58.武器の取扱説明書
アズベルパーティーの武器と防具を製作するしずかだが、それぞれが使っていた武具には様々な難点があった。
今の武具を改善し、新しい武具に反映する。
なんとか納得のいく武具が完成し、やっと本題にとりかかる。
アセリアが冒険者になったお祝いに、冒険用の衣装を製作したのだ。
本人には言っていないが、対魔法・対物理などの特殊効果が付いた一品ものだ。
ユグドラのまま朝食をとりたい気分だったが、アズベル達に武具の説明をしないといけないのでしずかに戻る事にした。
ユグドラ― ― ― →しずか
「それでは食事にしましょうか」
「は~い」
私の左腕に抱き付いて頬ずりしています。これだけ喜んでくれれば徹夜した甲斐があったというものですね。
宿の1階にある食堂での食事中にアズベルさん達が入ってきました。
「おはようしずかさん」
「おはようございますアズベルさん」
「お食事中だったのね。ごめんなさい、外で待ってるわ」
「いえ、もう終わりましたから私も出ます」
チェックアウトして大きな荷物を担ぎ外に出ました。荷物の受け渡しは冒険者ギルドの訓練場にしましょう。あそこならすぐに試せますから。
冒険者ギルドの訓練場に到着して早速装備を袋からだします。
「まずはアズベルさんの剣と鎧ですね。剣は少しだけ幅が広くなりましたが重量は大差ないはずです。革鎧は微調整をするので試着してください」
順番に装備を渡して微調整をしていきます。採寸はしてあるので鎧のサイズは丁度良かったです。武器を持った感じも今まで通りのようですから問題ありません。
次は試し切り用に置いてあるカカシを何度も斬りつけて感触を確かめて貰いましたが、重さや感覚が同じなのによく斬れると喜んでくれました。
他の皆さんも今までと同じ感覚でパワーアップが出来たと喜んでくれました。
さて問題はロバートさんです。
「ロバートさん、あなたの大型の両手剣で私に打ち込んでみてください」
私はお気に入りの大型の片手剣を構えました。
「え、大丈夫なのか?」
「腕力はあるので、全力で打ち込んでください」
ロバートさんは自分の背丈ほどもある両手剣を振りかぶって打ち込んできました。
やはり思った通りです。ブラスティーの戦い方を知っている事もあって稚拙に見えます。
そもそも大型の両手剣を扱う腕力が無いので打ち込んだ後は若干バランスが崩れ、次の攻撃に移るのにも時間が掛かっています。大振りをしたら体が持っていかれそうです。
「では次はこの剣を使ってみてください」
私の持っている片手剣を渡し、両手剣を受け取り構えます。
大型の片手剣・ヴァイキングソードはこの両手剣ほど大きくありませんが、普通の剣より随分と大きく両手持ちも出来ます。
打ち込みが始まりました。
するとバランスが崩れる事が無くなり、攻撃もスムーズに行えるようになりました。もちろん体が持っていかれる事もありません。
「あ、あれ? なんだか使いやすいぞ?」
「あなたにはその大きさが合っているようですね。両手剣の使われ方を見たら腕力不足の様でしたから。暫くはそれを使ってください、使っている内に過不足が出てくると思いますから、その時は新しい物を打ちます」
「おおー、いいのか?」
「ええ。但し、そのヴァイキングソードの扱いには注意してください。扱い方がなってないと判断したら作りませんので」
「わ、わかった」
本当はまだ冒険者として未熟なロバートには早いと思ったのですが、今回は凶暴になる症状からの復帰が早かったので将来に期待する意味もあります。
剣が欲しいと思うのなら慎重になるでしょう。
「そうそう、忘れるところでした。ルーンストーンを渡しておきます」
「よかった。忘れてると思った」
エバンスがホッと息を吐きました。実は今思い出しました。
「魔法はどこまで使えるようになりましたか?」
「やっとブレードスピリットを使えるようになった」
第5を使えるようになりましたか。リアほどではありませんが成長が早いですね。
この分なら近いうちに第6や第7も使えるようになるでしょう。
「クリスティさんはどうですか?」
「私はそのー……第5が成功しなくて」
「では第4はどの程度?」
「第4は全部成功しました」
それなら近いうちに第5が使えるようになるでしょう、単純に成功率の問題ですね。
「それではそれぞれにルーンストーンを5つお渡しします。これをルーンブックに入れるとかさばらず、行きたい場所を見つけやすくなります」
ルーンストーン5つとルーンブック1冊を2人に渡しました。
マークされたルーンストーンをルーンブックにかざすと溶けるように吸い込まれ、1ページに1か所座標が表示されます。座標と一緒に場所を書いておけば間違える事もありません。
「リコールやゲートは、世間の魔法レベルだと公になった場合厄介な事になりますから、注意して使ってください」
リコールはまだしもゲートを使えば大量の物資や人員を運べますから。
「他に何か聞きたい事はありませんか?」
私の用事は一通り終わりました。あとは質問を受け付けるだけです。
「はい!」
ケンタウリさんが手を上げました。短剣の事でしょうか。
「はいケンタウリさん」
「アセリアの衣装が変わっているのはなんで!?」
そっちに行きましたか。とはいえ気づいてくれてたようで嬉しいですね。
「これはリアが冒険者になったお祝いに仕立てました。少々遅くなりましたが」
「スカートが短すぎて男どもの視線が怪しいよ?」
「大丈夫です。中にズボンをはいていますから」
「え、そうなの?」
そういってリアの前にしゃがんでスカートを少しめくりました。
う~ん、女性なのでまあいいでしょう。
「本当だー、中に半ズボン履いてるんだー」
必死にスカートを抑えるリアと面白そうにめくるケンタウリさん。ユグドラが見たら鼻血を流して卒倒する光景ですね。
「とても可愛いわアセリア。私も衣装替えしようかしら」
「その服、私にも作って」
「ダメです」
即答しました。
「なぜゆえ」
「特別仕様の服なので大量生産はできません」
「むう、残念」
「ルーンストーンが足りなくなったら、またいただけますか?」
「はい、ユグドラかリアに言ってくれれば作ってお渡しします」
質問も無くなりましたし、こんな所でしょうか。そろそろユグドラに交代したいですね。
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