表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

オルゴール・オンライン

「『オルゴール・オンライン』?何これ?」


弟のVRゲーム機を物色していた音々(ねね)は、奇妙なタイトルに思わず声を上げた。

リストのひとつ上は『オウンゴール・オンライン』、下は『オレオレ・オンライン』。その中では一番まともだ。


「音ゲーかな……?」


音楽家の両親を持つ音々は、幼い頃から高校生の今まで、多くの楽器を習わされたが、どれも長続きしなかった。

絶対音感を得たがために、自分の演奏のズレすら気持ち悪くなるのだ。


けれど、音の外れないオルゴールは好きだった。


少し迷った末、お試しプレイを選択。VRギアを被って横になると、アバターが七色の光の輪を抜け――

中世西洋風の街の広場に降り立つ。


「ようこそ、オルゴール・オンラインへ!ナビAIのピコでーす!」


ウサ耳で透明な羽根を揺らす小妖精が宙に浮かぶ。

音々の格好は革鎧装備、腰には短い杖と白い小箱。


「本作はオルゴールバトルRPGです!」

「何それ」


「相手のオルゴールを聴きながらタイミングよく杖を振り、得点の高い方が勝ちでーす!」


そこへ少年が駆け寄り、黒い箱を掲げる。


「お姉さん、勝負だ!」

「いいわ、受けて立つ!」


「【聖者の行進vs猫踏んじゃった】バトル開始!」


音と光が流れ、音々は杖を振る。音が外れない――それだけで胸が軽くなる。


(なるほど、カードバトルみたいな感じか。難しい曲ほど強いってことね)


「勝者、ネネさん!95点!」


少年は「すげー!」と目を丸くして笑った。


次は金ピカ鎧の男が金の箱を突きつける。

「小娘!オレ様とも勝負しろ!」


「初心者狩りです!」とピコが警告するが、音々は首を振った。「受けるわ。楽しくなってきたし」


「【革命のエチュードvs猫踏んじゃった】バトル開始!」


観客がざわつく。難易度差は歴然。しかし、音々の心には火がついていた。


音が、光が、世界を満たす。意識は音だけに向かい――

「キンキングさん98点!」


最後の一音が空に溶ける。


「ネネさんも演奏終了!99点!勝者ネネさん!」


大歓声。少年が無邪気に抱きついてくる。


(……そっか。私、まだ音楽が嫌いになったわけじゃなかったんだ)


ログアウトしたら――

(ピアノ、弾いてみよう。今なら、少しは好きになれる気がする)


音々の心に、小さなオルゴールの音が、そっと鳴り始めた。



お読みいただきありがとうございました!


今回はオルゴールがテーマのゆるいVR短編でしたが、

普段はもうちょっと騒がしい長編

『デスゲームに巻き込まれたのでマジチートしてイイですか?』

(マジチー)を連載しています。


バグ技、名古屋弁、ラーメンなど色々入り混じった

にぎやかVR冒険ものです。

よかったらこちらもどうぞ!

マジチー本編:

https://ncode.syosetu.com/n4658kt/


【ランキング入りのご報告とお礼】


VRゲーム〔SF〕日間(短編)3位をはじめ、いくつかのランキングに

入ることができました。

ポイントを入れてくださった皆さま、

読んでくださった皆さま、本当にありがとうございます!


本作は「第7回 下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ大賞」

の応募作品ということもあり、

続きがあるとしたら締め切り後になりますが……


それでも音々やピコのその後を読んでみたい、という声があれば、

別エピソードを描いてみるのも楽しそうだな、と感じています。

1000文字縛りはちょっと駆け足になりすぎましたので……。


引き続きどうぞよろしくお願いいたします!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