1.寝て起きたら異世界だった
190825、前半部分追加。☆追加
見にくかったら教えてください、直します。
「キャラクターチェンジ!」
ユグドラ― ― ― →ルリ子
体が光る。段々と俺ではない姿に変わっていく。そう、やっとアタシの出番かい?
首の長い、大きな鳥にも見える龍に乗ったまま、アタシは魔法を使った。
「メテオ・スウォーム!」
頭ほどの大きさの無数の石が空から降り注ぐ。
アタシの周りに居たゴミは片付いた。次はヘタレ共を助けてやろうかねぇ。
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毎日寝る前にしている事がある。
それは目が覚めたら異世界に居ますように! と神様にお祈りをする事だ。
今のところ十年以上成果は出ていない。
生まれて三十年以上になるが、受験や就職以上に強く願っているのにな。
いつ異世界に転生しても良いように、転生後にやる事はリストアップしてあるから問題はない。
どんな世界に転生しても良いように、オンラインRPGのレベルやスキル、装備は常に最高の物を用意してある。
パジャマも外出してもおかしくないトレーナーを着ている。
さあ、今日も祈りを捧げて眠るとしよう。
今度こそは転生しますように! 天の神様仏様お願いします! あ、女神さまも。
さあ今こそレッツ異世界!
目を覚ました俺は、いつものように落胆した。
ああ、わかっていた、わかっていたさ。この風景はいつもゲームやPCの壁紙で見るような剣と魔法の世界だって……。
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☆ 異世界にいるじゃん俺!! ☆
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「マジでか! なんだよここ! 俺の部屋じゃないし! 見渡す限りの草原だし!!」
流石にビックリした。いや~やってみるもんだな神様にお願い。
「ああっ! 女神様ありがとうございます。それと神様と仏様も」
きっと俺を異世界に連れてきてくれたのは美しい女神さまに違いない。そうだそうだ、そして俺にこの世界を救えと言っているに違いない!
でもまずはヒロインとイチャつきたい。
とりあえずステータス画面を確認しよう。えーっと?
「ステータス」
出ないな。
「メニュー」
これも違うか。
「メイン画面」
あれれぇ~何も出ないぞ? おいおいどうした女神ん、俺の状態が分からないではないか。
これはまずいぞ。異世界に来てやる事ダントツでナンバーワンでトップのステータスが分からないと、今後の計画に支障をきたすではないか。
「仕方がない、やる事ナンバーツーの周辺の確認と街の場所を……ってステータス出っ放しかよ! え? なに俺は右に出てる画面に気づかずにステータス! とか叫んでたのかよ! いやお前確かにステータス出っ放しのゲームもあるけど、もっと分かりやすい所にあるもんだろうが!」
街を探そうと首を左右に振ると、右側の半透明の画面に沢山の数字や文字が書かれていた。
「まあいい、とりあえず確認をしておこう。どっこいせ。どのゲームがベースになっているのかな」
原っぱにあぐらをかいて確認を始めた。
名前:ユウ
「うわ、この名前懐かしいな。最近はユグドラって名前使ってるからな」
ん? 職業やレベルが無いぞ? はて、じゃあステータスやスキルはどうなっているんだ?
