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54.以心伝心。でも病気はうつさないでね?

洞窟に入り調査を進めると、沢山のモンスターが温泉に入っていた。


どうやらここは湯治場らしい。


ここではモンスターは何もしなければ何もしない、沢山の種族が集まる中立地帯のようだ。


ユグドラ達は調査を終えて村へ帰るのだった。

 村に到着し、狩り組織のリーダーに会いに行った。湯治場の事を聞くためだ。 

 リーダーも湯治場の事を知っていて、狩人の間では不可侵(ふかしん)の場所になっていたようだ。

 熟練者に見えたから、下手な事は言わずに任せようと思って言わなかったらしい。


「前に来た冒険者はあそこで戦おうとして返り討ちにあったようです。ただの調査依頼だったのですが、若気の至りですかねぇ」


 なぜだろう、熟練者と言われるのは良いが、若くないと言われているようでモヤモヤする!


「あの湯治場はいつごろからあるのですか?」


「さあねぁ、私の祖父が昔からあると言っていましたから、いつからあるのやら」


 村自体も昔からあるようだし、長い事噴火してない火山なのかな。

 この日の調査は終了だ。明日調べる廃虚の場所や規模などを話し合い、宿に入った。




 その日の晩に異変が起こった。宿に併設されている飯屋で食事中にロバートが支離滅裂な事を言い始めた。最初は指を火傷した事をからかわれて怒っているのかと思ったら、次第にアズベルやパーティーメンバーの悪口を言い始めたのだ。


「うるせぇ! 大体生意気なんだよお前ら! 年下の癖に偉そうなこと言うな!」


 そう叫んで木のテーブルを叩き割った。もちろん普段のロバートにそんな力は無いし、一番年下なのはロバートだ。


 これで確定した、パーティーから発症者が出てしまったのだ。


 男のメンバーでロバートを飯屋の外に出して羽交い絞めにしようとしたが、力が強すぎてアズベルやアルファ、ケンタウリの三人でも取り抑えられなかった。


「アズベル、すまないが動きを止めるぞ」


「ああ……たのむ」


 これ以上飯屋に迷惑を掛けられないので腹を殴り、動けないようにした。


「みんなすまない、もう大丈夫だから食事を続けてくれ」


 アズベルが店内で謝罪をし、俺はロバートを担いで部屋へと連れて行った。

 ベッドで眠るロバートを囲むようにしてイスに座り話し合いが始まった。


「やっぱりアレかな」


「アレだろうな」


「アレだな」


「アレだ」


「アレだわ」


「アレよねぇ」


「アレでしょうね」


「どれ、ですか?」


 リアだけが分かっていない。普通に考えればたったあれだけの事で、と思うだろう。


「温泉が湧き出してる所のお湯を直接舐めたのはロバートだけだからね」


「え? たったあれだけでなるの?」


「前に発症した冒険者が調査したのは温泉だからね、一番可能性があると思ったんだ。だから全員が違う行動を取ったんだよ」


「?」


「俺とリアは噴出し口から離れた温泉を触り、ロバートは偶然だけど舐めた、アズベルは深呼吸をして、クリスティは噴き出し口の温泉を触って、エバンスはお湯を回収してきた、ケンタウリは獣の毛づくろいをして、アルファとフレディはお湯に入った。遊んでいるようでしっかり役目を果たしていたんだ」


「言われてみれば……でもそれだとユーさんが発症したらどうするつもりだったの?」


「症状が出始めたら全員が全力で逃げるだろ? そうなったら俺は山に走って一晩暴れて帰ってくるつもりだった。でも一番危険の少ない行動だから大丈夫だと思ってた」


「じゃあ私だけ気づいてなかったの?」


「ロバートも気付いてなかったね」


「じゃあ様子がおかしいのにみんな凄く冷静だったのは様子を見てたの?」


 全員がうなずいた。


「でもいつ? そんな話ししてないよね?」


「よく言えば経験、悪く言えば何となくだね」


「まだアセリアには分からないと思うが、特に打ち合わせをしなくても場の空気でそれぞれが行動した、って所だ」


 こればっかりは経験が必要だ。それに俺とアズベル達は何度か一緒に仕事をしているから考えていることが何となくわかるようになった。


「じゅ、熟練冒険者って凄いですね」


「まあ俺達のパーティーも程々長いしな。ユグドラとも、どことなく気が合うんだ」


 俺もそれは感じている。考えた事、思った事を言わなくてもみんなが動いている。


「どうする? 急いでエリクセンに戻って報告するか?」


「いや、こんな荷物を連れて夜道を行くのは危険だ。今晩はロバートをロープで縛って、明日の朝エリクセンへ向かおう。多分ロバートはリタイアになるが、またこの村に戻って廃虚の調査をしないといけない」


 アズベルの案にみんながうなずく。ロバートの体をロープで縛りベッドから動けないようにしてから女性陣は部屋を出て行った。女4人と男5人で部屋を分けて取ってある。


「しっかし、ロバートも冒険者になって六年だっけ? いい加減落ち着いてくれてもいいと思うんだがなぁ」


「六年っても十六歳だからな、冒険者としての経験はともかく、人としての経験が少なすぎるんだって」


 アルファとフレディが少しボヤいている。話しを聞いてみると、最初はアズベル・アルファ・フレディ・ケンタウリの四人で冒険者を始めた様だ。その後、回復役としてクリスティが入り、魔法使いのエバンスが入った。


 ある日、気まぐれで初心者の依頼を受けた時に偶然ロバートと一緒になり、懐かれてしまい、いつの間にか一緒に依頼を受けるようになったとか。


「じゃあ正式なメンバーじゃないのか?」


「いや、すでに正式なメンバーだろう。俺達はもちろん、周りもそう思っているはずだ」


 そうでなければ今回の依頼に呼ばれないだろう。それに戦っている所を見た限りでは腕は悪くない。あとは人生経験だけか。



 

 翌朝にはロバートの状態も良くなり、少しぼんやりしているが受け答えはできている。

 朝食を早々に終わらせてエリクセンへと馬で向かう道中、クリスティとエバンスが満面の笑みで男衆に話しかけてきた。


「次に戦闘になったら楽しみにしててね」


「私一人で敵を殲滅する」


 女部屋で何があったんだろう。

読んでいただきありがとうございます!


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次回の更新は日曜日の予定です。

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