66.ほぼ壊滅。生存者4名
祠を調査すると地下に巨大な空洞を発見した。
地下の巨大な空洞には大木の様な食虫植物・ビジランティが待ち構えており、鞭のようにしなる茎の先にはハエトリグサが、本体の近くにはウツボカズラが沢山付いていた。
モンスターとの戦いに慣れていない騎士数名が、一瞬で倒されてしまった。
ラフレシアは確か超臭い巨大な花だ。くみ取り便所の匂いがするとか。
入ってなくて良かったと心から思う。
ハエトリグサが襲い掛かってくる。一か所に纏まっていたのでは掴み放題になってしまうので散開し、じっくり1本ずつでも減らしていこう。
前衛は茎や葉を斬りつけて、ゆっくりでも確実に減らそうとする。しかしそれをあざ笑うように茎や葉が再生してしまう。
なんて再生力だ。トロールの比じゃない。10秒以内に切り取った葉が再生している。
ならばと魔法使いがファイヤー・ボールで燃やすが、ウツボカヅラの壺に葉を入れて消火して、更に再生して出てくる。
「きりが無いな。ブラスティー、接近して本体を攻撃しよう。このままだと終わらない」
「いいだろう」
左右に分かれてビジランティ本体に向かって走り出す。俺達にほとんどのハエトリグサが攻撃してきたが、俺とブラスティーならこんな攻撃は何でもない。
問題は再生力だけだ。
ビジランティ本体の根元にたどり着き、改めて大きさを確認したが大きすぎる。ほぼ天井まで伸びているから百メートル近くあるのか? この花は。
以前天にそびえる大木を斬ったが、太さではコイツが上だ。天井が無ければさらに大きくなるのだろうか。
接近してしまえばこっちの物。2人で全力で斬りまくり、体がみるみる細くなっていく。
本体の近くにいるせいか、ハエトリグサも攻撃しづらそうだ。
この調子でいけばあと少しで本体を刈り取れる、そう思った時にウツボカヅラが動いた。
壺の底を俺達の真上に移動させて、底から液体を吹き出したのだ。
流石に得体のしれない液体を浴びるのはご免なので離れると、地面から煙が上がっている。とんでもない劇薬のようだ。こんなものを浴びたら体が溶けてしまうな。
ん? これだとビジランティにもダメージが入ると思うが、俺達を引き離す事を優先させたのか?
いや、劇薬がかかった部分の再生力が上がっている。斬りまくった部分がみるみる再生されて元通りになった。そういえば燃えるハエトリグサを壺の中で治療したんだったな。
ビジランティには薬で俺達には毒かよ。
また壺から液体が吹き出しては危険なので少し距離を取った。
完全に元の状態に戻っている。これだけの人数で攻撃したのに全て無駄になってしまった。
「時間を掛ければ倒せるけど、時間をかけすぎるとみんなの体力がもたないな」
チラリと後ろを確認すると、アズベル達冒険者は疲れているがまだ動ける、騎士団は疲労困憊といった感じだ。得体のしれないモンスターとの戦いは冒険者が上だな。
冒険者も半日くらいなら体力がもつだろうが、リアはまだ連続3時間程度の戦闘しか経験していないから無理だ。リアが倒れると戦力が大幅に下がってしまう。
植物なら根を潰せば良いと考えもしたが、劇薬を地面に撒いても平気なので枯葉剤的なモノも通用しないだろう。地面を掘り起こすのは現実的ではないし。
「色々考えている様だが、結局のところ地面近くの部分をぶった切って燃やすのが一番早いのではないか?」
「そうだな、時間をかけても再生するし、一気にカタを付けるのがいいな」
怪我人は出るだろうが、これ以上死者を出さなければ良いと考えよう。
「みんな! 俺とブラスティーで根元を切断する、魔法使いはウツボカヅラの壺に攻撃を集中、前衛は魔法使いの護衛だ!」
「わかった!」
「了解!」
「まかせろ!」
それぞれが立ち位置を調整し、魔法が壺を燃やして地面に落ちた。
「よし、いくぞ!」
ブラスティーと同時にダッシュして根元に斬りつける。壺が再生を始めたが魔法が絶え間なく飛んできて再生を許さない。劇薬が降ってこなければずっとくっついていられる!
壺が再生できないのでハエトリグサが俺とブラスティーに集中攻撃を始めた。今度は自分の体を傷付けてでも引き離すつもりだろう。
「突・散型!」
ブラスティーが防御無視攻撃を使った。俺に使った一点集中とは違い、広範囲に威力が拡散するモノのようだ。根元が大きく吹き飛んだ。
くそう、攻撃スキルが羨ましい! 俺はひたすらアダマタイトの斧で斬りまくるしかない。
ハエトリグサを斬り本体を斬る、俺にはこれしかできないから。
鞭のような無数の茎が暴れ、二枚貝に爪が付いたような葉が俺を捕まえようと迫る。
少しハエトリグサに気を取られると本体が再生してしまうから気が抜けない。
そろそろ本体の太さが半分になる。もう少しで重さに耐えきれず倒れるはずだ!
あと一歩、というところでビジランティの動きが変わった。
本体を覆っていた茎のすべてを使って攻撃してきたのだ。
「これっ!動くのかよ!」
「つべこべ言わずに斬るのだ! 数が多すぎる!」
視界全てが荒れ狂う茎で覆われる。しかも地面すれすれを薙ぎ払うような動きもするため立っている事すらままならない。
これはマズイ! リアやアズベル達は大丈夫なのか!?
茎の鞭攻撃が10分以上は続いただろうか。やっと収まり周囲を確認すると、立っているのは俺とブラスティー、リアとアズベルの4人だけだった。
後は冒険者も騎士団も、あちこちに吹き飛ばされている。
「チッ、役立たず共が」
「お前、あんな攻撃に耐えろって方が無理だろう」
「だが俺達は立っている」
「そりゃそうさ、この4人はこの世界のトップクラスだ」
茎が本体に集まり何かを形作っている。あれは花か? 地面に巨大な花が咲き、その上に人が立っている。あれは……あれは祠の石像と同じ形じゃないか!
先程より大きさは随分と小さくなっているが、それでも50メートルはあるだろうか。
人型の植物、いやよく見るとすべてが茎で出来ている。手も足も胴体も顔も、全て茎で構成されている。地面から咲いている巨大な花と、両手両肩の花だけは本物のようだ。
状況が変わりすぎなので、リアとアズベルと合流した。
「おいおい、ありゃ一体何なんだ?」
「茎でできた顔が気持ち悪いよ……」
「第二形態に変わったって所かな」
「ゲームのボスキャラかコイツは」
「お前もボスキャラだったんだから第二形態になればよかったのに」
「なれるか!バカモノ!」
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