第5話 「無計画」
「(電話)よぉ、秀も休み?」
暇すぎたから、手始めに秀に電話をかけてみた。
「(電話)第18期生は今日、全員休みだ。雫も多分家にいるだろうし・・・ この前の御礼も兼ねて、どっかいこうか。」
――――
駅前 集合場所にて
「...。 私服も仕事の時とあんま変わんねェのな、秀。」
いつもと同じ、白い服と少しダボっとした黒いズボン、水色の真珠が輝くネックレスと共にやってきた。
「こんな仕事やっててオシャレする方がアホらしいと思うよ。あと、たまに緊急出動とかあるし。」
「いいじゃねーか。秀なんて面がいいんだからもっと自信持てよ。俺と違って別に外見に支障はねェんだから。」
「ん・・・まぁ、そうだね。」
俺がそう言うと、秀は少し戸惑っていた。
そんな戸惑いに覆い被さるように、雫がやってきた。
「おはよ。化と会うのは2回目だね。」
「おはよう。」
水色のパーカーに黒いショートパンツ。
雫も、異常器官は外見に支障がなかった。
「で、秀、どこ行くの?」
雫が質問をした。
「カフェとか?昼間から飲むのも流石に気が引けるんじゃない。僕達でも行ける場所、探そうか。」
――――
カフェ チェーン店前
「すみません、異常器官発達者の方は受け付けておりません。ご引取り願います。」
「あぁ、そうですか。」
(溜息の音)
秀が乾いた溜息を漏らす。
「秀、前もここ来て言われてたじゃん。いい加減覚えなよ。」
「ごめんごめん。」
雫が少し腹を立ててた。
やっぱり、差別ってのはムカつくな。
――――
街の雑音と、コツコツ という靴の音が強調される。
俺達の会話は途切れていた。
結局30分程、カフェを回ったが
何処も俺達を拒絶していた。
「ねぇ〜もう帰らない?」
靴の音が止んだと同時に、その言葉が雫から飛んできた。
「・・・まぁ、そうだね。僕が無計画だったのが悪かったな。ごめんよ、2人共。」
秀が計画を立てた、立てないって所じゃない気がする。
もっとこう、何か、モヤモヤしたものがあった。
雫は家に、秀は本部へ向かったらしい。
最初の集合場所で、俺達は解散した。
――――
(扉の開く音)
手にビニール袋を持っていた俺は、今更になって
コンビニで何か買って、俺ん家で食えばよかったのかな。
なんて、後悔をしていた。
買ってきたポテトチップス等を出しながら、テレビのリモコンを足の指で押した。
(ニュースの会話)
「―となりますが、如何でしょうか。」
「最近、アイサーが増えてますからねぇ。さらにこんなのまで増えるなんて、そりゃもう異常者達は立場はないでしょうよ。」
こんなの・・・?
「社会的地位も危ういでしょうね...。現在、対アイサー警察と一般警察が一丸となり動いています。続報があり次第、こちらでお知らせしていきます。」
元々社会的地位なんて無いに等しいのに、何いってんだこいつらァは...? 続報?
「アイサー宗教、通称、アイサン教。信仰者から神と崇められる人物は、異常器官発達者達の電子チップを何らかの方法で解除している模様です。」
アイサン教?電子チップの解除?
「やはり、異常者達、感染者達はこの世に―。」
(リモコンの音)
「はァ゛・・・。」
このアパート、折角修復終わったのに...。
また、放浪者にでもなんのかな。
「でも、やっぱりてめェらのせいじゃねェか・・・。」
「異常器官発達者の全部がこんなんじゃねェ・・・ 大々的な犯罪行為をする馬鹿共だけ。」
「ソレが何だ?はッ、平穏に暮らしてる奴にまで危害与えてよぉ、・・・ やっぱり潰すしかねェじゃねぇか。」
「俺が゛、アイサー達をよォ゛!」
怒りを拳に宿す。
制御が効かず、皮膚の硬化が始まっていた。
(壁を叩く音)
「やっべ。」
翌日の朝、アパートの管理人さんに怒られた。
追い出されないだけ良かった。
――――
東京本部にて
「一昨日から捜査している アイサン教 だが、一般警察の方々が情報を提供して下さった。」
確かあの人は・・・ あ、そうだ。澤先輩と同じ、16期生の久保栄一 だっけか。
「 (化、もうちょっと聞いといた方がいいよ) 」
秀から囁かれた。
「東京南部、商業地区に潜伏しているという見立てだそうだ。今日から1日2人程、そちらへ監視役として向かわせる。」
まぁ、俺の右足は目立つから多分選ばれねーや。
「〜じゃあ今日は、壱川と権堂、頼んだ。」
秀選ばれてんじゃん。
秀は少し嫌だったようだ。顔を見たら眉をひそめていた。
まぁいつかは回ってくるし仕方ねェよ。
「(秀、権堂さんって誰?)」
権堂という人物が分からなかったので、秀に投げかけてみた。18期生と組ませるって事は、大先輩かな。
「(あの人、ちょっとゲッソリしてる丸眼鏡の。)」
指がさされた方向を見たら、猫背で縮こまってる、アラフォーっぽいオッサンがいた。
・・・監視役として成り立つのか?
――――
東京本部 第18期生 待機室
「暇すぎんだよなー」
あれから2時間程過ぎた。出動要請なんかはなくて、雫と一緒に暇を潰していた。
最初の方は掃除なんかをしていたが、無駄にいつも綺麗なせいで すぐに終わってしまった。
「ま滅多にないからね 出動要請。」
初日の出勤から出動要請ってのは結構ハードだったんだな、と 今になってやっと分かった。
「・・・じゃあこれでもしよっか。」
雫がデスクからトランプを取り出す。
白いパンツとベージュのパーカー、服装はいつも部屋着っぽいな。
「ブラッ、ク、ジャック。分かる?」
手を伸ばして財布を取っていた。
「んだっけ、21に揃えるやつ?」
「まぁ大体合ってる。私に勝ったらこれ、あげるよ。」
雫が指で挟んでいたのは、10000円札だった。
目に血が走る。
勝ったら10000円?缶ビール何本分だ?
「えマジ?じゃあ早くやろ―。」
手で口を押さえられた。
モゴモゴして、少し唾液が付いてしまった気がする。相手が急に、押えてきたのが悪い。
「条件。私が勝てば、教えて。」
唾を飲んだ。
「右足の筋肉、皮膚貫通したこととかあるでしょ?そん時の痛み。どれくらいか。」
結構緩い条件だった。もっとこう何か、アイサン教に入らないか、とかそういうモンだと解釈していた。
「そんだけかよ。じゃあ早く10000円くれ。」
「勝ったら ね?」
静まり返った18期生の仕事場は、トランプのシャッフル音だけが響いていた。
日に日に文章が雑になっている気がします。
大丈夫でしょうか?