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刻の刻印  作者: 舞原倫音
刻の刻印:第一部
17/24

疵痕

「あ、おはよう。」


 十時三十八分。


 遅刻登校してきた神流に気付いたクラスの女生徒のあげた声。


「──…おはようございます。」


 ニコリと笑い声を返すと、神流は自分の席へと向かう。


 久しぶりに来た教室は、なんだか少し騒がしかった。


 本来ならば今はまだ授業中の筈である。


 にも関わらず、先生らしき人物は今室内には見当たらなかった。


「おー、河合? 久しぶりだな。もう体の具合はいいのか?」


「ええ。だいぶ。先生がいらっしゃらないようですが?」


「あ? あぁ、さっき自習になったんだ。」


 近くにいたクラスメイトと何気ない会話を交わす。


 さしさわりのない受け渡し。


 クラスメイトは疑わず、神流の言葉をしんと受け取る。


 この後二言三言言葉を交わし、神流は自分の席へとついた。




 ────偽りの友達────




 いつの頃からだろうか。人と接するその時に、無意識に壁を造るようになったのは。


 いや、その自分を彼らは信じている。


 この自分が、本当の自分だという様に。


 そして知らない。自分の根底にあるモノを。


 付き合えば付き合う程先入観で塗り固められる自分への偶像。


 その存在が更に壁を一回り厚くさせていた。


 暫く考え事をしていると、授業終了のチャイムが鳴った。


 担任への挨拶にと、神流は職員室へと向かった。




     *  *  *  *  *  *




「なんだ? 河合今日は休みじゃなかったのか?


 まぁ、来るに越した事はないが、無理はするな?


 …──お前は優秀なんだからな」


「……はい。」


 所用をすませ、教室へ入ろうとしたその瞬間。


 不意に聴こえた声に振り向くと、そこには数学教師塚原がいた。


 神流の肩にポンと手を置き、教師は労わりの言葉をかける。


 ほら、教師でさえ上辺でしかみていない。


 いや……、教師だからか。


「ほらほら、授業はじめるぞー?


 皆、席つけー!?」


 塚原の声と同時にチャイムが響いた。








・・・・・・・・・・・・二十分後。




「…であるから──」


 塚原の声を聞きながら、神流は別の事を考えていた。


 遅刻した理由になった出来事──…




 空界人ヴェルザー




 リィフィンと出会い、揩と美夜、瀬識に梨留。


 彼女らと共に知った新たな事実とこれからの事。


 今までの日常は明らかに変わり始めていた。


 あれから皆で話し合ったその結果。


 一同は神流の家で共同生活をする事にした。


 部屋はたくさん余っていたし、いつ空界人が来るか解らないのに、個人で居るのは危険だろうという結論からだ。


 そして過去へ行くという話しも夏休みになったらという事で既に話は進んでいた。


 学生である自分達には時間も自由も限られていた。


 だが夏休みなら、比較的世間の目を欺けるだろうという結論からだ。


 休んでいたこの数日間も実際の理由は風邪などではなく、引越しの準備によるものだった。


 いや、もちろん元から一緒にくらしている揩は手伝いという名目のサボリであるが、学校の許可は一応得ていた。


 先日電話連絡し家庭の事情と伝えたところ、そういう事ならと転入日を遅らせてもらえたのだ。


 別に詳しい話をした訳ではなかったのだが、転入生という立場と揩の家柄を考慮しての事だったのだろう。深い追求は別段無かった。


 そして引っ越しは迅速に行なわれていた。


 彼らもじき、学校へと来るだろう。


 昼までにはと約束を交わしているのだから…



     *  *  *  *  *  *

疵痕きずあと:web初出は多分…2004年1月28日

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