に疑念を抱くなら己の魂に問い掛けなさい。」
「その行動が正義と思うなら誰が何と言おうと己の魂に誓い遂行しなさい。」
「う~ん、分かったよ。父さん。」
「今は、詳しく分からなくていい。いつか助けになるから。」
..................
............
......
「はぁ、ここで俺の覚えてる記憶は終わるのか。」
ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリ
「う~ん、もうちょっとだけ寝かして。」
ジリリリリリリりりりリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ
「あ゛あああああもううるさい。寝れねーじゃねぇか。」
と言い、目覚まし時計を止める。
「起きるかぁ。」と言い階段を降りリビングに向かう。
「おはよう。母さん、桜」
「おはよう。真」
「おはよう。お兄ちゃん。」
「私、もう家出るからちゃんと鍵閉めなさいよ真。あっ後今日曇りで午後から雨が降るかもしれないからあなた達傘持ってきなさいよ。」
「分かったよ。」
「あれ、桜、父さんと小雪ってどこに行ったの?」
「お父さんは、5時に羽田空港に向かって、今は京都行きの便に乗ってるんじゃない。小雪は6時30分位に朝練に向かったよ。」
「分かった。所でお前五時に父さんが行くって知ってるんだったら、今七時半だけど何してたん?」
「ポッシュモンスターで厳選してたんだ。」
「ゲームのことはよくわからないけど頑張ってね。」
10分程他愛のない会話をして、真は家を出た。
「あっ、おはよう勇」
「おはよう真」
「今日から、また学校だよ。」
「まあ、休み明けだけど学校頑張れよ。」
「いいよなぁ、勇は」
「何がだ。」
「だってお前めっちゃ勉強出来んじゃん。というかお前は何でゴリゴリのムキムキのマッチョマンなのに、運動できねーんだよ。おかしいだろ。」
「う~ん。この体は家系だけど、勉強みたいなものは暗記するだけだから簡単だよ。」
「そうやって、勉強を暗記するだけって言えるお前が羨ましいよ。」
「そう言ったって、真は俺より地頭がいいし、本気を出せば凄い勉強出来んじゃん。なんで学校の勉強しないんだよ。」
「僕が勉強しない理由は、学校の授業がつまんないからです。」
「じゃあ何で、普通学科に来たんだよ?」
「いやだって、僕割と人見知りなんだよ。」
「お前ってそんなに人見知りだったけ。」
「人見知りだよ。」
「そうか。話変わるけどさ真、何かこの道さいつもと違くない?」
「そうかな?」
「いや何か静かっていうか、なんか変なんだよ。」
「う~ん、そうなんか、まぁ勇が言うんだったら変なのかな。お前結構昔から勘が鋭かったからな。」
「う゛おえ゛え゛え゛え゛。」 勇は突如として吐き出した。
「えっえっ!?何どうしたん、大丈夫か勇?」
「あ゛あ゛あ゛あ゛頭が頭が痛い。」
「どっどうしよう、そうだ!こうゆう時は救急車だ。」
真は119番に電話をかけたが、繋がらなかった。
「えっ、119番繋がらない事ってあるの!?」
勇は立ち上がる。
「大丈夫か?勇」
勇は、真を殴り飛ばす。
「いってーないきなりなにすんだよ。勇!!」
勇の肉体の右腕が異形のものえと変えていく。
「ふしゅーふしゅー」
「いっ勇?」
勇は、右腕を振り下ろす。道路がひび割れる。
「道路って拳振り下ろしただけで割れたっけ。これは、ほんとにやべぇ死ぬかも。逃げるしかねぇ。」真は逃げる。
「嘘っあいつあんなに速かったけ。」
小石に真はつまずく。
「これは、死んだかも。」勇の肉体の拳が真の眼前に迫り真は目をつぶる。
ドッという鈍い音が周囲に響き渡る。
真は目を開ける。
「なっ何だこれは。」
真の眼前には青白い光の盾?のようなものに阻まれる勇の拳があった。
「大丈夫かい少年?」
「大丈夫ですけど、何かその盾みたいなもの割れかけてますよ。」
「何っ、あっこれはやばい逃げるんだ少年。」
「えっあはいっ分かりました、お姉さん。」
盾が割れる。
「刻み印し、我が敵を捕縛せよ。縛印式衣帯不解の陣。」
白い帯が地面から現れ、勇の肉体を包み込んでいく。
「よしっ、逃げるんだ少年。」
「包帯みたいなもの、破れかけてますよ。」
「えっこいつ地じゃないのか。」
「少年、目をふせて!」というと、掌サイズの何かを投げる。
「破裂しろ。」というと強烈な光を放つ。
「やっぱ、一緒に逃げるぞ少年。」
「わかりました。」
二人は逃げ、近くの塀に隠れる。
「ふぅ、どうやら索敵する能力はなさそうだな。」
「あ、あの~あれってなんですか?」
「あれとは?」
「えっと、僕の友人の勇が何かヤバイものになってたり、あの盾みたいなものとか、包帯みたいなものが勇を包みこんだものとか何なんですか?」
(どうしようこれ、説明したほうがいいのかな。でもな、この子一般人だしな)
「う~~~~~ん」
「あの、大丈夫ですか?」
「あっすまない。それより君こそ頬が腫れてるけど、大丈夫なのかい?」
「多分今、体が興奮してて痛みが感じていないんだと思います。」
(えっ、この子痛めつけられて興奮するってこと?いやでもそういう人もいるしな。)
