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刻の刻印  作者: 舞原倫音
刻の刻印:第一部
15/24

聖法石とその条件

 先程静まり返っていた部屋の中。各々は自由になった体をぎこちなく動かし体をほぐし、体と声が自分の思い通りに動いてくれる事を確認していた。


 シアが去ってから既に十数分が経過し、数分ほど前美夜とリィフィンを除いた四人の身体の自由は回復していた。


 室内に不必要に発せられた声に部屋の雰囲気がフワリと揺らぐ。


 神流と梨留の視線がふと交わると、二人は気恥ずかしそうに微かに笑んだ。


 そんな二人をみて瀬識はクスリと微笑を零していた。


 しかし、そんな仕草も一瞬で瀬識は腕を組み思案する。


 普段何気なくしていた事が出来なくなる──


 今まで考えた事も無かったが、シアに圧倒的な力を目の当たりにされての出来事なだけにあれは一種の恐怖であった。


 自分の体が他人に自由を奪われる。


 自分の存在を否定された──…ような気がした。


 それだけに、今。体を動かす一動作、声を発するその一言が安堵の気持ちを四人に感じさせていた。


 なってみて初めて実感するこの安堵感は、出来なかったことが出来るようになった時のあの喜びや達成感に似ているのかもしれないと瀬識は思う。


 先程のシアの術を受けていたとき瀬識の記憶がふと蘇ってきた。


 …懐かしい思い出だ。


 美夜と梨留。


 二人に初めて出会った時の事。


 何も出来ずにただオタオタと逃げていた自分がいた。


 何も出来なかったという事が情けなかったあの時。


 二人に負けてなるものか、と半ば意地とプライドで柔術・柔道・合気道…


 その他ありとあらゆるものに手を出した。


 結果。それは自分に合っていたらしく今ではライフワークにまでなっているそれは、既に二人のそれを超えていた。


 二人に追いついた。


 そう言えるようになった時。


 自分は不思議な安堵感を感じていたなと懐かしさにまた笑みを零す。


「──…で、リィフィン?


