中秋、長雨に流るる
秋は、停滞と寂しさの季節だ。
二人の間に秋雨降るる。
部屋はいつもどおり狭いのに、ただ淋しい。
貴方はどうなの。
口数の少ないことが恨めしい。
二人だけのワンルーム。
かび臭くて嫌になる。
雨降りで憂鬱、貴方は晴れ模様。
そんな貴方に嫌気がする。
これも、あれも、全部、秋のせい。
長雨が流れ続けている。
貴方は、怒ると無口になる。
私は、斬りつけるような饒舌になる。
ジメジメと薄暗いところから飛び出す。
雨が立つの中、肩を濡らす。
後悔が、濡れて、溶けて、流るる。
寛容じゃないことを賢いと思っている貴方が嫌い。
でも、どこまでも正しい貴方に憧れる。
ああ、淋しい、悲しい、寒い、風に引き摺られる。
もとに戻ると、貴方の長くキレイな睫毛が乱れている。
もっと、悲しくなった。
ただそれだけ。
長雨が流れ続けている。
澄まし顔で、文庫に目を落としている貴方を不満に思う。
どこもいけないのに、唇に紅をさす。
そんな様子を、貴方は滑稽だと笑う。
頬にも紅がささる。
熱と朱色を貴方の唇にうつす。
その澄まし顔が崩れる。
外に、月が浮ぶ。
私は、貴方の手を取る。
名月を楽しむために、団子を買いに行く。
長雨は流れ終わった。