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第5話 礼拝堂の鐘

たいっへん、遅れてすみません。


「なるほど、そんなことが」

アルスはこめかみを押さえてそう言った。

「確かに七天羽2人が触った物には天界の紋章が浮かんでしまいますね。これは失態でした」

教会の皆さんに帰る家がないならシスター見習いとしてこの教会に住みなさい、と屋根裏部屋を渡されたところだったエルの元をアルスが窓から訪ねてきた。

ココアを、ずずっと吸ってエルはなかなかココアに手を出さないアルスに尋ねた。

「ココア、美味しいですよ?」

アルスは顔をしかめて「私は猫舌なのですよ」とこたえつつ、ココアを冷まそうと息をふきかけた。

「ところで、何故私をここに送ったんですか?」

エルはずっとそこを疑問に思っていた。

(こんな優しい教会、問題じゃないと思うのですが。コートは盗まれたけれど、あれは教会のためを思っての犯行でしたし)

「……あなたには、まだ早いですよ。チビ」

そう言ってアルスさんは窓の外を物憂げに見つめた。

「そう、ですか……」

もう百五歳のエルはチビではないのだが。見た目は天使になった当時のまま。ため息をひとつ吐いて、ココアを飲み干した。


アルスが窓から去って1時間ほどたった頃。

屋根裏の窓を叩くように、風が鳴った。

エルは寒さを防ぐために毛布を頭までかぶった。そこでとある異変に気付いた。……礼拝堂の鐘が、夜中に鳴っているということに。

基本的に礼拝堂の鐘は夜には神の眠りを邪魔するとして鳴らさないはずなのだが……。

(何が……起きているのです?)

エルは、小さく呪文を呟いた。

「《幻変化》」

そう言うと、すーっとエルの体が透けていった。

エルはそうっと足音を殺し、階段を下りる。冷たい空気の中、開け放たれた礼拝堂の扉の向こうで、ロウが祈っていた。

エルは素早く術を解除した。

「まだ起きていたんですか?」

エルが声をかけると、ロウは振り向いた。

「この鐘、たまに勝手に鳴るんだよ。神様が怒ってるって、みんな怖がって……」

「怒ってませんよ、私は幻の天使です。神とも何度か会ったことがありますし。」

それに、とエルは小さく付け加えた。

「神様は、こんな時間まで祈る人を怒ったりしません」

ロウは照れたように笑い、鐘を見上げた。

「エルはオレのことを、また何かするかもしれない要注意人物だとか思わないのか?」

「そう……ですね。」

答えられず、エルは鐘の影に目を落とした。

そして、エルは小さく拳を握りしめると

「そんなことしようものなら、幻の天使が成敗しますっ!」

おどけてそう言った。

窓の外では、月が静かに教会を照らしていた。

(私にできることを、少しずつ。この優しい場所のために)

エルは胸の奥で、そう思った。


スーッと静かにその頃礼拝堂に近づく影があった。

しかし、ロウとエルは気づいていなかった。

これからもお願いします。

少しずつ好きになってきそうですね、この教会。

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