宇宙人を信望した女の記録
あるところに美しい女がいた
そんな女を、必死で愛そうとした、醜い男がいた。
女は少々気が触れていた。
突発的に、深い意味さえなく、良く人を殺した
けれども何人殺しても、その女は罪に問われることはなかった。
男が、女が殺した人の死体を巧妙に隠していたからだ。
いくら殺しても、罪に縛られることのないこと。
そのズレが、女に可笑しな妄想を植え付け、やがてそれは育まれた。
信仰。心酔。あるいは愛情。
得られた不可思議を、女は祝福と思い込んだ。
ある日、女は自分に付きまとっていたストーカーを殺した。ただ、うるさかったのだ。
行為の後、女は小さく呟いた。
「―――大丈夫よ。私には宇宙人がついているのだもの」
ある日、女は口の悪い上司を殺した。ただ、うるさかったのだ。
行為の後、女は小さく呟いた。
「―――大丈夫よ。私には宇宙人がついているのだもの」
ある日、女は色恋沙汰のもつれで友達を殺した。ただ、うるさかったのだ。
行為の後、女は小さく呟いた。
「―――大丈夫よ。私には宇宙人がついているんだもの」
ある日、女は些細な言い合いで男を殺した。ただ、うるさかったのだ。
行為の後、女は小さく呟いた。
「―――大丈夫よ。私には宇宙人がついているんだもの」
数日の後女は捕まった。
鎖で繋がれた女は小さく呟いた。
「―――あぁ、きっと、私は、一番大切なものを失ってしまったのね」