 聖法石ってのは何処にあるんだ?」


 シアが来た事で中断してしまった話を仕切りなおすのは、シアが消えた事で体の自由が戻った揩である。


 そんな彼は先程迄「ちくしょう……ざけんな、正々堂々勝負しやがれ……」等と呟きながら、五人から少しはなれた所で竹刀を握り素振りをしていた。


 揩を視界に捕らえていた神流があえて声をかけなかったのは、揩がそうして苛立ちを振り切ろうとしていると理解していたためである。


 ──以前、揩は気に入らない事があると家の物にあたりちらしていた。


 ドアをぶち破り、壁を破壊し、庭木を数本へし折った。それ以外の被害も多数ある。


 …おかげで数え切れないほどの物がおしゃかになり、その度修理を呼んでいて、数ヶ月に及び修理屋が入り浸りだったのは年が明けて間もなくの、半年位前の事である。


 さすがにそれはまずいだろうと、揩を何とか説得したのは数ヶ月程前の事。


 神流自身が養い子である為に家の者への迷惑は極力さけたかったのだ。


 ここを無くせば自分の居場所が消えてしまうのは解りきっていた事だ。


 以来彼には何かあると竹刀を振ったり物を壊さない様な方法をとってもらっているのである。


 だからこそ、尚更に。そんな時に彼に介入すると言う事は機嫌を損ねるだけと心得ていた。


 しかしながらリィフィンに声をかけた事を考えると自分なりの解決策、もしくはけじめがついたというところだろうか。


 まぁ、表情がいまだに険しい所を見る限りではどうやらそれは前者のように思えるが…。


『場所──…、ですか?』


 揩の険しい表情に気圧されて、リィフィンがわずかに身を引くと、揩は更に言葉を続けた。


「あぁ、俺は強くなりてぇ。少なくともあいつに負けない程度にはな。


 あいつ…。俺は何もできなかった。動けなくて、…無力な自分は嫌だ。


 俺の体は俺の物だ、あいつの好きにはさせたくねぇ。


 そのためには聖法石ってやつがいるんだろ? 記憶を取り戻すためにはよ」


 深い後悔。微かな苛立ち。貫いた意志。


 呟く様に発せられた揩の声には深い意志が宿っていた。


 先程の事があったばかりで。現状、自分がシアに勝てるとは思っていない。


 圧倒的な力の差を見せられたばかりなのだがら。


 けれど、宝珠が体に消えたとき、自分の能力が上がっていたのは、紛れも無い事実だった。


 そして。先程シアのせいで聞きそびれてしまっていたが、聖法石がない現時点では記憶を解放させ能力を上昇させるのは不可能と言っていた。


 と、いう事はつまり…。


 「聖法石」を手に入れれば少なくとも今の現状は好転するに決まっている。


 先程揩の出した結論はそれだった。


 しかし。


『…ここにはありません。


 僕が捜し出す許可はでていないんです。」


 返ってきたリィフィンの答えは期待外れのものであった。


「許可…?


 じゃあ何だ?自分で捜しにいけばいいって事か?」


『…簡単に言うとそうなります。でも…』


「でも?」


 言い渋った物言いに、揩の表情がかすかに曇った。


『この時代には存在しません。』


 渋々と。


 けれど意志の宿った声に一同息を飲む。


「ない?」


 静かに発せられた声の主は揩ではなく瀬識だった。


 どういうこと?と視線で促す。


 皆が静かに聞いていた。


 リィフィンの次に発する言葉を待って…


『…。すべては貴方たちの過去に存在します──…』


「──…過去に?」


 瀬識に聞き返され、リィフィンはコクリと頷いた。


 組んでいた腕を解き口元に拳を当てると瀬識は何やら思案しもくしてしまう。


「…過去とは前世の事ですか?」


 と、これは神流である。


『──…はい。』


「じゃあ捜すのは不可能ね」


 前世かこに存在する。


 そんな所にある物を探し出す方法など自分たちは知らない。


 まぁ、先程一つ思い当たった事があるにはあるが。


 けれどそれは《刻の狭間》を利用する事。


 先程のシアの様に──…。


 空間と空間を繋ぎ合わせて…。


 しかし、使うたびに時間のズレが生じていては童話にある浦島太郎になりかねない。


 そんな危ない橋は御免である。


「んなら俺らはなんの為に捜されたんだよ!」


 先程シアから味わった悔しさが込上げる。


 負ける為か!?


 と、思わず言ってしまいそうになり揩は慌てて言葉を飲み込んだ。


『…一つ。方法があるにはあるんです。』


 嘆息たんそくしつつのリィフィンの声に美夜を除いた全員の意識が引き寄せられた。


 その声は余りにも皆の予想を裏切っていた。


「「…どんな?」」


 同時に発せられた質問は見事なまでに同じものであった。


 知りたいのは皆一緒ということか。


『……行くんです。過去に。』


「──…過去に?」


 行くことが出来るのか?と。


 皆の視線がリィフィンへと注がれていた。


 前世に行く──…


 それは、過ぎてしまったときを遡ると言う事だ。


 そんなことが出来るなら、世の科学者はとっくにタイムマシンを作りだしている事だろう。


「ねぇリィフィン?


 あんな力が存在するなら、今の時代じゃないんでしょう?」


『ええ』 


「消えてしまった時間を遡る…なんて不可能に近いんじゃナイかしら?」


『確かに、消えてしまった時を遡ることはできません。』


「じゃぁ──…」


 どうやって?


 解けぬ疑問は増すばかり。


 リィフィンの意図はなんなのか。


『……記憶の中に潜るんです。』


「記憶の?!」


『ええ。今までずっと繰り返してきた事です。


 貴方達の様な能力を宿した人間は記憶の浄化が行われない。


 それを利用するんです。過ぎてしまった刻へと行くために』


 突然過ぎて信じられない。


 前世かこに行く為に記憶に潜る?


