葉司と太狼は言う。
「「ヤケクソだ!」」
風丸、鬼丸、天狗丸は2人の行動に少し驚く。
((!))
「この野郎!」
「このぉぉぉぉ!」
葉司と太狼がそう言うと、風丸はそのまま龍蛇丸に地面に投げ付けられ、鬼丸は狼王丸に地面に殴り落とされる。
ブオン
ドガゴン
ドガゴ ゴン
狼王丸が地面に着地すると同時に、北斗は通信機能を使って葉司に言う。
「葉司君。大きい方の金属柱使って!」
「うっしゃ!」
葉司はそう返事を返すと、核の峰の部文に片足を当て、踏ん張った状態で龍蛇丸の力を使い、北斗が指示した金属柱を両手で浮び上がらせる。
かなりの重さを両手に感じたが、金属柱を浮かせ葉司がサッカーのスローインの様なモーションを取ると、金属柱は風丸や鬼丸の落ちた方へと飛んで行く。
ドガッシャーン
それを見ていた天狗丸は思う。
(今の子供の何と恐ろしい事か…… いやコレは……)
天狗丸が自分達が考えていた事と、少し違う事が起きたので驚いてると、スセリが話しかけて来る。
「アナタ達の負けです、天狗丸!」
スセリがそう言うと、天狗丸はクスクス笑う。
「アレで風丸と鬼丸を倒したつもりか?」
「いいえ、私の鎮守の結界の用意が出来たのです」
言い終わったスセリは、念話で恵理花に指示を出す。
(「恵理花、これから私の言う言葉と同じ事を言って……」)
「「我荒魂尊の比売なれば、神籬の事の葉にて布留部を鎮守る主と成らん」」
スセリの言う言葉を聞きながら、恵理花は同じ言葉を口にする。
そしてその言葉が終わると、スセリは恵理花の体で手を4回叩く。
パン
パン
パン
パン
すると、手を一度叩く毎に、破壊された結界の四隅の場所に、真っ白い大樹が出現する。
そして木の間に半透明の白い光りの壁が出来、天井が半透明の白い光りの壁に覆われ、立方体の結界が完成した。
「貴様、何をした! 身体と力が……」
そう言った天狗丸にスセリは言い返す。
「鎮守と言ったでしょう。アナタ達の力は今鎮られている、そしてアナタ達はこの結界からは出られない」
「ちっ…… 風丸、鬼丸!」
ガドン
ゴロゴロ
天狗丸がそう言って風丸と鬼丸の方に視線を向けた後、風丸と鬼丸は金属柱を放り投げ地面の下から現れた。
「この程度の障害、此奴等相手には丁度良い」
鬼丸がそう言うと、風丸はクスクス笑って続ける。
「この状態で言えた義理では無いな。まぁ、俺もその言葉には賛同するが」
風丸はそう言いながら浮かび上がると、龍蛇丸の目の前に移動し、鬼丸は狼王丸に目を向けた。
「戦闘馬鹿共には付き合ってられん……」
天狗丸はそう言い、ヤレヤレといったポーズを取った後、恵理花の方に錫杖を突き付け続ける。
「とは言え、如何せ逃げられんのだろうしやるしかないが」
一方、葉司、北斗、太耀の三人は、通信機能を使って何やら作戦会議を行っていた。
「まず僕が天狗を倒す。2人共、他の奴の動きを止めてくれ」
太耀の提案に葉司が聞く。
「何か良い手があんのかよ?」
「任せてくれ」
そう言い返す太耀は思う。
(僕の考えが正しいなら)
太耀は恵理花に言う。
「スセリ、思いっ切り逃げろ!」
皆にも聞こえる声で太耀がそう言ったのを合図に、その場に居る全員が動き出す。
