6/8
牡丹一華の恋
牡丹一華が風に吹かれ。
黒髪がヒラリと靡いて、目を塞ぐ。
左耳に掛けた朱色のアイデンティティー。
その飾りが、貴方を求める。
正午、風が通り過ぎる。
制服を纏う貴方は同じ香りがする。
澄んだ目と閉じた目。
冷たい風が流れ込む。
耽美的世界に連れてく貴方。
無自覚で恨めしい。
貴方の寂しそうな微笑みから逃れられない。
私は風と血の世界に生きている。
だから、朱色に惹かれる。
私の欠乏感を満たしてほしい。
不安に揺れて震える手を握る。
さめた目で見つめる。
退廃的世界に逃避する。
あなたがくれた暖かみ。
外の残酷さで冷やされる。
悴かじむ体を抱きしめて。
退廃的世界の暖に浸る。
落ちた牡丹一華。
貴方が落とした雫はどこに。
わからない、わからない、わからない。
出会いはさよならの意。
人生は、さよならに満ちている。
さようならを、牡丹一華の君に。