HP :110
MP :45
STR:120
DEX:80
INT:50
……随分と少ないな。スキルはどんな感じだろう。
解剖学 :120
治療 :120
伐採 :120
魔法 :100
戦術 :120
魔法抵抗:120
なつかしいな、斧戦士を作った時のスキル構成だ。
この頃のアルティメット・オンラインは、それこそ一日中やってたな。
ふぅ……。
「よりにもよってアルオンか! このゲームはプレイヤースキルが一番大事なゲームじゃねーかよ! 他のゲームにならなかったのか! それこそ神をも殺す武器とか持ってるやつにしてくれよ!! ウガーーー!」
そう、アルティメット・オンラインは、ステータスやスキルは程々やっていればあまり変わらない数値になる。スキルはやり込まないと100を超えないが、90あれば100と大差はない。120あるのは専用のアイテムを使ったからだ。
スキル、と言っても必殺技的なモノではなく、単純に剣の技術とか扱いに長けているというだけのスキルだ。
装備も、最高級の武器や防具でも、プレイヤーが作る高品質アイテムの二割程強いかな? 程度。
ちなみに高品質アイテムは生産系のスキルが100近くあれば誰でも作れる。
このゲームはスキル構成による違いはあれど、どのキャラが最強! とかは無い。ある程度やり込んだら、あとは格闘ゲームやシューティングゲームみたいにプレイヤー次第なのだ。
「これは俺が引退した時のデータだなぁ……確かあの後何回もバージョンアップしたらしいけど、内容は知らないしなぁ」
とはいえ当時の俺は、上級者がパーティーを組んでも苦戦するモンスターを単騎で倒した腕があるから、そこそこ強いと自負している。
「いつまでもここに居るわけにもいかないし、装備を整えて街を探すとするか」
メニュー画面にあるバッグを人差し指で触ると、中身が目の前に立体映像の様に現れた。
「うおっ! ビックリした。どうやって使うんだこれ」
当時俺が持っていたであろうアイテムが雑多に放り込まれていたが、プレート鎧(胴)を掴んで自分の胴体に押し付けると勝手に装備された。
「おお、これは便利だ」
プレート鎧一式と斧を装備して、当時使っていた衣装である青いローブ、赤いマント、黄色い麦わら帽子を装備した。
「懐かしのシグナルスタイルだ」
そして俺の状態はリアル年齢は30過ぎだけど、どうやら20代前半くらいの顔に見える。斧の刃に顔を映しているから正確には分からない。
顔は……少なくともあご肉がたるんでないから痩せているようだ。
「さて、街を目指してメインヒロイン探しといきますか」
メニュー画面の右上の、丸い枠の中にある周辺マップを縮小して範囲を広げると、街らしきものを発見した。ひとまずここへ向かうとしよう。
街まではそれなりに距離があったが、街道が整備されていたのでそれほど時間はかからなかった。
壁で囲まれた街の入り口は大きな木製の両扉で閉じられており、どうやら定番の門番との交渉が必要なようだ。
「おいお前、何者だ? サーカス団が来るなどとは聞いていないぞ」
槍を持った革鎧の門番が話しかけてきた。
「いえ私は旅の者です、街に入りたいのですが」
門番は怪訝な顔をして俺をジロジロ見ている。
「嘘をつくな、旅人がそんなピエロみたいな格好でいるはずが無いだろう。正直に言えば死刑にはしない」
「死刑!? ちょっと待ってください! 本当に旅してるんですってば! まあ冒険者志望ではあるけど!」
「冒険者? 人を笑わせる流れの冒険者か?」
「いやいや、いい加減ピエロから離れましょうよ」
「大体、そんな目立つ格好をしていたら、狙ってくれと言わんばかりじゃないか。装備はどうしたんだ?」
グゥの音も出ない!
青いローブの前を開けて鎧を見せると、門番は少し驚いた様子だ。
「これは驚いた、中々いい鎧じゃないか。どこで買ったんだ?」
「これは知り合いの鍛冶屋に作ってもらったんです」
「偏屈な鍛冶屋がお前のために作ったのか……分かった、門をくぐってまっすぐ行くと、右手に冒険者ギルドがある。そこで登録をしてくれ」
「分かりました、ありがとうございます」
やっと分かってもらえた。あ~、予想とは違う方向で疲れた。
「それと、青いローブは脱いで行け。変質者と間違えられるぞ」
……くそぅ。ローブをバッグにしまった。
冒険者ギルド……ああここか。レンガ造りの大きな建物だな。
扉を開ければ俺の冒険者としての輝かしい未来がまってる!
さあ、未来への扉をオープンだ!