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第4話


 ――あれから四年が経った。


 当時はあの子――子猫を抱えていた女の子――のブラジャーの色が頭から片時かたときも離れなかった。 


 あの子のブラジャーの柄が鮮明に脳裏に焼きついていた。


 そのせいで、その日の夜は一睡もできなかった。


 責任、取ってよ。


「ヘンタイ」と言われ、ビンタされた。拒絶された。その時の彼女の顔は林檎のように赤かった。

 でも、その拒絶が癖になってしまった。


 もっとわたしを罵ってほしい。


 あの子に「嫌い」と言われたい。


 そしたらわたしは「好き」と返すから。


 わたしの声しか聞こえないようにさせたい。


 あの子を襲いたい。犯したい。ブラジャー見せてくれたなら、下の下着も見てみたい。


 って、わたしったら単純すぎる。


 たかが女のブラジャーを見たくらいでこんなにも取り乱してしまうなんて。


 でも全部、あの子が悪い。

 本当に責任取ってほしい。


 道であの子を見かける度にあの日の光景がフラッシュバックしてしまうのだから。



 帰り道をストーキングして辿り着いたのは古くさいアパートだった。どうやら、あの子は一人暮らししてるらしい。

 表札には『黒崎』と書いてあった。


 ふーん。黒崎さんっていうんだ……。


 一人暮らしなら、部屋に侵入さえできれば簡単に襲えるよね?



 黒崎さんは通学路でよく猫と戯れていた。

 猫よりかわいい、猫に似た声を出していた。


 嗚呼、黒崎さんに抱かれてる猫になりたい。猫みたいにわたしを可愛がってほしい。黒崎さんのネコになりたい。


 どうせ、あの子はわたしのことなんて忘れてる。


 わたしも黒崎さんの顔も声もはっきりと認識できなかった。いつも見て、聞いているはずなのに。遠くから観察してるせいかもしれないけど。

 否、初めて出会った日がインパクトあり過ぎるのがいけないんだ。


 でも好きな子の顔と声が思い出せない。それはとてもつらかった。


 四年前のあの雨の日の照れた彼女の顔が未だに思い出せない。


 「ヘンタイ!」と言った、彼女のあの声や声色も思い出せない。


 黒崎さんのブラジャーにしかわたしの意識がいかなかった。


 彼女が好きなのに、関わりたいのにいま一歩踏み出せない。


 そんな自分が嫌だった。


 だから、わたしは無自覚でストーカー行為をするようになった。


 正面から関われないなら、遠回りでもいい。


 わたしをこんなふうにさせた責任取ってほしい。


 あの子――黒崎さんの裸を見るまでは、わたし、死ねない。





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