 今まで繰り返されてきた?


 一体自分達は前世で何をやらかしたのか。


 …まぁ少なくともこんなことに巻き込まれているのを考慮すると、まともな人生は歩んでいないと思われるが。


「…そんな事が可能なの?」


『えぇ、いくつか条件はありますが。それさえクリアすれば可能なです。』


「条件…?」


『潜れるのはミヤの…彼女の記憶だけなんです。


 そしてその時ミヤは眠っていなければなりません。』


「な、そんなの無理に決まってるじゃない。」


 眠り続ける人間なんて居るわけがない。


 大体条件とは、然るべき理由があって存在するものだ。


 ましてや生きている人間の記憶に入るとあっては、その危険性の考慮から絶対の遵守項目だろう。


 万が一の可能性でも美夜を危険な目に合わせる位なら…。


「…どうしても聖法石が必要なら私の記憶じゃ駄目かしら?」


 過去に行くにあたって必要なのは能力者の記憶ということだろう?


 それはつまり、自分にもその能力が宿っているなら自分でもよいのではないのだろうか。


 ……不器用に生きていた自分を二人だけが見据えてくれた。


 弱い部分も強い部分も隠しても悟ってしまうのは、自分の本質をきちんと理解してくれているからに他ならない。


 今の自分には美夜と梨留、二人の欠けた人生など考えられない。


 誰かが欠けてしまうなら…


 それは、自分でいい。


 どうせ一度は見捨てた命だ。


 それを思えば──…恐くない。


 いまさら惜しく等ありはしないのだ。


『…ごめんなさい、セシル。


 貴方の気持ちはよくわかります。


 でも、だめなんです。…貴方では。』


 瀬識を気遣い申しわけなさそうに言葉を紡ぐ。


 記憶の中へもぐる。


 それはつまり、個の精神的な部分へ干渉するという事だ。


 彼女らの守護を受け持つ者として、彼女の意思は認められない。


「どうして」


『…ミヤに…いえ、貴方たちに宿っている能力が関係します。


 ……記憶への介入はそれが全く同等の能力でなければいけないんです。


 貴方は…一方の能力が成長しすぎている。


 偏った能力は記憶の中の世界に不安定な物を招きます。


 それでは記憶の中に入った者の存在が危うくなってしまう。


 …だから、ミヤでなければ駄目なんです。』


 淡々と語られる言葉が静かに心に染み入って、無力感が瀬識を襲う。


 大切なもの一つ守れない。


 そんな自分に対し悔しさが込みあがってくる…。


「でも、だからって、すぐにみつかるわけじゃないんでしょう?


