「たく、何だよお前等。感じわりぃな」
葉司がそう言うと、スセリが葉司に聞く。
「葉司、もしかして二人と話しをしているのかしら?」
スセリがそうに聞いて来たので、葉司は答える。
「そうだけど?」
「ねぇ悪いんだけど。貴方も含めて、三人の今の会話の状態を教えてくれない」
そうスセリに言われた葉司は、如何説明しようか悩む。
「会話の状態ったって……」
そう呟いた葉司に、太耀が聞く。
「どうしたんだ葉司?」
「スセリが会話の状態を教えて欲しいんだとさ。て言うかお前等、スセリの声聞こえねぇのかよ?」
葉司がそう言うと、太耀が葉司の言葉に答える。
「今聞こえているのは二人の声だけだ、外の奴とは離れ過ぎているし」
「ボクも同じ」
北斗がそう続けると、太耀が言う。
「そう言えばこの通信機能、スセリ不思議がってたな。北斗が戻って説明した方が良くないか?」
「だそうだぜ、スセリ?」
太耀の言葉を受けて葉司がスセリにそう言うが、スセリは困った顔をして答える。
「ごめんなさい、貴方の声しか聞こえて来ないわ」
結局、葉司、北斗、太耀はスセリに臣器に新たに出来た、通信機能が如何言うモノかきちんと説明する事を決め、スセリと共に結界の中心に集まっていた。
他の二人と連絡が取りたいと考えたら、狼王丸の内部に通信用の鏡が出来た事を北斗から聞き、葉司と太耀から通信機能の媒介が、大剣と鏡だと聞いたスセリは、謎の通信機能が何故付与されたのかを理解した。
「成程、謎の通信機能の正体が判りました」
スセリはそう言うと、葉司、北斗、太耀に説明を始める。
「多分今回のモノは、北斗が葉司や太耀と連絡を取りたいと核に願った為に出来たモノでしょう。その所為で三人の間でしか言葉のやり取りが出来ないのだと思います。狼王丸は鉱物の生成や変化、結合分解が出来、今作った通信機の様な不思議なモノも生み出す事が可能です。生きてはいない物に限りますが」
「いまいち良く分からないんだけど?」
北斗がスセリの説明に対してそう言うと、スセリは首を横に振る。
「難しい事は後で薫にでも聞いた方が良いでしょう。とにかく、生き物以外を自由に作れる力だと思ってもらって構いません」
スセリがそう言うと、北斗は首を傾げ言葉を返す。
「分かったような、分からないような?」
「それなら丁度良いから、力を使ってみましょう。皆2、3歩ぐらい下がってくれる?」
そう言ったスセリに応じて、葉司達三人は臣器を今居る場所から、少し後ろに移動させる。
ガコン
ガコン
ガコン
「葉司、下がり過ぎよ」
スセリにそう言われた葉司は言い返す。
「そんな事言っても、コイツ飛んでるから距離感が分かんねぇんだよ」
「仕方ありません、それなら其所で良いでしょう」
葉司にそう言ったスセリは、葉司達3人から確認出来て、尚且つ今まで居た場所から離れると、続けて北斗に言う。
「それじゃぁ北斗、私達の中心に金属の柱を作ってみましょうか」
「作るって、どうやって?」
北斗がスセリにそう聞き返すと、スセリは説明をする。
「自分で金属をイメージして核に念じるか、狼王丸に頼むかかしら? 初めてだから狼王丸に頼む事をお勧めするわ、見易い様に4メートルぐらいの鉄柱で如何かしら?」
「分かったよスセリ。狼王丸、ボク等の居る中心に4メートルぐらいの鉄柱を作ってくれる?」
そう答えた北斗は核に触れ、今言った事を核を通して狼王丸に命令した。
「ワオーン!」
すると狼王丸が空に向かって吼え、北斗達の目の前に、隆起した4メートル程の水晶状の鉄の柱が地面から生成される。
「やった、出来た!」
喜ぶ北斗に、スセリは注意を言う。
