第2話
玄関のドアノブにアイスがひっかかっていた。
こんなことって、ありますか?
わたし、病人だったのかな……。それで心配して、友達が玄関先までお見舞いに来てくれた……?
いえ、わたしは真実を知っています。
これはストーカーさんの仕業です。
ストーカーって優しいんだか、卑劣なのか分からない。どっちかに傾いてほしいけど、傾いてくれない。
そしてわたしのストーカーは異性じゃない。
同性に好かれるなんて、人生で初めてだ。
だからといって、わたしは同性が好きなわけでもない。
はぁ。ガチャガチャガチャガチャ、煩かったな。
そんな考え事は一旦置いといて。
問題はアイスだ。
きっと嫌がらせのつもりなんだろうけど、アイス好きのわたしにとってはご褒美だった。しかも中身は特に好きなストロベリーアイス。
でも、ちょっと不安だった。
わたしは浮かれて調子に乗りませんからね。警戒心は簡単に捨てません。
なにか悪いもの――毒とか、睡眠薬とか、媚薬……とかが入ってないか、確かめないと。食べれない。
友達呼ぶ、か。
でも当たっちゃったら、友達かわいそう。
わたしは複数の友達に連絡して、家に呼び寄せた。
「どしたの? 紗香」
「玄関のドアノブにサーティワンのアイスが入った袋がかかってたの」
「どういう状況?」
「自演はやばいよ。つまんない」
「いやいや、自演じゃなくて。わたしが好きな人が置いていったの」
「???」
「……だから、試しに食べてくれない?」
「「「無理」」」
「じゃあ、一緒に食べよ」
「い、いいよ……」
「死んだら責任取ってね」
「……」
ぱくり。
普通のサーティワンのストロベリーアイスだった。眠くもならなかったし、健康被害もなかったし、変な気分にもならなかった。
ストーカーは一体、なにがしたいんだ。