そうむきむきになられても
王国制式騎士団は、第一から第十二まで存在している。
上から騎士団長、副騎士団長、騎士隊長、平の騎士が所属しており、
その下にさらに兵士がつき、平の騎士の指揮のもと行動している。
だが、騎士団に所属している者は、実は戦闘要員だけではない。
馬番や整備係、騎士団付きの文官など、直接戦闘には関わらない、
様々な役割を持つ多くの人員が存在しているのである。
同じく戦闘には直接関わらないが重要な任務をこなす者達がいる。
それが、主にドワーフが人員の多数を占めている工兵隊である。
◆
「聞いたぞロド坊!ズルいじゃねえか!」
開口一番そう言い放ったのは、工兵隊副隊長の一人。
ブレムサテルというドワーフの男である。二十八歳。
いきなり工兵隊の詰所に引っ張って来られて訳が分からない、
魔術師の少年ロドは面喰っていた。ブレムサテルとは顔見知りだ。
ブレムサテルの他にも、工兵隊のお偉方が勢ぞろいしていた。
皆不満げである。そもそも何がズルいのかさっぱりだ。
「あの、話が見えてこないんですけど…ズルいって?」
「うちの妹が魔術使えるようになってたじゃねえか!
俺達も使えるようにさせてくれよ!」
ロドの質問に対して、工兵隊の面々がそうだそうだと喚き散らす。
この場にいる彼ら彼女らは全員ドワーフである。
先日ロドは、魔術を使いたいドワーフの少女スカラから相談され、
紆余曲折の末、彼女が無意識に魔術を使用していると突き止めた。
無意識な魔術を停止するよう誘導し、覚えさせた魔術の発動に成功。
その後数回の練習を経て、彼女は簡単なものなら使用可能になった。
ブレムサテルはスカラの兄だったらしい。確かに面影が似ている。
非番の時スカラから魔術を使えるようになったと自慢されたそうだ。
そのきっかけを作ったのが自分の知人と知って我慢出来なくなり、
工兵隊のドワーフを巻き込んで詰所にロドを連れてきたらしい。
魔術へ憧れを抱いているのはスカラだけではなかったようだ。
教えてくれるまで帰さねえぞ、の大合唱を喰らい、ロドは根負け。
日を改めるからと言ってようやくむきむき達から解放された。
教えると言ってもねえ…ドワーフさん達五十名以上いるんだけど。
◆
数日後、ロドは工兵隊の詰所へ向かった。一人ではない。
今回、制式騎士団の騎士隊長八名が同行している。
騎士団の能力向上の為に、ロドは体内魔素の鍛錬法を伝授している。
縁あっても騎士団長や副団長達を連れてくるのには少々無理があり、
鍛錬法を取得している騎士隊長達を借り受ける事になった。
制式騎士団としても、工兵隊が魔術を使えるようになるならと、
鍛錬法取得の早かった者達を送り出してくれたのである。
直接戦闘に関係なくとも、出来る事の幅は広がるだろう。
十ほどの寝台が詰所に並べられ、次々下着姿のドワーフが横たわる。
「それでは、はじめますね」
ロドが宣言し、騎士が一斉にドワーフの身体へと魔素を流し込む。
「あっ」「おうおう」「んふっ」とむきむき達が微妙な声をあげる。
ロドは魔素を流しながら「ああ、ドワーフさんみんなそうなんだ」
と前回のスカラで起きた出来事を思い出していた。
この反応はドワーフ特有のもので、性別は無関係だったらしい。
普段無意識に魔術発動しているので、魔素の流れに抵抗あるようだ。
野太い喘ぎ声は、妙な性癖に目覚めた訳では決してなかった。
半日かけて工兵隊のドワーフ五十六名全員に鍛錬法と魔術を伝授。
初日はその半数強が魔術発動に成功した。大はしゃぎである。
出来なかったむきむき達の悔しがりようと言ったらもう。
まあ、今後練習を重ねれば残りの全員もモノに出来るであろう。
一仕事終えて安心していたロドだったが、
後日王国商工会の職人から同様の依頼が来て頭を抱える事になる。
職人達にもドワーフは数多い。かつ今度は手伝える者はいない。
いつまで続くんだろう、これ。
「むきむきの不向き」のその後。
ドワーフさん達のこんなネットワークもありそうだよな、と。
誰得な話でしょうが自分が書きたいのですわ。




