第4話 シャドウ教団のロウ
遅れてすみせんっ!
私の言葉に、みな絶句していた。
「それは、本当なの? ロウ」
そうスーが恐る恐る尋ねると、ロウはさらに俯いた。
「私、実は少々魔法が使えて…」
そう言って、エルは小さく呪文を唱えた。
すると、手の上にポッと火の玉ができ、みな感心したように見つめる。
「だから、信用していなかったわけではありませんが、着替え室に誰かが入ったら分かる結界を張っておきました」
その言葉に、ロウが小さく息を飲む。
「そして、風呂から上がるとコートがありませんでした」
エルは息を吸い、続ける。
「なので、結界を確認したところ――ロウさんが入ったとわかりました」
その推理に、ロウは小さく笑った。
「その通りだよ。大正解」
スーは青ざめ、悲しげな表情を浮かべた。
周りのみなも、同じく悲しげに見つめている。
「ロウさん、少しついてきてください」
エルはロウの手を取り、食堂の裏へ歩き出した。
「あなたは、シャドー教団の一員ですね?」
その問いに、ロウは小さく頷く。
「なぁ、俺から1つ質問だ」
エルはピタリと足を止め、目を細めて訊いた。
「何です?」
「お前こそ、何なんだ」
「天界の紋章のついたコートなんか、なんで…」
言葉に詰まるエル。
天界の紋章――それは、天使に選ばれた者だけが持つ紋章の名だ。
七天羽が魔法で作った物を、国内最強と称される聖女が使えば、その紋章は永遠に残る。
しかし、そんなことは滅多にない。
そして、貴重な紋章を狙う者が存在する――シャドー教団だ。
「しかも、そのコートは新しいじゃねぇか」
その言葉に、エルは何も答えない。
「つまり、お前は七天羽にコート作りを頼める、あるいは作れる存在なんだろ?
そして、国内最強聖女ほどの力を持つ――」
ロウは一息置いた。
「そうだろ? 七天羽の内の1人――幻の天使」
その単語に、エルの瞳が冷たく光る。
「そうよ、私は幻の天使エル」
その言葉に、ロウは小さく笑ったが、動作はぎこちない。
「俺を消すか?」
「消しはしない」
「なら、どうする?」
「あなたが、シャドー教団に入った理由は?」
「ハンっ、話を逸らすな」
そう言うロウに、エルは鋭く催促した。
「いいから話して」
「まぁいい。紋章を手に入れて、大金を貰い、教会のみんなにあげるためだよ」
投げやりに言うロウに、エルは「ふーん」と小さく呟いた。
「私が望むのは――取引です」
その言葉に、ロウは目を細めた。
「取引?」
「ええ。私が“幻の天使”の地位を使い、この教会を支援します。
その代わり、あなたには……この教会に残ってもらいたいのです」
ロウは目を大きく見開き、信じられないといった顔をした。
「いいのか? そんな条件、俺に利がありすぎじゃないか?」
エルは軽く肩をすくめる。
「えぇ。私の気が変わらないうちに、答えたほうがいいと思うけど?」
その一言に、ロウははっとして息を吸い込んだ。
「……ロウ・ルーメーン。幻の天使に、忠誠を誓います」
「忠誠なんて、そんな重い言葉いらないよ」
エルはふわりと笑い、手を振った。
「ただ、これからは一緒に頑張ろ?」
ロウは小さく笑い返した。
「……あぁ、わかった」
「じゃ、みんなのもとに戻ろうか」
そう言って、2人は静かに食堂へ戻っていった。
食堂に戻ると、スーたちはまだざわついていた。
ロウの姿を見て、誰もが息をのむ。
「……どうだったの?」と、スー。
エルはにっこり微笑んだ。
「誤解は解けました。ロウは、これから私の友達です」
その瞬間、空気が変わった。
安堵と、わずかな戸惑いが混ざりあう中――
エルは、窓の外にふと視線をやった。
(……この教会、“本当に”平和なのかな)
夜の外には、黒い影が一瞬だけ横切った。
その存在に気づいたのは、エルだけだった。
次回、来訪者。
状況聞きにきたアルスですが。
まぁ、窓から侵入する危険人物ですので。
ある意味、暗殺者より怖いです。
夜の闇に現れる男……ひぇっ。




