29.ダンジョン最終フロア!あ、やっぱりお姉ちゃん交代して!
ついに暗殺キャラのメイアが登場します。
暗殺なのにダンジョンて……まぁ頑張れ!
「おはようございます」
「おはようございまーす」
次の朝、リアとギルドに入るとオネエがいた。本当にいつ休んでるんだろうこの人。
「あらおはよう。約束は守ってくれたみたいね」
ギルドの部屋でイチャつくなという奴の事かな?いやいやダンジョン探索を続けるって方かもしれないな。
「約束は守りますよ。俺もリアも」
うふふ、とオネエは笑ってリアに仕事に入るように言って指示をしだした。
そんな働くリアを眺めてお茶を飲んでいると、背後から凄く不穏な雰囲気がしているのに気が付いた。後ろをチラ見すると昨日特訓をしてくれた冒険者達だった。
アセリアちゃんアセリアちゃんと呟いて泣いてたり、俺を睨んでたり、魂が抜けてたり、まだあきらめずにいる奴まで居る。あきらめてない奴はまた特訓してもらおう。
そういえば冒険者ギルドの受付嬢は美人が多い。
多分、いやほぼ確信してるけど、美人もしくは可愛い受付嬢にする事で冒険者を増やしたり生還率を上げるのに役立っている。なにせ各ギルドの受付嬢にはファンクラブがあって、アルシエルさんやアニタさんにも当然ファンクラブがある。アニタさんはアズベルと婚約したが未だに解散していないらしい。
一方王都オーディンの冒険者ギルドはというと、オネエが1人とおばさんが2人……どういうこったい。
きっとこいつらもリアのファンクラブ作ろうとしたんだろうな~、なんか少しだけ同情したくなってきた。
とはいえリアにちょっかいを出す奴は許さないけどね。
そろそろ出発するとしよう。リアの姿を目に焼き付けた事だし、しばらくは我慢しよう。
「それじゃあリア、行ってくるよ」
「行ってらっしゃい。無事の帰還をお待ちしています」
ギルドの事務的な受付をした後でキスをして出発した。
リコールでダンジョンまで瞬間移動したら後は潜るだけだ。
ディータにチェンジしよう。
ユグドラ― ― ― →ディータ
ダンジョン♪ダンジョン♪ダンジョン♪楽しいダンジョン愉快なダンジョン♪
でも楽しいダンジョンはお宝のあるダンジョンだけだよね。
このダンジョンにはお宝の気配が全くないです!そんなダンジョンは愉快なダンジョンだ!
結局ダンジョン探索は面白い事になってしまいますねぇ。楽しいけど。
今日からは新しいフロアを探索するけど、なんかオカシイ。ここはダンジョンというより何かの研究をしてるらしいのに、警戒が全くされていない。一度入った施設は大体次は警備が厳しくなってるのに、ここは全く変わってない。六階までスルーして七階まで降りてこれた。
そりゃモチロン潜伏してるから見つかり難いだろうけど、前と全く同じ事が通用した。
「これはもしや……社会人にあるまじきホウレンソウが出来ていないのかな?」
あんまり探索が順調に進みすぎると面白くなんだけどな。やっぱり探索は波乱万丈に笑いあり涙ありじゃないとね!
とはいえ七階は未知の領域。ワクワクが止まらないね!
