61.祠と石像。時々夫婦喧嘩
アセリアとのイチャイチャ計画が崩れ去り、ヤケ酒を飲んで二日酔いになったユグドラ。
ボーっとしていて周囲を確認せずに戦闘に突入し、味方の魔法の直撃を食らうも気付かず戦闘を続けてしまい、魔法使い2人の自信を喪失させてしまう。
次の街に到着し、情報収集をするも手掛かりが無く、仕方なくまつられている石像を見に行くのだった。
どうやらこの村には新しい情報は無い様なので、祠へ向かう事にした。
大きな川の上流を目指しているが、川魚が多く水草も多いらしい。リアが色々な薬草が沢山あると驚いていた。
上流は少し岩場になっていて、岩が積み上げられた高い位置に祠が見えた。
高さ50センチほどの小さな祠は白い石で作られており木の戸が付いている。
祠の前には村長がお供えしたであろう魚が置いてあった。
「おお、これか」
アズベルが祠の前に立ち戸を開けると、中には石像が入っていた。人型の石像は花の上に立ち、体に数本のツルが巻き付いて両手と両肩に花が咲いている。
この花はどこかで見たような気がする。
「これ、ビジランティだ」
リアが石像を見て驚いている。
「それってマイネの村の廃虚で見つけた毒のある花?」
「うん。毒草を祀ってるの? ロマノフの村って」
「そうだな、ロマノフの村長がビジランティを知らないだけかもしれないし、世間には悪魔を崇拝している奴もいる位だからな」
アズベルの言う通りかもしれない。それに毒草でもなんでも村を守った際、偶然でもこの祠があったのは間違いないだろうから、中身は何でもいいんだろう。
「毒草もそうだけど、私は祠自体が気になるわね。石なら沢山あるのにわざわざ違う石で作られているのは何故かしら。土着信仰なら余計にその地域の物を使うと思うわ」
クリスティに言われて岩を見る。岩場の岩は色々な物が混ざって出来た茶色の岩だが、祠は白くて奇麗な石が使われている。どこから持ってきたんだろう。
「あの村長、ご神体の事くわしくないみたいだった」
確か川が氾濫した際にこの周辺だけ水が溢れなかったんだっけ? 祠うんぬんじゃなくて、単純に岩が防波堤になっているだけだと思う。ただ祠があったのは事実だろうし、村としては何かを祭り上げたかったのかもしれない。
「詳しい事は村長に聞いても無駄だろうな」
「だな。村に戻って知っている人が居ないか聞いてみよう」
村に戻り一応村長に聞いてみたが、やはり知らないそうだ。
他に知ってそうな人が居ないか聞いてみたが、村長が村で一番の古株で、村長より年上は他の街からの移住者らしい。
もうこの村で調べられることは無いだろう。俺達はエリクセンへ帰る事にした。
ゲートを通ってエリクセンに到着した。軍駐屯地へ向かい報告をしたら、報告終了後は速やかにエル・ド・ランへ向かうように言われた。どうやら進展があったらしい。
エル・ド・ランへ向かう前に一度冒険者ギルドへ顔を出した。そういえばこの仕事を受けてから一度もギルドに顔を出してないな俺。
「みんなお帰りー! 今からエル・ド・ランへ向かうところ?」
「ああ、エル・ド・ランへ行く前に顔を出しに来たんだ。紹介したい奴もいるからな」
アニタさんとアズベルが普通に会話している。夫婦になっても変わらないな~。
「紹介しよう、アニタも知ってるだろう? ギルドの受付から華麗に冒険者に転身してタイタンを一人で倒したアセリアの事を」
「確かユグドラさんとルリ子さんに弟子入りしたっていう人?」
「おうさ、彼女がアセリアだ」
俺の隣にいたリアの肩を叩いてアニタさんに紹介した。
「はじめまして、アセリアです」
「はじめましてアニタです。噂は聞いてますよアセリアさん」
「なんだか……恥ずかしいです」
アニタさんはリアの事を知っているけど会うのは初めてのはずだ。昔リアが俺から逃げた時、冒険者を追跡に出してくれたから。
「私も冒険者になろうかな~」
「はぁ!? 何言ってんだお前! ダメに決まってるだろそんなの!」
「なんで? 私だってアセリアさんと同じで一緒に居たいんだよ?」
「そりゃお前ユグドラならアセリアを守れるだろ! 俺じゃアニタを守りきる自信が無い!」
「別に一方的に守ってもらうつもりは無いわよ!」
「だってお前危ないんだぞ冒険者ってのは!」
「そんなのアズベルより知ってるよ!」
ケンカが始まってしまった。普通は喧嘩になるだろうな~、俺だってリアが冒険者になるって言った時は絶対に反対するつもりだったし。でも結果的に冒険者になってもらって良かったと思っている。既に俺の冒険には無くてはならない相棒だ。
アズベルの心配も分かるしアニタさんの言い分も分かる。
つまり、だ。
「アズベルがアニタさんを守れるくらい強ければ問題ないのか?」
二人が俺を見た。
「だからなユグドラ、そんな簡単に強くなれないから困ってるんだぞ?」
「簡単じゃないけど、良い師匠を紹介しようか?」
「は?」
「え?」
リア以外が俺を見た。リアは何も言わずに黙っている。
「俺は斧しか使えないけど、剣の扱いが上手い奴を知ってるから、今度紹介するよ」
「そ、それは願っても無いが、え? いるのかそんな人が」
「ユグドラさんユグドラさん! 弓の師匠はいませんか!?」
アニタさんがカウンターから身を乗り出して聞いてきた。
「いますよ。弓を使いたいのなら紹介します」
「お願いします!!」
読んでいただきありがとうございます!
ブックマークや評価がゆっくりと増えているので感謝にたえません。
次回は水曜日更新予定です。




