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短編集

見えない裏側

作者: 夜明碧堵

「ただいま〜」


ドアを開けると目の前に彼氏の直人がいた。

勢いよく彼女春の腕を引っ張り部屋の中へ入らせて、ドアを閉める。


「なんで勝手に外に出た?」


「...」


まただ。

直人は黙っている春の肩を下へ下へ押さえつける。

直人の力が強く声が出そうになる。


ここ最近ずっと外に出ていなかった。

外に出してもらえなかった。

外に出てはいけないと、念を押されていた。


「どこにも行かないで。見捨てないで。ひとりにしないで。」


そう言って直人は膝から崩れ落ち、春に縋って、頬を濡らした。

首は傾れて、下を向いている。

顔は見えないが嗚咽だけは聞こえてくる。


「ごめん。ごめんなさい。もう外に出ない。約束する。」


そう言って春は直人の頭を撫でた。






-ある日の朝-


「それじゃあ行ってくる。深夜までには帰ってくる。」


そう言って直人は春の額にキスをして家を出る。


「いってらっしゃい」


休日だが仕事があるらしい。


(どうせ深夜には帰ってこないくせに。)


そう思いながら春は家事をする。

春は家事に人一倍力を入れている。

直人は綺麗好きで、人一倍こだわりがあるからだ。

片付ける場所に気をつけないと、直人の地雷を踏んでしまう。

()()、癇癪を起こしてしまう。











-夜-


『ごめん、仕事が終わらないから、帰るのが明日の朝になる』


夜ご飯を作り終わった頃、直人から連絡があった。


(ほら、やっぱり。)


春は直人が浮気していることを密かに知っている。

でも一緒にいることを諦めない。


(好きだから別れらんないんだよ。全部ひっくるめて好きだから。そういうところが可愛いんじゃん。)


そう言ってリビングに飾ってある2人のツーショットの写真を見つめる。


(あの時は幸せだった。私に一途なところも。)








-次の日の朝-


午前10時を過ぎたが、直人は一向に帰ってこない。


春は彼の洗濯された服をしまいに行こうと、彼の部屋に入り、クローゼットを開けた。


「あー、そうだったか」


そこには呼吸をせずに眠っている彼氏がいた。

春は全て思い出してしまう。


「おやすみ。」


春はそう言い、クローゼットを閉めた。



















彼氏の直人は浮気をしていました。

浮気をしていると知りながら、彼女の春は黙って耐える日々。そんな日常に耐えられなくなり、春は直人を殺してしまいました。ある日の朝から見えているものは全て春の妄想です。しかし、この風景は直人が生きていた時に春が経験したことでした。


そんな日々を何回か繰り返したある日。春は遂に自分が隠したことを忘れていた彼の死体を見つけてしまいました。一気に現実に引き戻される。しかし、「おやすみ。」と彼は寝ていると思い込もうとします。一体彼女はこの日常を何回繰り返せば気が済むのか。











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