スセリが恵理花の体を急いでその場から離すと、天狗丸以外に風丸と鬼丸も、恵理花に目標を決め追って来た。
ガコン
ガコン
ガコン
だが龍蛇丸が風丸を、狼王丸が鬼丸に攻撃を仕掛け、追跡の邪魔をする。
天狗丸は言う。
「その小娘の意識さえ奪えば、結界は……!」
「鳳皇丸、天狗丸を地面に押さえ付けろ!」
恵理花に迫り来る天狗丸は、太耀の声で視線を鳳皇丸に向ける。
すると鳳皇丸は天狗丸より高い高度で飛んでおり、天狗丸目掛け突っ込んて来た。
ドッシャ
「ぬぉぉ!」
天狗丸は両手で錫杖を持ち、鳳皇丸の攻撃を受け止める。
しかし鳳皇丸の爪は確実に天狗丸を捕らえ、地面に押さえ付けた。
ズガゴン
「くっ、放さんか!」
暴れようとする天狗丸と、10数メートル先に居る恵理花に太耀は言う。
「やっぱりお前、アイツ等より力が無いな…… スセリ、危ないから離れてろ!」
「貴様、何をする気だ!」
そう言った天狗丸を無視し、恵理花が50メートル程離れている事を確認した太耀は、鳳皇丸に命令を下す。
「こうしておけば他人に被害が出る事は無い。鳳皇丸、鉄を溶かす位の熱エネルギーを、天狗丸を抑えている自分の爪に!」
すると鳳皇丸の、天狗丸を抑えている爪が金色に輝きだし、天狗丸は悲鳴を上げる。
「ぬっわぁぁぁ!」
そして思う。
(確かにコレなら熱エネルギーでの被害は出んな、潮時か……)
「アラハバキ様!」
ガツン
天狗丸がそう大声で叫ぶと、鳳皇丸の天狗丸を抑さえていた爪が地面に着いた。
叫び声を聞いた風丸と鬼丸は、鳳皇丸の方を向いて言う。
「「天狗丸!」」
太耀は鳳皇丸に命令する。
「少しその場から離れろ、鳳皇丸」
鳳皇丸が、太耀の命令通りその場から少し離れると、其所には天狗丸の姿は無く、在るのは焦げた地面だけだった。
太耀は思う。
(……やった)
そして嬉しそうに叫び声を上げる。
「やった、やったんだ。天狗丸を倒したんだ!」
風丸と鬼丸はその声を聞き、鳳皇丸の方に顔を向け驚いた様に言う。
「……そんな馬鹿な!」
「天狗丸がやられるなど……」
そんな風丸と鬼丸に、龍蛇丸と狼王丸が突っ込んで来る。
ガコン
ガコン
ガコン
それに気付いた風丸と鬼丸が攻撃を躱すと、葉司と北斗は視界と意識を風丸と鬼丸に向けたまま、太耀に合流した。
「やったじゃん太耀!」
「太耀君、凄い!」
通信機能で葉司と北斗に褒められ、満更でもない顔をした太耀は自信満々に言う。
「僕にかかれば当然さ。さぁ3対2だ、このままの――」
「待った。アイツ等は俺と北斗で倒してやる!」
そう言って太耀の言葉を遮った葉司に、北斗は驚き葉司に言い返す。
「無茶言わないでよ!」
「出来る。太耀も言っただろう、太耀に出来て俺達に出来ない訳がねぇじゃん。行くぞ!」
「ちょと、葉司君!」
葉司は北斗の静止も聞かず、龍蛇丸で風丸に突っ込んで行き、北斗は狼王丸でそれを追う。
ガコン
ガコン
ガコン
(そんな事……)
悩む北斗の眼前に、鬼丸が迫って来る。
(……今は迷っちゃダメだ!)
鬼丸が小槌を振り上げ、攻撃体勢に入ると、北斗は気持ちを切り替え、鬼丸の目の前に大きな金属の壁を出現させた。
「俺の前に壁など!」
ガゴ
ガゴ
ガゴ
ドシャン
そう言いながら、金属の壁を小槌で破壊した鬼丸だったが、壁の向こうに狼王丸の姿は無い。
(……!)
