表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/43

第10話 王国の危機、警察官が救う

「――王都が、封鎖された」


その一言で、詰所の空気が凍りついた。


「魔法陣が暴走。

城門が閉ざされ、市場が混乱している」


報せを持ってきたのは、騎士団の伝令だった。

顔色は悪く、汗が鎧の内側を濡らしている。


「原因は?」


佐津野圭は、即座に問い返した。


「不明。

城内の結界が反応し、

“敵性魔力”を検知したらしい」


(敵性、ね……)


「つまり、

誰かが“敵だと判定された”」


セリーナ・エルフェルトが、歯を食いしばる。


「騎士団は、

反乱を疑っている」


「……最悪だ」


佐津野は、机に広げた地図を見下ろした。


「結界は、

“意図”じゃなく“条件”で動くはずです」


「ええ。

王都防衛用の古代魔法」


「なら――

誤作動の可能性が高い」


* * *


王都外縁。

閉ざされた城門の前には、人だかりができていた。


「開けろ!」


「中に家族がいるんだ!」


騎士たちは剣を抜き、

市民と対峙している。


「このままだと、

流血になります」


セリーナが、低く言う。


「させません」


佐津野は、一歩前に出た。


「騎士団長に、

五分ください」


「何をする気だ?」


「――原因を特定します」


* * *


城門脇の結界制御室。

魔法陣が、赤く脈動している。


「魔術師は?」


「全員、

“敵性反応”で排除された」


「……つまり、

今この場に近づけるのは」


佐津野は、自分を指した。


「魔力を持たない、

一般人だけ」


セリーナの目が、見開かれる。


「あなた……」


「警察官ですから」


制御室に入ると、

魔法陣の一部が、歪んでいた。


「ここだ」


佐津野は、指差す。


「“犯罪魔力”を検知する補助式が、

過剰に反応している」


「犯罪魔力?」


「魔法犯罪事件で、

後付けされた式ですね」


(皮肉だな……)


「犯罪を防ぐための仕組みが、

街を壊そうとしている」


佐津野は、魔法陣の前に立った。


「止めるには?」


「敵性判定を、

一時的に解除するしかない」


「解除条件は?」


セリーナが、唾を飲み込む。


「……“責任者の承認”」


「つまり」


佐津野は、静かに言った。


「誰か一人が、

すべての責任を引き受ける」


沈黙。


「私がやる」


セリーナが、前に出る。


「騎士団副隊長として――」


「ダメです」


佐津野は、首を振った。


「あなたは、

剣を持つ側だ」


そして、一歩踏み出す。


「だから――

俺がやります」


「佐津野!」


「警察官は、

失敗の責任を取る職業です」


手錠を、魔法陣の中心に置く。


「犯罪防止補助式、

一時停止」


魔法陣が、強く光る。


「承認者、

名を」


佐津野は、はっきりと言った。


「佐津野圭。

異世界警察、責任者」


光が、収束する。


* * *


――城門が、開いた。


歓声。

泣き声。

怒号が、安堵に変わっていく。


騎士団長が、佐津野の前に立った。


「……なぜ、

お前がそこまで背負う」


佐津野は、疲れた笑みを浮かべた。


「王国の危機ってやつは、

だいたい“誰かの判断不足”から始まります」


「なら」


「同じ失敗を、

記録して、二度と起こさない」


それが――


「警察の仕事です」


セリーナは、空を見上げた。


「……剣じゃ、

救えない日もある」


夕暮れの王都に、

鐘が鳴り響く。


この日、王国を救ったのは、

英雄でも、勇者でもない。


一人の警察官と、

“責任を引き受ける”という行為だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