「まぁ、後々に骨が折れてたりすると困るから治しておこうか。」
「治す?」
「ええ、回印式といって治したい箇所に文字を書いて、霊力を流すことによって治癒力を高めて治すことが出来るのよ。」
(えっこの人何言ってるんだろう。)
「じゃあ、やるわね。刻み印しこの者を治したまえ、回印式失治回復。」と唱えながら白いもやのようなもので真の頬に文字を書くと、
みるみるうちに治っていく。
「えっ、さっきまで腫れてたのに治った!?」
(この女の人の言ってた事は嘘じゃなかったのか。)
「あのでは、勇のあの何ていうか変なものは治せるんですか?」
女は塀の横から顔を出し勇の様子を確認する。
「う~ん、今は進行状態が右腕だけで止まっているから治せるかな。」
「本当ですか。どうやって治すんですか?」
「あれはね、人鬼という妖魔の一種で人に憑りついて、人の感情の起伏を餌としていて、成体となるとき今私達がいる隠し世と呼ばれるこの世界に、誘導するんだ。それで、今の状態は憑りついてる状態から成体に移行する途中だから俗にいうお祓いをすれば、元に戻るから。動けないようにして元の世界、現世に運ばなきゃならないのよ。」
「どうやって、動けなくするんですか?」
「さっき使った動けなくする術のもう一段階上の術を使って動きを封じるのよ。」
「分かりました。僕みたいな一般人が居ると邪魔になるのでここで隠れてますね。」
「そうしてくれると助かる。」
「頑張ってくださいね。」
女は頷き勇の前に現れる。
「君は今自分が消えそうで辛いだろう。私も昔に同じ経験をしたからね。
君を今救ってあげるよ。その地獄からね。」と指を指しながら言う
「刻み印し、我が敵の動きを封じよ縛印式不解帯錬然。」
地面のコンクリートが砕け帯の形を成し勇の肉体を包み込んでゆく。
勇は、雄叫びを上げ迫りくる帯を振り払い、女に殴りかかる。
「危ない!!」と真は叫び、勇の右腕は真の胴体を貫く。
「なんてことを。君達がどんな関係か深くは知らないが、流石にそれはやり過ぎるんじゃないか。」更に多くの帯が現れ、勇の肉体を包み込む。
勇は腕を真の肉体から引き抜こうとする。
「逃がしやしないよ。」と勇の腕を引き留める。
真と勇の目が合う、「これで、貸し1だからな勇。」と言い真は気を失う。
「君の勇士に感謝する。」
勇の肉体を帯が包み込む。
数分後
「うっう~ん」
「目が覚めたかい。」
「あれっ、僕確か勇に貫かれたんじゃなかったけ。」
「無理に起き上がろうとしないでね。まだ、傷が完全に塞がっていないから。」
「そうですか、ありがとうございます。それから、勇はどうなったんですか?」
「あそこに立っているものが君の友達だよ。」
「勇を、元の世界に戻せば治せるんですね。」
「えぇ、そうよ。」
「それと、僕達まだお互いに名前を知らないですよね。僕の名前は神楽坂真と言います。勇についてはありがとうございました。」
「私の名前は、大海人麟というんだ。それと、ありがとうはまだ早いよ。現世に戻って、勇君のことを元に戻してからだよ。」
「そうですね。」
真達から見て勇の向こう側に、強い光が放たれる。
「何なんだあれ、眩しい。」
「あれは、現世から隠し世に来る時に放つ光よ。」
(おかしいわね、ここの管轄がこれなくなったから私が来たのに、来る前の事前通達が無いってことは、「敵ね。」
「真君、ここには今日私しか来ることはないから、敵の可能性があるわそこの塀に隠れましょう。」
「分かりました。勇はどうするんですか。」
「今彼はたぶん何かの作品とみられると思うから、大丈夫よ。」
「ほ、ほんとに大丈夫かなぁ。」
光の中から、人が現れる。
「いや~困ったもんだよ、うちのお嬢様にはいきなり呼び出されて、実験体の回収を命じる何て、酷いと思わないかいそこのお二人さん。」
「ばれているのか。あなたの目的は何かしら?」
「隻眼隻腕の長身細身の和服姿ってことは、あなた酒吞童子かしら?」と言い身構える。
「正解。俺は酒吞童子の国士無双というんだよろしくね。
あっ今は君と争うつもりはないんだ。そこにあるそれを回収させて欲しいだけなんだ。」
「その願いは、なしだ。そいつは、僕の大切な親友なんでね。」
「う~ん、困るなこれを回収しないと怒られちゃうんだよ僕。」
「帰って怒られてろ。」
「はぁ、僕は君達を一瞬で殺す事が出来るんだ。」
「それでも、何も抵抗無しに連れいかれるわけにはいかないんだよ。」
「じゃあ、仕方ない死んでもらうとするか。」というと、腰の刀を抜き、横に振りぬく。
立っていられないほどの、風圧が真達を襲う。
「伏せて!!」と言い女は真を地面に伏せさせる。
「いったい、何が起きたんだ。」
真は目を開け酒吞童子のほうを向くと、真達と勇の間に風の壁ができる。
「ばいば~い。」と言いながら、勇の肉体を持っていく。
地面を拳で叩き、真は叫ぶ。
「ちくしょー、ちくしょーー勇ーーーーー」
「すまない、真君。」
「いえ、麟さんが悪いわけじゃないんです。麟さんの判断は正しかったんですから。」
「隠し世に来てしまったから、何かしらの異常がないか。検査するために私が所属している所に来てもらうわね。」
「分かりました。」