2.初依頼!護衛って初心者でもいいの?
1話と2話が長かったので三分割しました。
これにより話数も変更です。
扉を開けて入ると、中は沢山の冒険者であふれかえっていた。随分と人が多いな、全員冒険者なのか?
受付を探してうろついていると、いかついオッサンが声をかけてきた。
「おうお前、見ない顔だがいい鎧を持ってるな。俺と勝負しないか?俺が勝ったらその鎧をくれ」
いきなり何言ってるんだこのオッサンは。そんなもの受けるはずないだろ。
「受け付けがどこか教えてくれませんか、ギルドに登録したいんです」
「ああん? お前登録してねーのかよ。チッ、あそこだよ」
オッサンが面倒くさそうに親指で刺した先にはカウンターがあって、女の人が書類仕事をしていた。
「ありがとう」
「あ?」
なぜかオッサンは口をあんぐりと開けていたが、まあいい。今は登録が先だ。
「こんにちは、冒険者の登録をしたいんですが、ここでいいですか?」
「え? あはい、こちらで大丈夫ですが……?」
肩あたりまで伸びた銀色の髪と、細長い眼鏡がとても知的な女性だ。白を基調とした服で青い装飾が数か所についている。
しかしなにやら歯切れが悪い。
「では登録をお願いします」
「え、ああはいすみません! ではこの紙に名前とクラスを書いてください」
差し出された紙に名前を……どうしよう、このゲームの時のユウにするか、最近使っているユグドラにするか……ユグドラにしよう。
「クラスってなんですか?」
「そこは大雑把で構いません、戦士とか魔法使いとか」
そういう事か、じゃあ戦士っと。
紙を渡すと、今度は水晶に手をかざす様に言われた。どうやら魔力やら何やらの生体情報を登録するらしい。すげぇ、日本より進んでる。
「はい、ではこちらがユグドラさんの冒険者カードになります。ギルドで依頼を受ける時や街に入る時に必要ですから、無くさない様にお願いします」
「はーい」
免許証ほどの大きさのカードを渡された。これに生体情報がはいってるのか~。
「ちなみに使用する武器はなんですか?」
「私はこれを使っています」
背中に担いでいた斧、60センチある柄の先が尖っていて、丸い両刃の巨大な斧を見せた。
「あの……木こりさんでしたら生産系ギルドの登録になるんですが」
「え? いえいえ冒険者になりたいんですけど」
そこでギルド内に居る冒険者全員が大笑いした。
「おいおいボウズ、そんなデケー斧を振り回して何するつもりだ? 敵は木と違って動いてるんだぜ~? ぶあっはっはっは」
どうやら斧は武器と思われていないようだ。確かに俺が持っている伐採スキルは、木を効率よく切るためのスキルだから間違いじゃないけど。
くそう、この世界はとことん俺のスタイルを否定してくる!
「ユグドラさん、ギルドの向かいに武器屋がありますから、そこで剣を購入してください。でないと依頼を回せなくなってしまいます」
「……ひゃい」
はいという気力すらわかず、笑い声を背にして武器屋に入った。
「おうあんちゃん、ギルドで随分でけー声がしたが何があったんだ?」
武器屋にまで響き渡っていたらしい笑い声の話題には何も答えず、剣を漁り始めた。
うーん良いものが無いな。ここはあれか、RPGの最初の街だから大した物がないのかな。
切れ味はどれも変わらない様に見えたから、ぶっ叩きやすい大きめの剣にしよう。
「これいくらですか?」
「んん? そいつは6シルバーだな」
しるばー?えーっとたしかアルオン内での通貨はGPだったけど、GPはゴールドポイントだったかな、シルバーって銀か?
分からないからすっとぼけて6GP渡した。
「あんちゃん、このコインは見た事がねーな。金には違いない様だが……ちょっと待ってろ、重さを量る」
カウンターの真横に置いてある天秤で量り始めた。
「うーん少し重いか? まあ大体1ゴールドだな。5ゴールドは返すよ。あとお釣りの4シルバーだ。ありがとよ」
「どーも」
よかった、手持ちの金は使えるようだ。正直数億GPあるから無駄にならなくてホッとしている。
さて、斧は背中のマントの内側に担いで剣を左腰に下げた。冒険者ギルドで依頼を受けようと中に入ると、相変わらず全員がニヤニヤしていたのは逆に驚いた。
「初心者向けの仕事はありますか?」
受付のお姉さんにたずねると、今からなら馬車の護衛の任務があると教えてくれた。
護衛はもっと慣れた冒険者向けじゃないのかと思ったが、どうやら午前中に大きな商会の護衛があったらしく、そこでほとんどモンスターは倒してしまって、昼からの護衛は大体暇なんだそうだ。
午前中は熟練者向け、昼からは初心者向けと別れているらしい。
ならばと早速依頼を受け、隣町への護衛をする事にした。
集合場所に行くと、荷馬車が二台と冒険者が四人いた。本当は護衛を六人依頼していたらしいが、毎回暇なので五人でもいいそうだ。
あれ? これフラグか??
とはいうものの本当に暇だった。街道は整備されているし、商人も冒険者もいい人で話をしていて楽しい。
馬車で半日の距離らしいけど、これは確かに初心者に丁度いいかもしれない。
前方には女性冒険者と男性冒険者が馬車の後ろに腰をかけ、俺と二人の若い冒険者は後ろの馬車に腰かけている。なかなかに尻が痛い。
初心者だからと色々教えてもらっている最中に、とても気になる情報を入手した。
どうやら斧を使って戦う人など聞いたこともなく、赤青黄の衣装を着たピエロがいるらしい。マジかよ。
唯一の苦痛である尻の痛さを我慢しつつ、陽気に当てられウトウトしていると馬車が止まった。
あれ? 目的地の街までやっと中間地点かどうかという場所のはずだけど、何かトラブルがあったのかな?
「へっへっへ、馬車と有り金を置いていきな。そうすれば命は助けてやるよ」
という定型文が耳に入ってきた。