「この力は砂や金属、人工物の上でしか出来ません。覚えておいて」
「スセリ、こんな力僕等も使えるのか?」
太耀がスセリにそう尋ねると、スセリは難しい顔をして答える。
「勿論です。鳳皇丸は日の光りや熱の制御が出来ます。但し日の光りを武器として使う事は、余り褒められた事でない事を覚えておいて下さい……」
そう言い終わったスセリに、今度は葉司が聞く。
「スセリ、龍蛇丸は?」
「待ちなさい葉司、まずは鳳皇丸からです。太耀いいですか、此れからやる事を見て居なさい……」
そう言うとスセリは怖い顔をして、狼王丸が作った鉄柱を右手で指し示し、鳳皇丸に言う。
「鳳皇丸。この鉄の柱を溶かす位の温度で、光りの柱を3寸の幅で1秒作って下さい。出来れば見て判る様に」
「クゥワッー」
鳳皇丸が鉄の柱に向かって鳴くと、鉄の柱の頭上中心に細い光りの柱が1秒だけ現れる。
そしてその光りの柱が消えると、そこにはデロデロに内部が溶けた鉄の柱が在った。
スセリはその鉄の柱を確認した後、太耀に説明を始める。
「人を巻き込まないのが一番良いのだけど、もしもの事が有るかもしれない…… もし今の様な攻撃が誤って生き物に向かったら、防ぎ様が有りません。だから出来るだけこう言う使い方は控えて下さい」
スセリにそう忠告され、太耀は真面目な顔で頷き返事を返す。
「分かった」
太耀がそう言い終わると、スセリは葉司と北斗に向けてお願いをする。
「貴方達も、気を付けて下さいね」
「おう」
「うん」
スセリに念を押され、葉司と北斗は頷き返事を返した。
その後スセリは怖い顔を辞め、鳳皇丸に向き直り話しを続ける。
「それ以外には、光りの屈折を利用して姿を消したり、闇を作り出す事も出来ます。まぁ、鳳皇丸は日光の中でしか存在出来ないのだけど。それと先程私が外から鳳皇丸に命令しましたが、貴方が操っている場合、私の様な例外を除いて、鳳皇丸が他の者の言う事を聞く事はありません」
「説明ありがとうスセリ」
太耀がそう御礼を言い、スセリは返事を返す。
「如何いたしまして」
そして龍蛇丸の方へ目を向け、葉司に向けて言う。
「最後に、お待たせ葉司。龍蛇丸の説明を始めます」
「よし、何でも来い!」
葉司がそう返事を返すと、スセリはクスクス笑って尋ねる。
「威勢が良いわね」
「威勢だけわね」
太耀が続けてそう言ったので、葉司は太耀に怒る。
「太耀。お前、ケンカ売ってんのか!」
その様子を見て、口ゲンカが始まると察した北斗は、葉司に促す。
「ほら葉司君、太耀君に突っ掛かってないで、スセリの話し聞かなきゃ」
「俺が悪いのかよ……」
文句を言った葉司にスセリが言う。
「これぐらい元気があれば平気でしょう。龍蛇丸は色々出来る反面、その力の制御が大変なのです」
「大体、何が出来るんだ?」
葉司がそう質問するとスセリは答える。
「風の発生や制御。木々の生成。水を操る。人の手の加わった金属の制御。水に関しては結界の外だから、今回は止めておきましょう。木々の生成の方は、今は準備が無いので無理です」
「じゃあ風の発生や制御と、金属の制御か。金属の制御って、北斗の奴とはどう違うんだ?」
そうスセリに葉司が聞くと、スセリは言う。
「狼王丸は生成や消滅は出来ても、その物を操れる訳では有りません。其所の溶けた鉄を、龍蛇丸の核に触れたまま、どっちの手でも良いから、持ち上げる想像をして御覧なさい」
葉司は言われた通り、右手で鉄の柱を持ち上げるイメージをする。
すると右手に若干の思さが加わり、鉄の柱は浮かび上がった。
「うわぁ、浮いてる」
驚いてる北斗を尻目に、スセリは葉司に言う。
「物によって思さは変わりますが、何となく理解出来ましたか?」
