63.青いビジランティの花
アズベルとアニタに師匠を紹介する約束をし、エル・ド・ランへ向かうユグドラ達。
エル・ド・ランへ到着したのは深夜なのだが、軍の駐屯地には明かりが点いており、中からブラスティーが出てきたのだ。
中に入り説明を受けると、何と騎士団も冒険者も大量に発症したという。
冒険者は情報を伏せられていたため水から感染した、しかし騎士団は一体どうやって発症したのだろうか。
「しかし、俺達が知っている中で気になる事と言ったらビジランティくらいだからな」
「なんだ? それは」
「ビジランティっていう毒のある花だ。マイネの村近くにある廃虚に、花びらの色が違う物があったし、ロマノフの村ではビジランティを体に纏った御神体が祀られていた」
「花びらの色違いくらい幾らでもあるだろう?」
「それに関しては、リアに説明してもらおう」
リアを呼んでブラスティーに説明してもらう。
「ビジランティの花はピンク色の単色しか見つかっていません。少しは濃かったり薄かったりがありますが、完全に色の違う青なんて聞いたことがありません」
「青? ビジランティの青なんて私も聞いた事ないわよ」
冒険者の中に植物に詳しい者がいたようで驚いている。ん? あれはエル・ド・ランに集合した時、リアと一緒に冒険をしたいと言ってきたリアの知り合いじゃないか。
「私は植物の調査や採取の依頼をよく受けるから知っているけど、ビジランティはピンクしか見た事が無いわ。青なんて突然変異でもしないとあり得ないわ」
その冒険者も前に出てきてリアと特徴や確認された場所を話し合っている。
「間違いないわね、ビジランティだわ。あんな危険な花に色違いがあるなんて、間違えて摂取したら一大事だわ」
「あ、あ~、確かビジランティには鎮静効果があるはずだが……」
ブラスティーの腰巾着、俺を問答無用で襲ったやつが恐る恐る手を挙げ発言した。
「鎮静効果があるのは薬剤師が他の薬品と調合して薬として売られているモノね。単体では昏睡状態になって、最悪死んでしまうわ」
「簡単な調合だと聞いたのだが……」
「熟練した薬剤師なら、簡単ね。まさか、アナタ調合したの!?」
「す、少しだけだ! 落ち着かない新人に飲ませるために少しだけ作っただけだ!」
「それはどこで作ったんだ?」
「は、はい! エル・ド・ランから西に馬で2日ほど走った森の中です!」
敬礼をして答え、ブラスティーが地図を見て確認している。
「それは騎士団が発症した場所だな」
「そっそっそっその通りです!」
もう一度敬礼をした。冷や汗たらたらで目が泳いでいる。
「その中に青いビジランティはありませんでしたか?」
「そんな事私が知るはずないだろう!」
リアに対しては強気に出る腰巾着。リアも突然怒鳴られてびっくりしている。
なので投げ斧の背中が当たるように顔面に投げつけてやった。
「お前の無知のせいで騎士団が発症したんだろうが。情報を持っている人に対してその態度はなんだ」
鼻血を押さえてヨロヨロ立ち上がるが、今度は怒りの矛先が俺に向いた。
「き、きしゃま! 騎士に手を出しゅとはにゃにごときゃ!」
大剣を構えて襲い掛かってくるが、今度は前の様にはいかない。斧を使うからな。
振り下ろされた大剣を小さな手斧で破壊し、間髪入れず斧の背中で鎧も破壊した。鎧を破壊した衝撃で後方に吹き飛んだが死んではいないだろう。
以上をイスに座ったままやる事で、あいつのプライドはボロボロになるだろう。
「その小さな斧はアダマタイト製か?」
「いや、普通の鉄だ」
「そうか」
それ以上ブラスティーは何も言わず、騎士団の方に向き直った。
「誰か、青いビジランティを見たものは居ないか」
今度は騎士団に向けて問いかけた。すると一人の騎士が手を挙げた。
「恐らく、青い花がありました。ビジランティを摘んで来いと命令されたとき、隣の騎士が青いけど同じだろうと花を摘んでいました」
どうやらこれで確定したようだ。青いビジランティの花でも発症する。
ああ、やっぱり発症した騎士を抑えるために大量の騎士が行動不能になったんだな。
冒険者が発症したのは騎士団のせいだが、騎士団が発症したのは腰巾着の所為だ。
しかしそうなると新たな疑問が出てくる。青いビジランティとわき水の共通点は何だ?
わき水から感染するという事は、わき水を吸ったビジランティが青くなったのか? しかしそうなる辺り一帯のビジランティが青くならないとおかしいな。
何か別の物から感染しているのかも知れない。
「もう一度わき水周辺を調べて青いビジランティが咲いていないか調べ、青いジビランティが咲いている周辺を更に詳しく調べるしかないな」
「そうだな、今度は調べる対象や場所が分かっているんだ、今までよりは気が楽だ」
「うむ、では再編成を行おう。植物に詳しいものが1人は入っているのが望ましい」
アズベルと俺の案にブラスティーも賛同した。
調べる場所が限定されているので1つのパーティーの人数が多くなり、1パーティー20名前後となり、7パーティーへと再編成された。
俺達のパーティーに合流したのはブラスティーの部隊だ。どうやら騎士団には植物に詳しい人材がおらず、冒険者にしか詳しい者が居なかった為に混成部隊となった。それにしてもナゼ俺達のパーティーなのかと思ったが、他の冒険者ではブラスティーの指示に従わざるを得ず、自由な意見が出せないため回り回って俺達のパーティーに来たのだ。
戦力が集中しすぎじゃないかと思ったが、そういう理由なら仕方がない。俺も嫌だけど。
何より嫌なのは腰巾着が居る事だ。腰巾着の部隊は2人しか残っていないためブラスティーと合流、そしてこっちに合流となった。
鎧も武器も壊れてて大丈夫なのかと思ったが、流石は軍の駐屯地、予備が一杯あった。
俺達はマイネの村へと向かった。ロバートが発症した温泉と廃虚の青いビジランティを調べに向かう。あの温泉に腰巾着を連れて行って大丈夫かな……
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