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21.本物ってなんだっけ?

 これは困ったな。知りたいと思っていた情報が転がり込んできた。

 でも依頼を受けたくない気持ちも大きい。


「護衛、というと街の外へでるんですか?」


「いいえ、オンディーナの中での護衛よ。どうやら命を狙われているらしいのよ」


「どうしてまた鍛冶職人が?」


「どうやら偽物のしずかに狙われているらしいの」


 いやいや、偽物が何言ってんだか。


「そもそもどうして偽物が現れたんですか?」


「ここだけの話しだけどね……王宮がしずかをお抱え鍛冶師にしようとしてるらしいのよ。だから自分がしずかだと言って王宮のお抱えになりたいのよ」


「そんな事になっていたんですね」


 そうか、ほとんどの人はしずかの顔なんて分からないもんな。

 何回も会っているのは鍛冶屋の親方達と、よく来た冒険者ぐらいか?

 とはいえ本物が偽物を護衛するってなんだかな……逆に考えれば面白いか?


「分かりました、お受けします。ただ素材集めを先にやりたいので、その後でもいいですか?」


「ええ構わないわ」


「では明日は朝から素材集めに出ますので、明後日からでお願いします」


「先方にも伝えておくわね」




「ねえ、なんだか話し込んでたけど何かあったの?」


「リアのお陰で面白いことになってきたかな」


「私なにかした?」


「しずかの護衛の仕事を受けたんだ」


「え?本物の?」


「ううん偽物」


「???」


「詳しい事は明日の素材集めの時に言うよ。今日は明日の準備をしよう」


「うん、わかった」


 街を回って必要なものを買い足した。そして……そしてお弁当の材料もだ!




 街を出発して素材の採取場所へ馬で向かう。行は二頭帰りは一頭、うむ計画通り。

 薬草が生えていると教えてもらった場所に来ると、沢山の薬草が生えていた。

 どうやら最近の傾向通りに、素材集めは危険な任務になってしまったようだ。


 とはいえ、リアを危険な目に合わせるわけにはいかないから超警戒している。

 超ウルトラグレートスーパーノヴァ警戒でもいいくらいに。


「ユーさん、この岩の上に生えてる草とれる?」


 岩の上に生えている草を取ろうと背伸びしているが、全く届いていない。

 でも俺が手を伸ばしても届きそうもない高さだ。

 つまり……


「肩車するよ」


「え?」


 リアの前でしゃがんで待つ。

 少しして遠慮がちに「おじゃまします」と肩に足をかけてきた。ああっ太もも!

 採取の時は長ズボンだけど太ももっ!

 しっかり足をもって立ち上がる。


「おお、おおーーあはははは、たかーい!」


 なんだかテンションが上がっている。


「たかいたかーい。届きそう?」


「ん、ん~~もうちょっとなんだけど……」


 よ、よしぃ、さいしゅーしゅだんだ!