それと同時に、鬼丸は背後からの影に気付く。
影の正体は、50メートル程の金属柱。
その上に狼王丸が居る。
「狼王丸、右前足に鋼の爪を!」
狼王丸の姿を確認した鬼丸は、北斗のその言葉に行動を察し、小槌で受け止める体勢を取った。
(ほぉう、高度から切り付けるつもりか。当たるかは別として、言葉に出した心を避けるのも無粋だな……)
鬼丸がそう考えていると、北斗が言う。
「行くぞ鬼丸!」
北斗がそう叫び終わると、狼王丸が金属柱から飛び降りる。
鋼の爪は鬼丸を捉えた。
ガシャン
小槌で狼王丸の攻撃を受け止めた鬼丸は思う。
(フフフ、まさか本当に彼処から俺を捉えるとは。これぞ正に鬼の力か、……そろそろ)
ミシ
ミシ
グシャン
鬼丸の小槌は罅が入り砕け散り、狼王丸の攻撃が鬼丸本体へ届く。
「ぐわぁぁぁ!」
悲鳴と共に鬼丸はそのまま消え去った。
ガゴン ゴン
狼王丸が地面に着地すると、北斗は嬉しそうに言う。
「やったぁ、やったんだ!」
「北斗、凄いじゃないか!」
太耀が通信機能で北斗にそう賛辞を送り、北斗は満面の笑みで頷き答える。
「うん」
「後は葉司、お前だけだ。自分で言い出したんだ、出来るよな?」
からかい半分、通信機能を使って太耀が葉司にそう言うと、葉司はムッとしながら言い返す。
「当たり前だ!」
龍蛇丸は風丸と取っ組み合っている。
「俺だけ、格好悪い所見せられるかよ!」
そう言った葉司だが、風丸への攻撃が上手く行かない。
風丸を地面に叩き付けようとして、逆に龍蛇丸は10メートル程投げ飛ばされる。
更に風丸は、龍蛇丸から20メートル程距離を取った。
(後は俺だけか……)
風丸がそう考えている一方で、葉司は悩む。
(どうすればアイツを倒おせる? このまま突っ込んで行くだけじゃ……)
少しずつ近付いて来る風丸に、葉司は覚悟を決める。
(押してダメなら…… 更に押してやる!)
葉司は核から手を離し、龍蛇丸に言う。
「龍蛇丸、風丸に突っ込め!」
「キュゥゥー」
すると龍蛇丸は鳴く。
そして動き出す龍蛇丸だったが、それと同時に葉司の体を強い風が吹き荒ぶ。
葉司は咄嗟に核の剣の柄を両手で掴かみ、体をその場に固定した。
(うわっ!)
ズバコーン
龍蛇丸は葉司の言葉通り風丸に突っ込み、そして風丸を吹き飛ばす。
吹き飛ばされながら、風丸は考える。
(龍蛇丸の力が上がったか? いや力の制御を龍蛇丸に委ねただけか。まぁ最初ならこんなもんだろう)
一方葉司の方は、荒く息を吐きながら風丸の姿を探していた。
「ハァ、ハァ、ハァ……」
葉司は自分の心臓の鼓動を感じながら思う。
(思い付きで、何でもやるもんじゃ……――)
そんな時、通信機能から北斗の声がする。
「葉司君、左後ろ!」
北斗の声で、葉司が龍蛇丸の視界を言われた方に向けると、風丸が自分に襲い掛かろうと向かって来ていた。
「うぉぉぉぉ!」
叫びながらの風丸の攻撃を、龍蛇丸の尻尾で受け止めた葉司が見たモノは、無数に罅の入た風丸の腕。
龍蛇丸の尻尾を掴んでいた風丸の腕は、次第に石化しながら砕け散る。
ミシ
ミシ
パシャン
「ちっ、腕が!」
そう言った風丸はその場から離れようとするが、龍蛇丸の攻撃速度の方が速い。
「うりゃぁぁぁぁ!」
葉司はそう叫びながら、龍蛇丸の尻尾を袈裟状に風丸に叩き付ける。
その攻撃は風丸を分断した。
「がはっ!」
そう叫びながら風丸の姿は消える。
「やった……、やったぁ!」
そう言って喜ぶ葉司は、ふと異変に気付く。
(……何だ?)
突然、葉司の周りが光りに包まれたのだ。
それと同じ事が北斗、太耀の身にも起きている。
そして、鎮守の結界も同時に消滅して行く。
★★★★
気が付くと葉司、北斗、太耀、そして恵理花とスセリは、橋の下に居た紫織、薫、オモイカネの元に居た。
「どう成ってんだ?」
葉司のその問いに、元の姿に戻っていたスセリが答える。
「敵が居なくなったと判断したので、私が此方に移動させたのです。結界も臣器も元に戻してあります」
葉司、北斗、太耀の手にはそれぞれの装飾品が握られており、3人が河川敷の方に目を向けると、河川敷に在る筈の、狼王丸が作った金属柱が消えていた。
「皆さん、凄いですね」
嬉しそうな薫の言葉で、四人は勝利を再認識するが、そんな嬉しい感情を紫織の言葉が消し去る。
「嬉しいのは分かるけど、もう少し後にしておくれ。これから警察を騙くらかすんだからね」
ウイーン
ウォン
ウォン
ウォン
紫織の言葉が示す様に、通くの方からパトロールカーのサイレンの音が聞こえていた。