表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/43

第42話 それでも回る

朝。

詰所の扉は、いつも通りに開いた。

「警察を呼んでくれ」

その言葉に、誰も佐津野を探さなかった。

* * *

小さな盗難。

証言の食い違い。

感情のもつれ。

若い警察官が、基準を開く。

ミーアが、記録を取る。

セリーナは、壁際で腕を組んで見ている。

「……どう判断する?」

問いは、佐津野に向けられていない。

現場に向けられている。

「証拠不十分」

「注意と記録」

「再発時は前例参照」

決定。

声は揃っていない。

だが、止まらない。

* * *

昼。

別件。

軽い衝突。

以前なら、

「佐津野を呼べ」

と言われていた。

今日は違う。

「警察を呼べ」

名前ではない。

制度だ。

* * *

詰所の隅で、佐津野はそれを聞いていた。

呼ばれない。

指示も求められない。

少しだけ、胸が空く。

寂しさにも似た感覚。

「……手出し、しませんか」

ミーアが、小声で問う。

「しません」

佐津野は答える。

「回っているなら、

触らない方がいい」

* * *

夕方。

報告が並ぶ。

判断の揺れ。

小さな誤差。

だが、すべて基準内。

「……完璧じゃないですね」

若い警察官が言う。

「完璧は、

個人にしか作れません」

佐津野は、穏やかに言った。

「組織は、

揺れながら進むものです」

* * *

セリーナが、静かに笑う。

「あなた、

暇になったわね」

「はい」

少しだけ、間を置く。

「良いことです」

* * *

夜。

詰所の灯りが落ちる前。

壁の組織図を、佐津野は見上げる。

自分の名前は、まだ中央にある。

だが――

中心ではない。

「……それでも」

ミーアが呟く。

「回りますね」

「はい」

佐津野は、ゆっくり頷いた。

「私がいなくても、

警察は回る」

それは、敗北ではない。

完成へ向かう、最後の確認だった。

窓の外。

誰かが言う。

「警察を呼んでくれ」

名前は、出ない。

それでいい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