「リア、暴れないでね」


「え?ひゃぁあ!」


 リアのお尻を両手で掴んで持ち上げた。


「も、もぅ!ユーさんのエッチ!」


「エッチですとも!。ああ柔らかくてずっと触っていたい」


「だ、ダメ!そういうのは夜だけ!」


「ちぇ~」


「ほ、ほらもう取ったから降ろして下さい」


「はーい」


 その後も順調にいちゃつき……素材を集め、日が高くなったのでお弁当の時間となりました。

 弁当を食べながら偽物しずかの護衛の話をする。


「しずかの護衛の話だけどね、建前上は自分は本物で、偽物に命を狙われているって事みたい」


「そうなんだ、じゃあ私は一緒にいない方がいいのかな」


「それは大丈夫だと思うよ。まず狙われていないと思うから」


「じゃあなんで冒険者ギルドに護衛を依頼したの?」


「自分は本物で、偽物に狙われているって実績をギルドで作って、本物っぽさを増するため、かな」


「護衛の依頼って安いの?」


「安いね。一日一ゴールド五シルバーだから」


「一G五S!?命がけの仕事なのに!?」


 大体一万五千円だな、冒険者の命の値段は。


「冒険者の命なんてそんなもんだよ。死にたくなければ強くなるしかない」


「ユーさん、私達で素材集め専用の冒険者にならない?」


「今は素材集めってかなり危険な依頼だよ?」


「……え?」


「モンスターが姿を現した瞬間に倒してるだけで」


 丁度大型のイノシシが姿を現したから、ヒモの付いた投げ斧を投げて顔面に命中させた。

 ヒモを引っ張り回収完了。


「それは……その……お疲れ様です!」


「それが俺の役目ですから」


 とりあえずリアには偽物しずかと仲良くなってもらい、しずかの情報を色々と聞いてもらおう。

 どんな風に伝わってるんだろう。




「ただいま戻りました。はい一式採ってきました」


 満載のバッグを二つギルドに運び込み、もう二つ馬に積んであるからそれを運んで……


「リアは運ばなくていいからね?」


 相変わらず運ぼうとして動けなくなっていた。

 動けないリアが可愛かったからバッグと一緒にリアも運んだ。


「これで全部です」


「じゃあ査定するから待っててちょうだい」


 待合所でのんびりお茶を飲んでいたら、査定が終わったらしくオネエが近づいてきた。


「全部規定以上の物だったわね。満額プラス追加報酬がでるわ」


「ありがとうございます」


「でもイチャついてムカついたから0よ」


 またお茶を吹き出した。


「な、なんで!?」


「は~、本当に噂通りよねえあなた達。はい、これ報酬よ」


 革袋一杯の報酬を受け取った。でも噂ってどんな噂なんだろう。




 次の日、しずかの護衛をするべくギルドへと向かう。


「おはようございます。しずかさんはどちらでしょうか?」


 ギルドの受付に挨拶をして護衛対象を紹介してもらう。


「あらおはよう。しずかさんは二階でお待ちよ」


 二階の部屋に案内されてしずかを紹介される。


「しずかさん、こちらはユグドラとアセリア。ご希望通り冒険者ギルドで一番の腕利きよ」


「初めましてしずかさん、しばらくの間ですがよろしくお願いします」


「よ、よろしくお願いします!」


 リアも挨拶をした。

 リアはギルドに登録していないが、素材集めで成果が出ているので協力者という扱いらしい。


「数日間ですがよろしくお願いします」


 この人が本物を自称する偽物しずかか。見た感じは悪い人には見えないんだが……


 ギルドを出て少し離れた所の鍛冶屋に入った。

 どうやらここで鍛冶仕事をしているらしい。


「親方さん、今日もよろしくお願いします。こちらは私の護衛をして下さるユグドラさんとアセリアさんです」


「よろしくお願いします」


「お、おねがいします!」


 どうやら護衛と言ってもあちこち歩き回るわけではなく、店にいる時の護衛がメインの様だ。

 偽物の仕事っぷりを見ているが腕が悪いわけではない。どちらかというと良い方だと思う。


 地道に練習をしたら程々有名になるんじゃないかと思うけど……近道をしたいのか?でも知っている人が見たら仕上がりの違いは分かるし、直ぐにバレると思うんだけど。


「これって何をやってるんですか?」


「金属に穴をあけて可動部分を作っているんです」


「凄いですね~。やっぱり長年の経験が必要なんですか?」


「ええ、師匠の下で厳しい修行の末に出来るようになりました」


 すごいぞリア!次々と情報が出てくる!

 鍛冶の知識は分からないけど、衣装と性別以外は全てデタラメだった。

 実質10日前後しか活動してないはずだから詳しいはずも無いか。


 しかし一番の違いは鍛造(たんぞう。熱した金属を叩いて形を整える)ではなく鋳造(ちゅぞう。型に溶かした金属を流し込む)品が多い事だ。


 しずかで鋳造なんてやった事ないぞ。


 その後も買い物や食事など起きてから寝るまで護衛をしたのだが、気になる事が一つある。


 このしずかは自分を本物だと思っている事だ。


 これはリアも同じ意見で、自分を偽物だとは思っていない様なのだ。正直これには戸惑った。

 思い込みによる記憶の書き換えでもあったのだろうか。

 だがそれを確かめる術は無く、護衛最終日を迎えた。


「短い間でしたがありがとうございました。お陰様で安心して過ごせました」


「いえ、こちらこそ楽しく仕事が出来ました」


 予想通り襲われることも無く、無事に任務を完遂できた。


「それでは行きます。機会があればまた」


「その時はお願いします」


 城に入っていく偽物を見届け、ギルドへ報告に向かう。

 しずかが噂になっているのに、ルリ子が噂になっていないのはなぜだ?

 王都に来て数日が経つが、ルリ子はもちろんドラゴンの話しも全く聞かない。

 時間が経ちすぎたのか?いやそれならしずかも大差ないはずだ。

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