「ああ」
葉司がそう返事をしたので、スセリは話しを続ける。
「それじゃあ、その鉄の塊を狼王丸か鳳皇丸に投げつけて下さい。投げる方法はそう思えば大丈夫、格好を真似した方が上手く飛ぶ筈です」
それを聞いて太耀と北斗は驚く。
「どう言う事だスセリ!」
「そうだよ、酷いよ!」
そう文句を言う二人に、スセリは言い返す。
「これも練習です、嫌なら避けなさい」
「そう言う事なら遠慮はしないぜ! せーの……」
葉司が右腕だけ投球のモーションをすると、溶けた鉄の柱は鳳皇丸目掛けて飛んで行き……
ガゴン
鉄の柱は鳳皇丸の翼に当たると、鳳皇丸は少し蹌踉け、太耀の居る空間が少し揺れる。
「うわっ!」
太耀がそう叫ぶと、スセリが太耀に聞く。
「太耀、今何が起きましたか?」
そう聞かれた太耀は、スセリが何で葉司にこんな事させたのか理解した。
「……そう言う事か。少し揺れた」
太耀がそう言い終ると、スセリは三人に言う。
「聞いての通り臣器はダメージを受けると、貴方達の居る空間に振動としてダメージが伝わります。どんな風に揺れていたかは知りませんが、大きい揺れが続けば制御所ではなくなります。臣器の中で大怪我をする事は有りませんが、体をぶつければ痛いし気を失う可能性も有ります。それだけは気を付けて下さい」
「ボクはその前に、足場が狭くて落ちそう……」
そう言って不安がる北斗に、スセリが言う。
「大丈夫です。周りの炎が、壁の代わりになってる筈ですよ」
「…………本当だ!」
北斗がスセリの言葉の真偽を、恐る恐る確かめそう言うと、スセリは説明を続ける。
「因みに臣器が破壊されると、強制的に外の安全な場所に転移させられます。破壊された場合、再度巨大化するまでに約1日掛かる事も覚えておいて下さい」
「狼王丸達は意識とか有りそうだけど、壊されて大丈夫なの?」
そうスセリに北斗が聞くと、スセリは真面目な顔をして3人に言う。
「臣器達は確かに意思はあります。だからこそ貴方達が臣器達を大事に思うなら、無理な戦いはしないように」
「「はい」」
三人が返事を返すと、スセリは更に話しを続ける。
「それではこれから暫く、個人練習の時間にしましょう。風の発生や制御はまた後で」
★★★★
「ただいま皆」
スセリが恵理花達の居る場所に戻ってくると、オモイカネは怪訝そうな顔をしてスセリを迎えた。
「あらオモイカネ、何か文句が有りそうな顔をしているわね」
スセリがそう言うと、オモイカネは少し怒った口調で聞く。
「先程の光の柱、日の光を操ったモノだな」
「文句がありそうね、理由は?」
軽くそう言い返したスセリに、オモイカネは真剣な顔で言う。
「日の光は法を生み真実を見せる力も有るが、1つ間違えば世界を壊しかねるモノ。子供に扱いきれるとは……」
オモイカネの言葉にスセリはクスクス笑った後返事を返す。
「それに付いては太耀に注意はして有る。あの子達なら大丈夫よ」
「しかし、別の要因で事故が起きたら如何するのだ!」
その言葉が、オモイカネが子供達を心から心配しているから出て来るモノだと、スセリは理解している。
だからこそスセリはオモイカネに言う。
「あの子達を心配する気持ちは理解しています。ですがオモイカネ、それを恵理花や薫の前で言うべきではないわ」
その言葉を聞いて、オモイカネは冷静に考える。
確かに子供の近くで、その友達の危険に付いて語る事は良い事とは言えない。
「……そうだな、すまん」
オモイカネがそう謝ると、スセリは紫織に聞く。
「ねぇ紫織、今、何時かしら?」
そうスセリに聞かれ、紫織は腕時計を見て答える。
「そうさね、10時20分過ぎぐらいかね」