どうやらこのダンジョンは下に行くほど広くなってる。六階は一階の倍以上の大きさがあったから、七階は更に大きくなってるんだろうな~、どんな造りなのかな~。
っと、目の前に現れましたのは小さめのお部屋、その中には光るガラスケースがたくさん並んでいる。ガラスケースは三十センチ四方程で、光っているのは中に何かが入っているからみたいだった。
なんだろうアレ。部屋の中には誰も居ないみたいだし、ちょっと見てこよう。
ガラスの中には人魂みたいな火が入っていてユラユラ揺れている。んー、ここはファンタジーっぽくウィルオーウィスプって言っておこうね。
ウィルオーウィスプが入っているガラスは二十個近くあって、ガラスの底には魔法陣が書かれていた。書かれている文字から判断すると、多分ウィルオーウィスプを召喚する魔法陣だと思う。正直知らない文字の組み合わせだから勘だけどね。
それにしてもこの部屋暑いなぁ。二十個近くも火があるんだから熱いのは当たり前か~。
何に使うんだろう、コレ。明かり?松明でいいじゃん。
部屋を出てリッチッチや他のモンスターをスルーしてマッピッピを完成させていく。
やっぱり六階よりも七階は少し大きい。七階は完成したから八階に行こう。
八階は特に変わったことは無かった。相変わらずリッチッチとアンデッドが働いてて実験してた。でもちょっと気になったのが、一階から隅にあった不明領域が段々とずれて行って、ずっと地図の隅にある。下に行くほど広くなってるのにずっと隅っこに有るって事は斜めになってるのかな?九階に降りよっと。
暑い……何この暑さ。
一階降りただけでなんでこんなに違うの?汗が止まらないんですけど!これは確信した、このフロアのマッピッピは難航するゼ!と思ったら一瞬で終わったですよ。
なにここ、八階から九階に降りる階段はやたら長いのに、降りたら降りたで何もないってマッピッピ殺しもいいとこじゃん?一本道を進んだら降りる階段が有るだけって……
「ま、いいか~、おーりよっと」
そのまま長い階段を降りて十階に入ると、次も何もなかった。
何も無かったっていうより、ただの広間。だだっぴろくて天井の高い空間が広がっていた。
そして暑い!九階よりも暑い!
「パッとみ、十階全体が広間になってるような感じ?」
それでも何かないかと調べていると、床に何かが書いてあった。
「これは~?魔法陣?なんの魔法陣だろ」
しかもかなり大きくて幾つもある。魔法陣を読んでいくとどこかで見たような召喚魔法っぽいけど、なんだろう、どこで見たんだったかな……あ!リッチッチお爺ちゃんが読んでた本に書かれてた魔法陣だ!
そういえば本に書かれてたのも召喚魔法だったから、きっとこれは拡大版だね。
でもなんて書いてあるんだろう。えーっと、炎?大いなる……生命……召喚……炎……次のは分かんない。ここまでだったら炎の精霊だけど、次の文字は分からないなぁ。
死や危険に似た文字だけど……あ~んもう!ディータ・ブレインはショート寸前よ!
でもなんだか危なげだから消しちゃえ!すり足すり足!
ふ~、一つはこれで消せたから、次いってみよ~……あれ?消えてない、なんで!
持っていたツルハシで地面ごとえぐってみた。ちなみち宝探しにツルハシは必需品だかんね?
地面ごとえぐったのに地面ごと魔法陣が復活した。これってまさか!
「この空間?地面?が記憶されてるのかな?」
空間だったら私が中に入る事は出来ないから、地面が記憶されてるんだろうね~。じゃあ記憶するためのマジックアイテムがどこかにあるはず。それを破壊しないとだね。
部屋の中をひたすら探しまくったのになんにもない。とにかく広い空間に魔法陣が幾つか書かれているだけだった。
「そんなはずは無いんだけどな、記憶を呼び戻すためには空間が直接繋がって無きゃ出来ないはずだし、壁かどこかから顔を出してないといけないんだけどな」
壁も天井も探すが見当たらない。どうしよう、この魔法陣は危険な香りがするし放っておくことは出来ないしな~。どこかに、天井にもそれっぽい物は……あれ?なんでここら辺だけ少し明るいんだろう。
松明の明かりだけでは説明できない、すこ~しだけ地面が明るくなってる場所がある。
「地面とか壁には変わりはないし、上?」
天井を見上げると直径三メートル位の穴が開いていた。高い高い百メートルや二百メートルでは済まない程の長い穴が開いていて微かに空が見える。
「こんな隅っこの天井に穴が有ったなんて、天井だと思ってたのは穴の壁だったのか~」
壁に背を付けて天井を見上げると、はるか上空に赤い点が見える。双眼鏡を取り出して見てみると、どうやら記憶されているマジックアイテムらしかった。
「あれは……どうやって壊そう」
魔法を撃ってもいいけど、外して壁に当たったらヘタするとダンジョンが崩落するかもしれない。そんなのはイヤーーー!
「狙撃しかないかなぁ」
そうつぶやいた時、降りてきた階段とは反対側の壁が破壊された。
「え? なに? なに?」
壁を破壊して入ってきたのはトロールの集団。
「また!? またなの!? ちょっと勘弁して……ウソ」
トロールの集団だけじゃなく、オーガやリッチ、その他もろもろのアンデッド集団やヘルハウンド、ミノタウロスまでいる。
「お……お初にお目にかかりますが、これにてさようなら!」
戦えるわけないじゃん!例によって階段は封鎖されてるし!!!
