69.難儀な師匠
女性4人のベネットパーティーと依頼を受け、モンスターを退けたユグドラ達。
ゲームやアニメとは違い、萌えモンスターがいない事が不満なようだ。
「よし、回収はこの辺でいいでしょう。先へ進みましょうか」
さらに森の奥へと進み、目的の場所へ到着した。何とかという植物の分布と数を調べる依頼のようだけど、俺にはさっぱり分からないから、ソッチはお任せして周囲の警戒をしよう。
こういう時は俺って役立たずだな~。リアはみんなと一緒に調べてるのに。
周囲を警戒するのも立派な仕事さ! てかそれしか出来ないんだから頑張ろう!
調査も終わり王都へと戻ってきた。
結局警戒してたけどモンスターは出てこなかった。
「あらお帰り。調査は終わったかしら?」
「ええ、無事終わったわ。やっぱりテラタンが大量にいたわね」
王都の冒険者ギルドへ報告に来た。相変わらずオネエは仕事をしている。
「やっぱりアナタの見立て通り1パーティーで行かなくて正解だったのね」
「本当よ。テラタンが50匹も出てくるんだもの、最低でも熟練パーティーと一緒じゃないと無理ね」
「そんなに居たの? ユグドラちゃんとアセリアちゃんをキープしておいて良かったじゃない」
「良かったけど、自信を無くしそうよ」
「そこは気にしたらダメよ。みんなそう思ってるから」
俺達の話しをしているようだけど、褒められているのか残念がられているのか分からん!
依頼完了の手続きを終わらせたのでパーティーは解散した。
解散はしたが今後とも御贔屓にして欲しいとの事で、ベネットパーティーの家を教えてくれた。4人で住んでいるらしい。
次は何の依頼を受けようかと掲示板を見ていると、知った顔がギルドに入ってきた。
「いた! おい、いつになったら師匠を紹介してくれるんだ!」
誰だようるさ……アズベルだ。あ、忘れてた。
「ユグドラ! あの仕事が終わってどれだけ経ったと思ってるんだ! さっさと紹介しろ!」
人差し指で額を何回もつつかれた。いたいいたいいたい。
「いや、えーっとね、よっ、久しぶり」
「久しぶり、じゃねーよ、いつだ!いつになるんだー!」
「えーっとね、うん、一度家に来てくれ」
「家? そういえば家を借りてるって言ってたな」
「そうそう、家で話そう」
アズベルを家に案内し、とりあえずは居間でコーヒーを飲んでくつろいでもらっている。
「でっかい家だな。二人でこれは大きすぎるんじゃないのか?」
「そうだな~、二人なら大きすぎるかな」
「おお? 他にも住んでるのか?」
「そうだな~、ルリ子とか紹介する、お前の師匠とかも」
「……で、あれは一体なんだったんだ?」
あれ、とはアズベルの目の前でルリ子にキャラチェンした事だろう。
チラっとリアを見るが、リアは一度目を合わせてコーヒーを飲んだ。お任せします、か。
立ち上がって窓のカーテンを閉めた。キャラチェン部屋に行くよりもここで見せた方が早いだろう。
「一体何なのかは、俺にも分からないんだ。キャラクターチェンジ」
キャラクターチェンジ
ユグドラ
⇒ルリ子
しずか
番長
ディータ
メイア
◆ ユグドラ ⇒ ルリ子 ◆
体が薄く光り、自分の姿がゆっくりと変わっていく。
アズベルの目の前でキャラクターをルリ子に替えた。
「こういう事さね。アタシもユグドラも、しずかも同じさ」
アズベルが持ってるコーヒーカップが落ちそうになったが、リアが落ちる前にテーブルに置いた。
二回目だけど、理解はできていないだろうねぇ。
「お前は約束通り誰にも言ってないみたいだからねぇ、事情くらいは話してやるよ」
アズベルはリアを見てアタシを見て、またリアを見てアタシを見た。
