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思い出
──ねぇ、どうしてないてるの? どうして…?
──なかないで? ねぇ、泣かないでよ?
──決めたんだ、僕。絶対君を守るって。だから──…泣かないで?
記憶の片隅にある思い出を美夜は思い出す。
懐かしい思い出。定かではない刻。
確かな面影はもう覚えていないけれど、自分にとって一番の。
大切な思い出。
あの刻の自分は幼くて、小さな事ですぐくよくよしていた。
今なら同じ事をいわれてもやられても、笑ってやり過ごせるのだろうに。
「──…そういえば、あの男の子。なんて名前だったっけ。
あの後、どんなに探しても、見つける事は出来なくて、それっきりなんだよね…」
懐かしい思い出。
感傷に浸り美夜は無意識に呟いた。
「……逢いたいな……」
窓からの風が、美夜の髪をなびかせていた。
* * * * * *
思い出:web初出は多分…2003年3月20日