ドーナツ
この話から猫も食べ始めます。
作る描写は雑です。作り方がうろ覚えなので。
菜箸から浮かぶ泡で油の温度を確認する。
丁度いい温度になったとわかったら、そこに一つ生地を慎重に入れる。
丸くて中央に穴が空いたそれ。そう、ドーナツだ。
油がじゅわじゅわいってドーナツを揚げていく。私は続けて一つ二つと鍋にドーナツの生地を入れる。
猫は油が怖いのか、今回は私の足下じゃなく少し離れた場所から見ている。
「はやくはやく」
そうせかされる。これは猫のためのドーナツだ。
何故、私が猫にこんな油をたっぷり使うものを作っているのか。
それは、午前の来訪者がきっかけだった。
いつも通りの朝だった。私は朝食を作って猫にもミルクと子猫用の消化しやすい猫缶をあげた。
朝食を済ませると、インターホンが鳴らされた。
こんな朝早くに誰だろうと重いながら、扉を開けるとそこには魔女のようなとんがり帽子に黒いロング丈のタイトワンピースに身を包んだ女性が立っていた。
不思議な雰囲気の女性で、年齢は判別がつかない。若い女性にも見えるし、初老の女性にも見えた。
女性は少ししわがれた声で、
「こんにちは……いえ、まだおはようかしらね。私は釜戸という者だけれど、ここに小さな黒猫はいるかしら?」
そう言って扉の隙間から覗く猫を見た。
続きます。