もーいや!お姉ちゃんタッチ!ポチっとな。
ディータ― ― ― →メイア
お姉ちゃんと言うなといったはずだがな。
それにしても、うん、何匹居るのか分からないくらいいるな。私は暗殺が生業であって戦闘は得意では無いんだぞ。だが今回は私がいいだろう。
私はメイア。緑のバンダナを頭に巻き、人からは目つきが怖いと言われる。体に密着した薄手の革鎧を装備した暗殺キャラだ。接近戦は多少はたしなむがメイン武器は弓だ。
例えば今回の様に大量の敵がいる場合はコイツがいい。
身長の倍近くある巨大な弓をバッグから取り出して太い矢を構える。
この矢は特別製で直径約2センチ、先端は斜めに切られていて中は空洞になっている。
つまりこの巨大な弓で放つと……風を切る音と共に矢が敵へと飛んでいく。
矢は数十匹のモンスターの体を貫通して向こうの壁に当たる音がした。
矢が貫通したモンスターはその穴から大量の血を流して倒れていく。肉を丸くくり抜く矢によって急所に当たれば即死、そうでなくても動けないほどの重傷となる。
そんな矢を次から次へと撃ちまくる。二十本あるからな、百体以上は倒しておきたい。
敵の接近を許すことなく二十本を撃ち切った。百体以上は倒した、だがそれ以上に敵の数が多いな。次は普通の矢で撃とうか。
普通の矢であってもモンスター数匹を貫通する威力がある。それもこれも巨大な弓のお陰だが、これをまともに引けるだけの力が必要だ。力自慢の冒険者でも無理だろう。片腕で百キログラムの重りを軽々と持ち上げられないとな。
しかし流石に連射速度は遅い。敵が近づいてきたからコレではもうダメだ。一番奥には敵がいないようだな、よし。
次はロープの付いた重い矢を用意してハーネスにロープを取り付ける。広場の反対側の天井と壁の境目を狙って放ち、同時に私は矢を撃った方向にジャンプした。
重い矢に繋がったロープがピンと張り、矢に引っ張られて飛んでいく。
飛びながら小型の弓を構えて下にいるモンスターに連続して矢を放つ。
今は命中率を考えなくても撃てば当たるから、ひたすら連射する。手に持った20本の矢を数秒で撃ち尽くすと重い矢が壁に突き刺さった。
壁に刺さった矢に片足をかけて逆さまになって更に矢を放つ。リッチの魔法が飛んで来たから矢を抜いて着地する。魔法だけでなく石、岩も飛んできた。それらをかわしながら手を休めずに矢を放つ。
流石に地面からだと効率が悪いな。手を一瞬止めて壁に駆け上がると敵が良く見える。壁を蹴って宙を舞い、上から矢を連射する。これはまあまあ効率がいいな。
それにしても敵の数が減らない。どこから沸いて来たのやら。私の手が目にもとまらぬ速さで矢を放ってもキリが無いというのは困ったものだな、ふふふ。
矢の残りはまだまだある。出てくる限り相手をしてやるぞモンスター共。
その後は数回重い矢で空を飛び、わざと弓で敵の中へ突っ込み、敵の数が減ってきたら刃が波打つ剣・クリスに毒を塗って突き刺しまくった。
気が付けば残りは数体。リッチとオーガだ。
……いや、もう一匹少し体の大きいのがいるな、リッチロードだろうか。
普通のリッチロードならば問題ない。少々魔法が強くて少々耐久力が高くて少々機敏に動いて少々魔力が尽きないというだけだ。
みろ、そんな事を考えているうちにリッチロード以外を倒せた。
リッチロード相手ならば近くても離れていても関係ない、アイツはどっちも強いからな。だから私が一番戦いやすい距離で戦おう。
小型の弓をバッグに入れて私の身長より少し小さな弓を取り出した。威力と連射速度に優れた、と言えば聞こえがいいが汎用性の高いタイプだ。
リッチロードに矢を連射しても良いが、久しぶりにショットガンをしてみよう。
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