「アセリアは知っていたんだな?」
「はい、随分前に聞きました」
「ユグドラはルリ子で、しずかでもあるって事か?」
「そうです。今から紹介するアズベルさんのお師匠もです」
「多重人格ってやつか?」
「さあねぇ、人格どころか性別も何もかもが違うからねぇ。6人の人間を好きに選べるって言った方が良いかもしれないねぇ」
「6人……6人もいるのか」
「そうさ。じゃあとりあえず、しずかにでも替わろうかね」
キャラクターチェンジ
ユグドラ
ルリ子
⇒しずか
番長
ディータ
メイア
◆ ルリ子 ⇒ しずか ◆
体が薄く光り、自分の姿がゆっくりと変わっていく。
ふぅ、どうしましょうか、順番に全員を見せても良いですが、アズベルさんの知らない人を出しても混乱するだけの様な気がしますし、まずは3人を見せましたが……どうでしょう。
「このように、交替したいときに自由に交替できます。雑用でいなくなるというのは嘘で、本当は1人しか出てこれないので適当な言い訳をしただけです」
頭を抱えていますね。リアでさえ混乱してしばらくは対応に困っていましたから。
「無理に理解しなくても構いません。こういう変わった能力を持っている、とだけ知っていてくれれば大丈夫です」
「そ、そうだな。ユグドラの力自体も最初は信じられなかったからな、そういう奴なんだと深く考えなければ良いだけだった」
ああなるほど、確かにユグドラの戦闘力もこの世界ではズバ抜けていますから、理解できなくても実際にいるのだからと深く考える必要はないわけですね。
一旦ユグドラに戻りましょう。
キャラクターチェンジ
⇒ユグドラ
ルリ子
しずか
番長
ディータ
メイア
◆ しずか ⇒ ユグドラ ◆
体が薄く光り、自分の姿がゆっくりと変わっていく。
「とまぁ少々変わった能力を持っているわけだけど、俺にもなんでこんな能力があるのか分からないんだ」
異世界から来たことは言わなくていいだろう。言えば更に混乱してしまう。
それに異世界から来た理由もこの能力の理由も、神様しか知らないだろうから。
「こんなヘンテコな能力を持っているんだけど、こんな奴に剣術を教えてもらっても大丈夫か?」
「いや、そのなんだ、すまないが……」
額に手を当てて目も合わせてくれないか、まあ無理だろうなこんなの。
「6人全員の名前を覚えられるかな俺!」
「は?」
「え?」
「だってお前、1人だと思ってたら6人なんだろ!? ルリ子としずかはいいけど、他の3人はどうかな~、名前が出てこなくて機嫌損ねたらどうしよう」
??? え? ああそっち? 名前の心配してたのか?
「えーっと、取りあえずはよく出てくる3人と、アズベルの師匠になる番長を覚えてくれればいいよ。残りはアニタさんの師匠と、当分用事の無い奴だから」
「え! そうなのか! じゃあバンチョウっていう師匠だけ覚えとけば問題ないんだな!?」
「うんそう」
「はぁ~よかった~。名前覚えるのって結構苦手なんだよな~」
「そ、それは良かったね」
ん~? 悩んでたのは名前を覚えるのが大変だからなのか? もっと他にキモイ! とか人間じゃない! とか化け物! とか言われるものと……自分で言ってて落ち込んできた。
「アズベルさんはルリ子さんを知ってるからまだ楽ですよ。私なんて、ユーさんとしずかさん以外の全員を覚えないといけないから大変だったんですから」
「そうか~アセリアは更に大変だな。難儀な奴だぜ全く」
「でも全員覚えちゃうと兄弟が増えたみたいで楽しいですよ」
おー、おおー? 大丈夫、なのかなコレは。
「それで、師匠に挨拶はできないのか?」
「おお、今替わる」
番長にキャラクターチェンジだ。




