ドーナツ その三
ドーナツ、あと一話で終わるかな?
釜戸さんを見送ったあと、私はさっそく猫に甘いものを与えてみることにした。と言っても、生憎買い置きのお菓子を切らしていたので棚や冷蔵庫を漁って何か作れないか考えてみた。
結果、ドーナツを作ってみることにした。
ボウルに材料を入れて、生地を作り、しばらく寝かせる。
その間、猫と少し話していた。
「ねぇ、猫」
「なんだにゃ?」
「君は人間だったの?」
「だから、いっただろにゃ。覚えてないにゃ」
猫はこの話を続ける気がないらしく、そっぽを向いてしまった。
「でも、よかったね」
「うにゃ?」
猫が何がだ? と言いたそうな顔で振り向く。
「だって、猫はいつも甘いもの食べたがってたし、食べられるようになってよかったね」
「にゃあ」
肯定なのかはわからないが猫は鳴いた。
尻尾がゆらゆら揺れている。猫は機嫌の悪いときに尻尾を振るらしいが、この猫は違うらしい。
「今日は一緒に食べられるね。ドーナツ」
「ドーナツ? あの輪っかにゃ」
「そう、輪っかのやつ」
両手でドーナツに見立てた輪を作って見せる。前にドーナツショップで買ってきたドーナツを猫は食べたそうにしていた。今度、買ってきてあげよう。食べられるとわかっただけで猫と出来ることが増えた気がした。
本日の投稿はこれで終了です。
また五話くらい書けたら纏めて更新します。
読んで下さった方、ありがとうございます。