第2話 教会の者に有るまじき行為
いつも読んでくださりありがとうございます。
「スー、大変だ!」
日が沈み始めた頃。
教会に、少年の叫び声が響いた。
慌てて姿を見せたのは、まだ十八歳ほどの少女スー。
彼女は息を切らしながら、声の主であるロウに問いかけた。
「どうしたの?」
「ここに、子供が倒れてる!」
ロウがいるところを見ると、
そこには上等なコートを着た10歳ほどの少女が、倒れていた。
指先は、寒さで赤くなり、今にも凍えてしまいそうだ。
「このままじゃ、死んでしまうわ……!」
スーは少女をそっと抱き上げた。
その身体は冷たく、まるで命の灯が消えかけているようだった。
「この子、こんなに冷たくなって…」
悲しげにそう呟くと、スーは少女を教会の奥へと運んでいった。
ロウも、黙ってその背を追った。
こうして、エルは無事に保護されたのだった。
教会の中は、慌ただしく人々が走り回っていた。
「ロウ、お風呂を掃除してお湯をはって!」
「タオルと子ども用の服を探してきて!」
「温かいご飯を準備して!」
その中心にいるのは、もちろん——可哀想な少女、エル。
(ここ、本当に“ヤバい場所”なんでしょうか……?)
アルスの言葉を思い出し、目の前の人々の優しさに、エルは少しずつ疑いを抱きはじめていた。
「みなっ……くしゅ……しゃん、ありがとう御座いまふ」
鼻をすするエルに、スーはふわりと微笑んだ。
「いいのよ。気にしないで」
その笑顔はまるで、天使そのものだった。
(ほんっとうに、ここはヤバい場所なんでしょうか?)
「ほら、お湯が湧いたわよ」
スーに案内され、エル扉を開け、中に入った。
そこには、ロッカーがずらりと並び、湯気が漂っていた。
「ここで服を脱いで、お風呂に入ってね。じゃあ、私は行くから」
そう言い残し、スーは去っていった。
エルはもぞもぞと、衣服を脱ぎ、丁寧にたたんでロッカーへしまった。
エルは、最後に小さくつぶやくと扉を開けた。
開けると、むわぁっと温かい空気が顔にあたった。
心も体もじんわり溶けていくようだった。
シャンプーで髪を洗い、体を流し、湯船にそっと浸かる。
あたたかいお湯が、冷えきった身体を包みこんだ。
(もぉ……この教会、評価☆5でいいんじゃないでしょうか?)
湯気の中でそんなことを思いながら、エルは目を細める。
そして、五分ほどして湯から上がると、シャツとズボンを身につけた。
しかし、1番高級なのがどこにも、ない。
ロッカーの中をもう一度開けても、やはり見当たらない。
エルの目が、すっと細くなった。
「……ほぉ。」
ワンオクターブさがった声で、エルはそう呟いた。
どうやら——盗まれたらしい。
アルスから貰ったコートが。
神を祀る教会の者に、有るまじき行為。
エルは、胸の奥で小さくため息をついた。
(アルスさん、こういうことですか?)
その顔からは、幼さが消えていた。
「みなさん、本当にありがとうございます」
エルは、にっこりと笑って教会のみんなにお礼を言った。
「いいのよ。神様を信仰する者として当然の行いをしたまでよ」
スーは、ふわりと微笑んだ。
今は、みんなで夜ご飯の時間。
長いテーブルを囲み、あたたかな灯りの下で食事をしている。
この教会には、およそ三十人ほどの人々が暮らしているらしい。
エルは湯気の立つ味噌汁をすすりながら、
「それでも、ありがたいでふ。あそこで死んでいたかもしれないんですから」
と、笑顔を見せた。
(……まぁ、実際には死にはしないけど。風邪はひいてたかも)
そんなことを心の中で呟いていると、向かいのロウが口を開いた。
「そうだ、お前。名前は?」
「えっ、えっと……エルっていいますっ!」
エルは突然の質問に咄嗟に、本当の名前を名乗ってしまった。
「へぇ、幻の天使と同じ名前だな」
ロウの何気ない言葉に、エルはびくりと肩を震わせた。
「そ、そそ、そうですね……!」と、慌てて頷いた。
だが、エルの笑顔の裏では別の思考が渦巻いていた。
「……こんなにしてもらって言うのはアレなんですが―」
指先で髪をいじりながら、エルはそっと切り出す。
その表情を見て、スーが「なぁに?」と首を傾げた。
「――私のコート、盗みましたよね? ロウさん」
エルの声はやわらかい。
けれど、その瞳だけが鋭く光った。
視線の先、ロウがぴくりと反応した。
ロウの反応、怪しいですね……。
しかし、エルは何故わかったのでしょうか?
一文引っかかる点はありませんでしたか?
(もう一度読ませようとする悪い人)
次回は、エルの推理方法解説です。
しかし、盗みだけでヤバい教会とアルスが言うでしょうか?
まだまだ裏がありそうです。
(いや、今のは完全にネタバレだろ)
次回も、よろしくお願いします。




