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刻の刻印  作者: 舞原倫音
刻の刻印:第一部
10/24

一時の休息

「──で…、神流…あの女は何モンなんだ?」


「僕のクラスメイトです。貴方が転入する手続きをした学校の。」


 先程の事があってから、約三十分後。


 今は神流の部屋に五人プラス一匹でくつろいでいた。


 あの後、リィフィンが穴を塞いだものの、各々頭がパニクっているため、神流を脅し、……いやいや説得し、事のいきさつを説明させ終えた所だった。


 すなわち、刻の狭間の事と彼らの力について。である。


 彼の話に寄れば、揩と神流の力は、物心ついた時から自覚していたとのこと。


 リィフィンが言うには、じゅの知識だけが先行し覚醒してしまったのだという。


 でなければ、たとえ夢で見ていたとしても自覚する事すら不可能のはずなのだ。


 ……美夜のように、過去を解放しなければ──


 前世の記憶は蘇るはずもなく、普通に生活をしていたはずなのだ。


 それが出来ていなかったということは、彼らの輪廻に何者かがちょっかいをかけている可能性がある。


 だとすれば、先程刻の狭間でちょっかいをかけてきた奴がそうではないだろうか。


 …美夜の記憶を解放してしまったが、その行動は恐らくそいつのシナリオだったのだろう。


 だから、あの時あっさりと引き下がったのではないだろうか。


 そして。


 空界人が神流の神社いえにたびたび現れるというのは、揩と神流。


 二人の能力が神社という場所との相乗効果により、刻の狭間を引き寄せているのではないかとのことである。


 ………。


 そういえば。


 何故彼らは空界人──「ヴェルザー」の事を知っていた?


 幾度か出会ったことが在る口振りで。


 当然の様に言い放っていたが…。


 ──何故?


 覚醒前の接触コンタクトは禁止されているはずだ。


 ……なにかが、おかしい。


「…私達がここに来た理由はいいとして、…空界人ヴェルザーだったかしら?


 ──は、どうして私達に狙いを定めたわけ?


 こう言うのも何だけど、あれは何かを欲していたわ。


 狙いを定めたって事は、私達三人のうち誰かがその欲していたモノを持っていたって事じゃないの?


 詳しい事情は今聞いたばかりだから、いまいちピンと来ないけど。


 でも。一つ言えるのは私たちの持っている何かを狙って、これからも空界人あいつらは来るって事よ。」


「──すみません…。別に巻き込むつもりは無かったんですけど…」


「瀬識、それは神流に言うべき台詞じゃないよ。


 それより。気付いた?


 あたし達の体に何かが溶け込む様に消えたこと…」


 瀬識と神流の会話に、美夜が横から口を挟む。


「──そうだぜ! お前が使ったあの力…ありゃ一体何なんだ!」


「神流達の力は、昔からあったんでしょ?」


「えぇ」


「魔法の様な力──…。


 使えるんだから疑ってなんかいないよね?」


「…そう…ですね……。


 今まで、自分自身に不思議な力があるって事で、昔から忌み嫌っていた僕ですけど、端から見たら…魔法のような力を使っているんでしょうね……


 本当は、この事に関して誰にも言うつもりは無かったんですけど………。」


 神流の声が途中で途切れた。


 そんな神流を気遣ってかどーかは解らないが、揩が、神流に向かって身を乗り出す。


「──…俺が力を使ってたのをこいつが盗み見しやがったんだ。」


 肩に手を置き、ウインクすると、神流はクスリと笑みを浮かべた。


「盗み見とは酷いですね。


 僕は、あの時貴方をみつけて正直嬉しかったんですけど…」


「まぁ、俺もこんな力があるが為に勘当同然の生活してるしな。


 あんま言えた義理じゃねぇけど、そこそこの生活ってぇのにも憧れた時が在ったしな」


あっけらかん…とした揩の口調。


「あぁ、それより話が横道に逸れちまったな。本題に戻そうぜ」


「揩、貴方が仕切ってどうするんです。全くもう、貴方という人は…、どうして物怖じと言う言葉を知らないんです?」


 突然話題を変える揩の言葉に口を挟むのは、先程の戦いで揩と見事な(?)連携プレイを交わして見せた神流である。


 学校に居る時は特定の輩以外とは余り喋る事の無い彼だが、気の許せる人物といるからか、少しずつ口数が増してきている。


「じゃぁ、まぁ、リクエストも出たことだし…、あたしの力とこのリィフィンについて少しだけ話すわ。


 ま、いざって時はなかなか言いたい事が言えないなんて事、あたし、しょっちゅうあるから少し日本語変になるかも知れないわよ?」


「あぁ、関係ねーよ」


 美夜の言葉に揩が応える。


 神流や瀬識、それに梨留も、静かにコクリと頷いていた。


「あたしのこの力…これは早い話が揩や神流と同等の力よ。


 詳しくはあたしも知らないから何とも言えないけど、これは確かに普通の人には無い力。


 …まぁ、いわゆる、過去の遺物…ってやつかな?」


「過去の遺物…?」


 黙って聞いていた瀬識が、問い返す。


 ──心の中の驚きを隠せずに。


 そんな瀬識に美夜はニコリと笑みを浮かべる。


「そ、揩や神流は、じゅが使えるみたいだけど、


 そのじゅにしたって今のあたし達はカオスワーズを言って初めて使役できるもんなのよ」


 淡々と、美夜の口から語られる。


 初めて知る事実に、皆、動揺を隠せないでいた。


「カオスワーズ…?」


 瀬識は、眉をひそめた。


 見知った美夜とは別人のような、知るはずのない、知識。


 知り得ない筈のことを、当たり前のように美夜は語る。


「そう。


 揩や神流。それに梨留。さっきこの三人が使った能力は…、あ~…。めんどくさいから詳しい話は省くけど、あたし達が使える能力はその言葉が無いと発動しないように、あるモノに刻んであるはずなんだ」


 危険だから…


 美夜は心の中でそう付け足す。


 が、黙ってしまった美夜に、揩は微かな苛立ちを覚える。


「おい、女、ごたくはいんだよ、結果言え、結果!!」


「……女ぁ?


 ちょっと、女とは何よ、女とは!!」


 かんに障ったのか、美夜が揩に向かってつっかかって行く。


 同時に、周囲に陰険なムードが渦巻き始める。


 揩に怯んだ様子はない。


「けっ、女を女と言って、何がわるい!!」


「あたしは美夜よ、吹雪美夜!」


 吐き捨てるかのような揩の台詞に自分の胸をドンと叩き、美夜は自己の主張をする。


 そんな美夜を揩はフン。とあざ笑う。


 明らかに見下して。


「気にくわねぇ奴の名前なんて覚える必要すらねーんだよ!!」


 横柄な態度をとる揩に、


 ──ぶち。


 美夜の中の何かが切れた。


「……ほんっと、あんたむかつくわね!


 他の誰に女呼ばわりされてもいいけど、アンタに言われるとマジ腹立つ!!」


「知るかっ、ンなもんっ!」


 バチバチと、二人の視線に火花が散った。


『ミヤ、おちついてっ』


 そんな彼らに、リィフィンが間に入り仲裁をしようと試みる。


 ──が。


「「じゃま!」」


 の一声に怖じ気づき、リィフィンは仲裁を諦めるのだった…。



     *   *  *  *  *  *

一時ひとときの休息:web初出は多分…2003年1月?

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