 いくら美夜でもその間ずっと眠ってるなんて、そんなの不可能に近いじゃない。


 もしそれが原因で美夜に何かあったら──…」


「瀬識。」


 私はあなたを許さない。


 そう言い掛けた所で


 パンツ


 と軽い衝撃音が部屋へと響いた。


 叩かれたのは瀬識の両頬。


 叩いたのは…、美夜だ。


「あたしはめぐみじゃない」


 手加減し、はたいた手そのままに。


 じっと見据えてただ一言。


 静かに呟かれる。


「…美夜……。


 でも……」


 無音の声が胸へと響く。


 美夜の言いたい事は解っている。


 けれど。


 簡単に納得できるような物なら最初から意見していない。


 納得出来ぬから意見したのだ。


 変わらぬ瀬識の眼差しを受け美夜は更に言葉を続けた。


「この事は思い出してんの。あたしが一番適してる。


 瀬識が気にかけることじゃない」


 強い意志の宿った口調…。


 その言葉に、瀬識は大人しく身を引いた。


「…貴女は一度言ったら聞かないものね…。」


 これ以上言った所で美夜の意志まで変えることは出来ないだろうと瀬識は諦めのため息をつく。


「…わかったわ。


 でも美夜、これは私のワガママだけど。


 ……危ない事したら殴るわよ? リョーカイ?」


「了解」


 仕方ないわねと交わした視線のその先には微かに笑みが零れていた。


「ねぇねぇでもさぁ、美夜がその間ず~っと眠ってるなんてそんなのむりに決まってな~い?」


 一段落と思ったか、一際甲高い声があがった。


 その声のぬしは先程まで静かに聞き入っていた梨留である。


「たしかにな。ずっと寝てたら化けモンだ」


 冗談交じりにククッと笑う。


『大丈夫です。』


 揩の後、はっきりと肯定されたリィフィンの声をかわきりに、


「化けモンなのか!?」


「違うわよ!!」


「……っ!」


 ドカリと揩の頭部に鉄拳が飛んだ…。


 声にならぬ声を発して殴られた箇所に手を当てる。


 ──…触れた先には、小さなコブが出来ていた。


 ズキズキと痛みを実感し、


(…こいつ、ぜってー女じゃねぇ…)


 と手加減のない美夜の仕打ちに揩は素直に感想を述べた。


 瀬識といい美夜といい、逞しさが際立って、女らしさに欠けるというか…。


 まぁ、下手に泣くか騒ぐかした方が自分的にはとっつきにくい。


 言いたいことが言い合える分、気兼ねせずに付き合えるだろ。と直ぐに見解を改める。


 だがしかし。


 痛いものは痛いのだ。


 それとこれとは別問題だ、と。揩は痛えじゃねぇかと抗議の声を上げようとする。


 …間すらも与えずに。


「で、リィフィン? どうしてそれが平気なのかしら?」


 ある種開き直ってしまったのだろう。


 瀬識がリィフィンを対象に情報収集に取り掛かっていた。


『ミヤの刻を僕が止めてしまうからです。』


「いや、だから俺の話も聞きやがれ!」


 と、揩は抗議を試みるが抗議する揩を全く無視し話はさくさく進んでく。


「止める?」


『はい。……いいましたよね?


