表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/43

第25話 初の正式逮捕

朝。


王都の鐘が、

いつもより重く鳴った気がした。


* * *


「――条件は、揃いました」


警察詰所。

机の上には、積み上がった記録。


証言。

動線。

資金。

暴行の事実。


佐津野圭は、最後の紙に目を通し、

静かにペンを置いた。


「本日付で――」


一呼吸。


「正式逮捕を行います」


室内に、

短い緊張が走る。


* * *


「……ついにですね」


ミーアが、

少しだけ声を震わせる。


「はい」


佐津野は、

頷いた。


「これは、

警察としての初仕事です」


「英雄行為ではありません」


「見せしめでもありません」


「ただの、

手続きです」


* * *


騎士団詰所。


セリーナ・エルフェルトが、

鎧を整えながら言う。


「立会い、

確認した」


「武力行使は?」


「不要です」


佐津野は、

はっきり答えた。


「抵抗があれば、

その時にお願いします」


「……相変わらずね」


「はい」


* * *


倉庫三区・南端。


朝靄の中。


「……来たぞ」


用心棒の一人が、

呟いた。


逃げない。

隠れない。


逃げ道は、

もう無い。


* * *


「警察です」


佐津野の声は、

大きくなかった。


だが、

はっきりしていた。


「あなたを、

傷害・違法取引関与の容疑で、

逮捕します」


男が、

苦く笑った。


「……ようやくか」


「はい」


佐津野は、

頷く。


「今日です」


* * *


手錠が、

静かに嵌められる。


剣は抜かれない。

叫び声もない。


周囲の人々が、

息を詰めて見守る。


「……説明は?」


「します」


佐津野は、

一枚の紙を差し出した。


「容疑内容」

「理由」

「今後の手続き」


「質問は、

後で受けます」


男は、

紙を見て――

小さく息を吐いた。


「……ちゃんとしてんな」


* * *


移送中。


「……怖くないのか」


男が、

ぽつりと言う。


「何が?」


「恨みだ」


「あります」


佐津野は、

否定しない。


「でも――」


視線を、

前に向けたまま言う。


「恨みで、

判断は変えません」


* * *


詰所。


記録板に、

新しい札が掛けられる。


――正式逮捕 第一号


ミーアが、

小さく呟く。


「……本当に、

始まりましたね」


「ええ」


佐津野は、

帳簿に書き込む。


時刻。

場所。

理由。


「逮捕は、

終わりではありません」


「ここからが、

仕事です」


* * *


夕方。


市民の噂が、

静かに広がる。


「捕まったらしい」

「警察が、

本当に捕まえた」


派手さはない。

だが、確かだ。


* * *


夜。


詰所の灯りは、

今日も消えない。


佐津野は、

最後に一文を書いた。


――感情を挟まず、

手続きを完遂


ペンを置き、

静かに息を吐く。


剣も、魔法もない。

だが――


初の正式逮捕は、

この世界に

“逃げられない現実”を

刻み込んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