【知性9999】2分で崩壊する異世界転生
時は222X年。
異世界転生は娯楽として完全に定着している。
もう、死ぬ必要はない。
意識を加速し、フルダイブRPGに潜るだけでいい。
優秀なクリエイターは神として崇められ、
世界観が甘ければ、だいたい「遊ぶ価値ない」と判断される。
『どの異世界を、どこまで攻略したか』
それが現実世界の評価軸だ。
だから全員、本気で遊んでいる。
俺は数々の異世界転生を経て、富と名声を手に入れた。
もはや、歴戦のキャラメイク術には自信がある。
今から始めるのは、100年前に生まれた不朽の名作。
最難関と名高い異世界だが……
――まぁ、俺の手にかかれば楽勝に違いない。
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初期の説明は、要約すると…
・内観
・勇気
・知性
・愛情
・協調
この5つにボーナスポイントを割り振る。
割り振った数値に応じて、関連する能力値も増加し、派生スキルも獲得できる。
NPCの平均基礎値は各800。
総合値にして、概ね4000。
対して転生者は――
1 / 1 / 1 / 1 / 1 に、ボーナス9998。
総合ステータスは10003。
また、ゲーム開始後にも成長イベントがあるらしい。
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……なるほどな。
ゲーム目的すら開示しないとは、ふざけた設計だ。
バランスも、転生者が安易に無双するようにはなっていない。
むしろ、この平均800という数値。
これはつまり――
転生者並みの個体が、NPCとして混在しているということだ。
いいだろう。
そこまで考えてあるとはな。
「誉めてやろう。――しかし、甘いな」
まず試しに『勇気』へ割り振る。
すると主に『力』『物理攻撃』が伸びる
なれば武力を用いるバトル要素があるに違いない。
戦闘に関連する数値を伸ばすのは必須と見て間違いなかろう。
『勇気』『愛情』をそれぞれ4500まで振ると、
【「勇気」「愛情」4500の条件を確認】
【派生スキル:ド根性を獲得します】
――なるほど。
やはり派生スキルこそ鍵だ。
約90%を投じて根性を得るなど、常人には思い至るまい。
詳細の説明など無くとも、高い効力を持つことに疑いは無い。
『常識的な配分』など、
このゲームでは意味をなさないのだ。
もはや大ボスは総ステータス30000程度だとすら見抜いた。
それを打倒するプランを考える遊びだな。
そして知性は『防御』『呪文攻撃』が大きく伸びた。
――ここだ。
ふふふ、知性が攻略の鍵とは。
設計の意図を完全に見抜いた。
これは――俺のための異世界だ。
迷わず知性へ極振りしていく。
【知性7000 異端を獲得】
【知性8000 孤高を獲得】
【知性9000 覚者を獲得】
うむ、順当だな。まさに俺に相応しい。
【知性9999 崩壊を獲得】
……ふっ、もはや完璧に構造を把握した。
防御極振りへのボーナスアビリティ。防御力に付随する魔法攻撃力。
なるほど、崩壊。さぞ強力な攻撃技なのだろう。
もう迷う必要はない。さぁゲームを始めよう。
崩壊を使うのが楽しみですらある。
開始場面は…成人の儀か。ベタな設定だ。
聖職者らしきNPCが告げる。
「この世界は混沌に包まれつつあります。
あなたが人々を崩壊の危機から救う、
救世主となることを祈ります。」
話が早い。ゲーム目的が開示された。
即座に9999の知性がうなりを上げる!
スキル説明など読む必要もない!
さぁ覚者よ、まずは世界の理を開示せよ。
【了】
次は世界史だ。
【了】
混沌の原因と解決策を示せ!
【了】
ふっ、計算通り。もう完璧だ。
俺の脳内には、解決までの道筋がすべて示された。
楽勝である。
俺はNPCに「まかせて下さい」と言おうとし…
【発言にシステム補正が働きます】
「この世界は既に救われています」
「おぉ、勇者よ。崩壊してしまうとは情けない」
俺は何を口にした???
聖職者NPCの発言は…何だ???
おい『覚者』ふざけんな。
イベントが何も進まないじゃないか!
行動しなきゃ意味がねぇだろ!
【勇気1 行動は実行できません】
誰のための知性だと思ってんだ!
【協調1 他人のためは理由になりません】
愛すべき人は――
【愛情1 愛を感じる事は出来ません】
おい、いい加減にしろ、このゲームは何なんだ!?
【内観1 自我を保つことが出来ません】
自我を崩壊させんなぁぁぁ!!!
――理解は、できた。
だから、何もできなかった。
【降参、する?】
当たり前だ!!!!!!
【だよなwwwwwwwwwww】
ざっけんなこの野郎!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
【覚者の知識はボッシュートするよ】
【またね☆】
二度とやらねぇぇぇぇぇ!!!!!
……しかし、
結果として俺は、この世界にドはまりした。
正解なんてどこにもなかった。
それが一番――面白い。