 そのときの為に僕はある、と。』


「言ってたけど…」


 確かに、と。瀬識は刻の狭間でのリィフィンの言葉を思い出す。


 あの時、リィフィンはこういった。


 ──美夜の過去の記憶の為、その刻の為に僕は在る──


 と。


 あの時は何の事なのか解らなかったが、あれはそういうことだったのかと思案する瀬識の表情をみて、


『これはミヤが望んだことです。──…貴方たちの為に。』


 リィフィンは言葉を僅かに補足する。


「……俺たちの?」


 突然の自分を含める言葉に抗議をやめて問い掛ける。


 頼んだ覚えも、自分のためにと進んでしてもらう理由も思い当たりはしなかった。


 前世で何があったというのか…。


『えぇ、そうです。


 全ては僕からはいえません。でも、どこかで覚えているはずです。貴方達の心が。


 …早く、思い出してくださいね…』


 ──…揩に応え、そういったリィフィンの瞳には、微かな悲しみが宿っていた。


「そんな事、急にはむりに決まってるでしょう。


 ……でもそうね、その為に美夜の記憶の中に潜るなら…」


 リィフィンの表情を全く無視し、瀬識はなおも主張する。


 じゃあ、せめて。その世界を旅するのなら──


「──…私が行くわ。」


 異論無いわね?と物言わぬ瞳で釘をさす。


 記憶を取り戻す──…。


 そのためにそれが避けられないなら仕方ない。


 けれど向かい来る者に背を向けるのも、誰かに任せるのも真っ平ごめんだ。


 そう、これは──…自分の居場所を守る為に必要な、何よりも勝る絶対条件。


 そう…、絶対条件だ……。


 自分には負い目があった。


 自分だけ──…


 自分だけが、まだ何もしていない。


 美夜は記憶を一部であるが取り戻し、梨留は先程力を使った。男性陣もそれにしかりだ。


 恐らく力は自分にも宿っているのだろう。


 あの時美夜に「瀬識は後でやってもらうから」と、…確かそう言われた。


 でも……。


 その機会には恵まれず話はここまで来てしまっていた。


 自分に何の力が存在するのか今現状ではわからない。


 でも「旅をする」という事に自分の体術は役に立ってくれるはずだ。


 何より自分の信用置けぬ人物に行かせる気など全くないし、かといって帰らなくてはならない家が存在する梨留を行かせる訳にはいかないだろう。


 梨留の父は、いつあの家に来るかわからない。


 その為に携帯を持たされていて、ヘルパーからの連絡があれば、それがたとえ学校の授業中であったとしても出向かなけれなばならないのは付き合いの深い美夜や瀬識には言わずと知れた事実であった。


 それに──…だ。


 自分が行くと言った理由は他にもあった。


 先程この話をきいた時から──…ひとつ、気になる事があるのだ。


 それは記憶の中に入っている人間の存在の事。美夜の刻を止めるにしても、まさか世間のときを止めるのは不可能だろう。


 そう、つまり。


 少なくとも自分らの存在を当然の様に捕らえている家族にとって、その人間はどう映るか──…という事だ。


 恐らくは──…行方不明。


 まぁ幸せか不幸かもう少しで夏休み。多少家に帰らなくとも平気な家庭もあるだろう。


 実際高校生という身分でありながら、美夜は一人暮らしをしているし、自分もあの家に帰らなくても心配などはされないはずだ。


 けれど。


 梨留にいたっては先程も言った通りだし、神流からも──…先程聞いた。


 先程──…、そう。揩が空界人を倒した後。


 パニクっていた事を理解する為説明をさせていたあの時に。


 この神社は養い親の家である──…と。


 先程神流が作った料理にしても、居場所をくれた養い親のその優しさに報いる為に、神流は日々の雑務をこなし覚えたものなのだろう。


 あれ程の腕前だ。


 元々生まれ持っていた才能もあるだろうが、それでも子供一人で覚えるのは、かなり大変だったはずだ。


 そして、そんな彼がいなくなれば、既に高齢となっている養い親は困ってしまうに違いない。


 それから揩──…。


 彼が何故この家の居候になっているのかしらないが──…。


 正直、自分より弱い相手を連れて行ってもかえって足手まといになるだけ。


 じゃまなのだ。


 瀬識の言葉は全ての事を考慮にいれての答えであった。


 自分勝手な考えだが、だがしかし。


 自分に対する全ての事から「逃げない」と決めたあのときから。


 自分の生き方は自分で決める。


 そう心に決めていた。


 いわゆる「ゆずれないもの」なのである。


「冗談じゃねぇ」


 瀬識の声に反応し、ポツリと呟かれる言葉。


 瀬識が主張するように、じぶんにだって言い分があった。


 先程身をもって味わった彼女の体術。


 それだけを見るのであれば彼女は間違いなく適役だろう。


 彼女の身に宿るその力に異論があるわけではない。


 けれど女にまかせたとあっては、末代までの恥である。


 過去に行く──…


 それがどれ程危険だというのか。正直、やって見なければ解らないが──…


「ちょっと待ちなよ、二人とも。


 そんなことより他にも考えなきゃ行けない事はあるんじゃない?」


「そうですよ、揩。…瀬識、貴女もです。


 突然の事で、整理がついてないのは解ります。


 でもだからって早急に対処する必要はないでしょう?」


 静かに流れていたにらみ合い。その間に割って入って二人の動作に制止をかける。


「リィフィンの言う過去に行くのは、美夜が言うようにその他の事全てを整えてからでも遅くはありません。


 瀬識…貴女は既に解ってらっしゃる事だと思ってましたが?」


 諭すような口調と言葉とは裏腹に冷たい光を放っていた神流の瞳に瀬識は反論を許されなかった。


「…そうね。


 じゃあまず──…」



     *  *  *  *  *  *

聖法石とその条件:web初出は多分…2003年3月13日



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