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20.俺、再び

「もしかしてあなたが有名な流れの鍛冶職人しずかさんですか!?」


「はい、そうです」


 ??????え?


「王都でお仕事ですか?」


「王宮に呼ばれましたので向かうところです」


 そう話しているが、違う。俺が作ったしずかじゃない。

 服装も似ているが違う。

 見間違えるはずはない。だって俺の全キャラの服装を含めた装備全部しずかで作ったんだからな。


 ぱっと見では分からないが、衣装も装備も全てにLady Sizkaの銘が入っている。

 しかし、なぜしずかの偽物がいるんだ?偶然同じ名前の似た姿の鍛冶職人がいた?ありえない、それこそ限りなく0%だ。


 と、袖を引っ張られた。ん?リアだ。

 リアを見ると頬を膨らませて怒っている。


「ど、どうしたの?」


「ユーさん、あーゆー人が好みなの? 私みたいなチビで胸ばっかり大きい女なんて……」


 どうやら偽物しずかをじっと見つめているのがお気に召さないらしい。


「違う違う、俺の知り合いの鍛冶職人と同じ名前だったからビックリしただけだよ」


「そうなの?鍛冶屋さんと仲がいいの?」


「冒険者だからね。装備の修理は信頼できる人にお願いしたいし」


 ああ、とリアは納得してくれた。

 しかし偽物しずかは腕は良い様だから普通に売り出せばいいのに、なぜ人の名を騙るんだろう。


 それにしてもおかしいな、しずかではなくユグドラで有名になるつもりだったのに……どこでパーフェクツな計画に狂いが生じたのだろう。


 王都へ着くまで数回モンスターの襲撃はあったが、他には特に何もなかった。

 ただ夜寝る時に商人が用意したテントは敷物の質が悪かったので、自前の2人用テントを使った。

 こっちの方が快適だ。


 王都に到着した。デカい!


 エリクセンやジョザ・マルーザの数倍いや十倍以上はある大きさで、城壁も高いし大砲が置かれている。


「でっか……」


 馬車の中から城壁を見上げるが、近づけば近づくほど城壁の天辺が見えなくなる。

 他の街だと壁の真下に行かないと防壁の天辺が見えなくなるなんて無かった。


「ユーさんは王都は初めてなの?」


「王都はおろか他の街も初めてだったから……でもここは別格だね」


 日本でいうところの町や市どころか県くらいあるんじゃないか?と言うほどに大きく見える。

 午前中に王都に入るための長~い行列に並んで、結局入れたのは昼を過ぎてからだった。

 行列って凄く時間が経つのが遅く感じる。


「お~~~~、っはっはっは」


 人の多さと大きな建物の多さ、色んな店がある事に驚きすぎて笑ってしまった。

 いやTOKYOと比べればそれ程でも無いだろうけど、この世界でこの数は凄いな~。


「ほらこっちこっち」


 リアに手を引かれて海?が見える丘へやってきた。


「これは海?」


「ううん、これは湖。王都オンディーナには海かと思うくらいに大きな湖があるの」


「これで湖か……向こう側が見えないんだけど」


「ここでは珍しい魚が捕れるんだって。食べに行こ」


 そういえば行列のせいで昼を食べていないんだった。

 丘を降りると沢山の店が並んでいる。飲食店や土産屋が立ち並ぶ中の1店舗にリアは迷わず入っていく。


「おススメの焼き魚セットと、かば焼きセットくださーい」


 とても手馴れているようで目がキラキラしている。

 今のリアは間違いなく色気より食い気だ。

 そしてここでも遭遇してしまった。


「あー焼き釜が壊れちまったよ」


「私直せますよ」


 とても覚えのあるシチュエーションだ。

 見ると茶色を基調とした服装でピンクのベレー帽をかぶった以下略。

 しかも馬車を直した偽物しずかとは明らかに別人だ。

 いや早とちりはいかん、衣装が似ているくらいよくある事さハッハッハ。


「私は流れの鍛冶職人のしずかといいます」


 水を吹き出しそうになった。

 どうやらリアも聞いていたようで慌てて俺の口周りを拭いてくれた。


「ゲホッありがとリア、ゴホッ」


「ううん。それより、またしずかさんだね」


「ああ、俺の知っているしずかも王都を目指すと言ってたけど、一体どうなってるんだ?」


 オンディーナへ来て魔術ギルドと錬金術ギルドへ登録したいしポーションや材料、色々な物の品質を見たいんだよね。


 あ、後で冒険者ギルドに顔だけでも出しておこう。


 昼食を済ませて街を散策していると、あちこちでしずかの名前を聞いた。

 この街はしずかで溢れているなぁ。


「リア、冒険者ギルドに顔だけ出してくるよ」


「うん、付いてく」


 あちこち寄り道しながらギルドへ到着した。

 扉を開けると中は冒険者であふれかえっている。なんだこの人数は!


 まずは受付っと……ん?随分と化粧が濃いな……とても腕が逞しいし……角刈りだし……まさか……まさか!!!王都オンディーナの受付はまさかのオネエだ!

 オネエが受付嬢の制服着てる!うん教育に悪い。回れ右っと。


「あらアナタ、せっかく来たのに帰っちゃうの?」


 あーうん、オネエ言葉だ。帰りたい。


「ユーさんどうしたの?」


 どうやらリアはまだオネエを見ていない様だ。見ないうちに帰りたい!


「ユグドラちゃんは冷たいのねぇ」


 ! コイツ……


「まだ名乗っていませんよね」


 名前を呼ばれて振り向いた。なんだ、コイツ。


「特徴的な三色の衣装、鎧を着こんでいるのに重さを感じさせない歩き方、マントとローブに付いたシワは背中に斧を担いでいたからかしら?」


 これはヤバイ奴だ。

 ゆったりとしたローブの下に鎧を着ているなんて普通は分からない。

 ましてシワの理由なんて気づくはずもない。


「元冒険者か何かでしょうか?」


「あらイヤだ。ワタシはずっと受付嬢をやってるわよ」


 嬢じゃないだろう……と突っ込みたい気持ちを抑える。


「そうでしたか。それで何か御用ですか?」


「御用があるのはソッチでしょ?」


「さあ、私は顔くらい出しておこうと思っただけなので、用事はおわって」


「ユーさんユーさん!ほらほら素材集めの依頼があるよ!」


 リアが掲示板に貼られた依頼書を見てしまったようだ。


「いい子じゃない。で、どうするの?」


「……依頼をお受けします」


「それじゃあ手続きをするわね。それと、もう一つお願いしたい依頼があるんだけど、どうかしら?」


「内容にもよりますね」


「内容は単純よ。噂の鍛冶職人、しずかの護衛をしてほしいの」


 ええぇぇぇぇぇ…………

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